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1 杉上左京 2011/11/06(日) 06:41:51.93 ID:/KqapWhP0
[小説]古畑任三郎vsAKB48スレの四谷幸喜さんに刺激されて
書きました。四谷さんの作品に比べると雑な部分は多いですが
読んでいただければ幸いです。批評もお待ちしております。


2 杉上左京 2011/11/06(日) 06:58:21.85 ID:/KqapWhP0
第1話「立ち往生」

シーン1  10月29日16:51 滋賀県伊吹山

「ねぇ…本気でやるつもりなの?」
不安そうな曇った表情で市川美織が声をかける。
「もうここまできたらやるしかないんだよ!」
島田晴香が強ばった表情をして市川を一喝する。
「そうだよ。私たちがやらなきゃいけないんだよ。私たちが…。」
紫色の花束を握り締めた山内鈴蘭もこわばった顔をする。
「仲俣。これでOKだよね?」
島田が仲俣汐里に尋ねる。
「うん。これであとは実行するだけだよ。」
仲俣はスケジュール帳に目を通しながら言った。
「やっぱりこんなの良くないような気が…」
「今になって何及び腰になってんだよ!あれだけ話し合って決めたんだろ。市川だって賛成したじゃない。」
「そうだけどさ、でも…。」
「市川、まさかあのこと忘れたわけじゃないよね?私は絶対許せない。私たちが動かなきゃいけないんだよ。そうでなきゃ…。」
島田は、そこにいる全員の目を見ながら声高に語った。
「そうだよ。私たちがやらなきゃ。」
竹内美宥が目を涙で潤ませ、右腕で目を拭った。
「ヤバイ!早くしないと新幹線に乗り遅れちゃうよ。」
島崎遥香の一声で全員が一斉に駆け足でその場を後にした。


6 杉上左京 2011/11/06(日) 07:08:59.29 ID:/KqapWhP0
シーン2  10月29日 19:01 岐阜県関ヶ原 ひかり528号東京行 7号車車内

「東京に大体どのくらいに着くの?」
竹内が隣の席にいる仲俣に尋ねた。眠そうな仲俣は目を左手で擦りながら右手首に付けた腕時計を見た。
「大体9時ちょっと過ぎぐらいじゃないかな?」
「ごめんありがと!」
永尾はそう言うとテーブルに置いていた宇宙人の本を読み始め、仲俣はリクライニングを倒して腕組みをして眠りについた。
その時、新幹線が突然減速し始めた。そして何もない場所に停車した。
「お客様にお知らせします。只今岐阜羽島駅におきまして人身事故が発生しました為列車の運転を見合わせております。お急ぎのところ恐れ入りますが発車まで今しばらくお待ちください。」
車掌のアナウンスで車内はざわつき始めた。怒鳴る者、隣の席同士で話し合う者、携帯電話を広げて外部に連絡を取っている者。それぞれ個々に行動を取っている。
「ねぇ電車しばらく動きそうにないっぽいよ。」
島崎が悲しげな表情をして隣の島田の肩をゆすった。
「マジかよ!こんな時にー!明日公演あるのに最悪!運賃払い戻しできねーかな?」
島田が怒りながら声を荒らげた。
「それは不可能です。目的地に行くのであれば運賃は払い戻しされません。運賃はあくまで出発地から目的地に着くまでの料金ですから目的地に到着できればどれだけ時間がかかろうが取引は成立します。ただし、特急料金は戻ってきますよ。」
島崎、島田、市川の席の後ろに座っていた眼鏡をかけたスーツ姿の中年男性が立ち上がって答えた。
「へぇーそうなんですか。ありがとうございます。」
島田が後ろを向いて中年男性に頭を下げた。すると中年男性はそのまま通路へ歩きだし、島田らの座る座席の前に立った。


8 杉上左京 2011/11/06(日) 07:12:34.21 ID:/KqapWhP0
シーン2-2

「もしかして皆さん方はAKB48のメンバーではありませんか?」
中年男性は笑顔で座っているメンバーを見つめながら言う。
「はぁ、そうですけど…。」
市川が目を点にした顔で応える。
「やはりそうでしたか。どこかでお見かけしたような気がしていました。」
中年男性はさらに笑みを浮かべて言う。
「おじさん。私たちのこと知っているんですね。」
「ちょっと美宥!おじさんは失礼でしょ!」笑いながら言う竹内に山内が肩を叩いた。
「おっと!申し遅れました。杉下右京と申します。東京で公務員をやっています。僕の周囲にもAKBのファンは多くいましてね。こんなところでお会いできて光栄です。ところで皆さんは何期生なのでしょうか?」
「杉下さんの目の前にいる市川と前の座席の窓側で眠っている仲俣が10期生、あと私、島崎、山内、竹内の4人が9期生です。」島田が指を指しながら紹介した。
「ほぉ、9期生ということは横山由依さんと同期生ということですね?」右京がそう言うと全員の表情が曇った。
「えぇそうですけど…。杉下さんは横山推しなんですね。」島田が少しトーンの下がった声で言う。
「えぇそうです。彼女の努力する姿勢、何度オーディションに落ちても諦めずに夢を叶えた姿勢に大変感銘を受けました。あの直向きな姿はまさに美しいものです。」
右京は微笑みながら横山由依に対する想いを語った。だが皆の表情は冴えない。
「ところで杉下さんはどちらへ行ってたんですか?」状況を見た島田が右京に尋ねた。
「僕ですか?知人に会いに京都へ行ってきました。とても有意義で清水寺や下賀茂神社なども参拝して秋の京都を楽しんできました。ところで皆さんもお揃いでどちらへ行っていたのですか?AKBの皆さんはとてもお忙しいはずです。」
「AKBといっても色々違いますから。私たちは今日たまたまスケジュールが空いていたのでそのメンバーで琵琶湖に行ってきたんですよ。」島田が表情に笑みを浮かべながら言った。杉下は島田の表情を伺っていた。


10 杉上左京 2011/11/06(日) 07:20:54.37 ID:/KqapWhP0
シーン3 10月29日 19:20 警視庁特命係

「暇か?」組織犯罪対策部組織犯罪対策5課長の角田六郎が部屋に入るなりマイカップを左手にもち、コーヒーメーカーからコーヒーをカップに注ぐ。
「ええ暇すぎて仕方ないので帰るところですよ。」イラついた表情で神戸尊が机の上の鞄に書類をしまっている。
「そういやぁ警部殿は今日帰ってくるんじゃなかったか?」角田がコーヒーを飲みながら尊の顔を見た。
「ええ、21時には東京駅に着くから迎えに来いって京都から電話してきましたよ。たまきさんと結構楽しんできたようですね。」
「結構不満げだな。」
「当然ですよ。僕を運転手と勘違いしているんじゃないですかね。あの人は!」尊は声を荒らげる。
そんな尊を尻目に角田がテレビのリモコンを持ってテレビの電源をつけた。
テレビ画面にはニュースが放映していて交通情報の速報テロップが点滅し、人身事故で運転見合わせの文字が画面上に表示された。
「おい羽島で人身事故かよ。警部殿の新幹線立ち往生しているんじゃねーか?」角田がテレビ画面を指さして声高に叫ぶ。
尊は右京の机にあるデスクトップパソコンを起動させてインターネットの時刻表サイトを開いた。
「あぁ一番近い新幹線ですね。多分関ヶ原あたりに止まっていると思いますよ。」尊は肘を付いて溜息をついた。
「とりあえずケータイに電話してみろよ。」角田はそう言うとカップを置いて部屋を後にした。
「あーあ。今日は本当にツイてないなぁ。」
尊はそう言うとポケットから携帯電話を取り出し電話帳から右京の名前を検索し、通話ボタンを押した。


16 名無しさん@お腹いっぱい。 2011/11/06(日) 15:40:33.31 ID:zBczUYJI0
みんなで楽しくやろうぜ 気にせず来い
他人の作品読むのも新作への肥やしだ


17 杉上左京 2011/11/06(日) 16:00:59.69 ID:/KqapWhP0
シーン4  10月29日 19:31 岐阜県関ヶ原 ひかり528号東京行 7号車車内

突然右京のスーツからバイブ音が響いた。
「ちょっと失礼。」右京はそう言うと足早にデッキに向かって歩きだした。
デッキに着くとスーツの右ポケットからスマートフォンを取り出して画面を少し見てから通話ボタンをタッチした。
「杉下です。」杉下は真顔で答えた。
「神戸ですけど杉下警部大丈夫ですか?」電話口から尊が尋ねた。
「大丈夫とはどういうことでしょうか?」杉下が逆に尋ねる。
「いや、止まっている新幹線の中で退屈しているんじゃないかなぁって思ったので。」
「それならご心配いりませんよ。素敵なお嬢様方との出会いがありましたからねぇ。」
右京は笑みを浮かべる。
「用がないのであればこれで失礼します。運行が再開したらまた連絡します。」
そう言うと右京は通話停止をタッチしてスマートフォンを右ポケットに入れると足早に7号車の車内に戻っていった。

「うーん。何だったけ?」竹内が右手で頭を掻きながら現代社会のテキストを見ていた。
「あんた何で宿題済ませてないの?」山内が右手で竹内の肩を叩く。
「だってこれだけ最後まで分かんなかったんだよねぇ。」
「何なに労働三権を具体化した法律は何かって?うーんもう忘れたなぁ。」山内が頭を抱えながら言う。
「なかまったーなら知ってると思うけど…。」竹内は隣で眠る仲俣を見つめる。
「ダメだよ。仲俣は昨日アンダーやって遅くまで大学のレポート書いてたんだから。忙しいなか私たちに付き合ってるんだから寝かせてあげよ。」
山内がそう言うと竹内は悲しげな表情をした。
「労働三法とは労働組合法、労働基準法、労働関係調整法のことです。
労働組合法は労働組合について定め、団体交渉、労使交渉における免責要件などが記載されています。
労働基準法は名前のように労働に対する基準を定めた法律、
労働関係調整法はストライキなど大規模な争議があった場合は労働委員会の裁定を受けることを規定したものです。」
杉下が竹内のテキストを見ながら言った。
「杉下さんかしこーい!!」竹内が笑いながらシャープペンシルを右手に持ち、答えをテキストに書き込んだ。


18 杉上左京 2011/11/06(日) 16:14:51.57 ID:/KqapWhP0
シーン4-2

停車してから一時間ほど経っただろうか。あれほど騒いでいた乗客も静かになり、眠りについた者、パソコンを開いている者、隣同士でおしゃべりやゲームをしている者など様々だ。杉下と島田らも世間話をしていた。
「なるほど。アイドルというのもとても大変な職業ですねぇ。」
「えぇアンダーなんて振りも覚えてそれをそのメンバーに伝えるので間違えたら大変ですから真剣です。」山内が顔を下に向けながら話す。
「そういった苦労を乗り越えて正規のメンバーになるのですね。皆さん方も早く正規のメンバーになれるといいですね。」
「いえ、私たちは正規メンバーなんです。」
「おや、これは大変失礼しました。あまり最近の情報は知らないもので。では皆さんはどこのチームの所属ですか?」
「私たちはチーム4という新しいチームに入りました。」島田が答える。
「そうですか。新しいチームができたのですね。私のしたことが存じ上げておりませんでした。メンバーは皆さん6人だけではないでしょう?」
「ええ、他にもいます。」島崎がそう言うと持っていたポッキーを1本取って口に入れる。
「そうですか。では横山さんとは別のチームなのですね。」
「えぇ。あいつは先に昇格したので。」島田が強ばった顔になる。
「おや、あいつとは相当皆さんと横山さんはとても親密な関係だったのですね。それとも何かあったのでしょうか?」
「何があったも何も横山は…。」竹内が声高に言うと
「美宥!」島田が竹内の右肩を握り、首を横に振った。
「おやおや、あなた方と横山さんには何かあったようですね。宜しければお話をお伺いできないですか?」
「えっ?いやそれは…」島田が声を詰まらせる。
「すみません。細かいところまで気になってしまうのが僕の悪い癖でしてね。」
右京は笑みを浮かべて座席に腰掛け、持っていた水筒から紅茶を注いで一口飲んだ。


20 杉上左京 2011/11/06(日) 17:02:39.92 ID:/KqapWhP0
シーン4-3

しばらく沈黙の間が続いた。右京は黙って紅茶を飲んでいた。島田たちは全員重い表情で下を向いたままであった。その沈黙を破ったのはずっと眠っていた仲俣であった。
「うーん…。あれ?もう東京に着いたの?」仲俣は欠伸をして両手で目を擦りながらまだ少し寝ぼけたような様子で言った。
「いや、なかまったーが寝た直後に事故で新幹線が止まってまだ動かないの。」隣にいた竹内がそう言うと「えー!じゃあまだ岐阜あたりじゃん。明日大事な講義があるのになぁ。マジ最悪。」
仲俣の表情は寝ぼけたような顔から一気に驚きを隠せぬ顔となり、そのまま顔をテーブルで組んだ腕の上に伏せる。
「おや、お目覚めですか?紅茶一杯いかがです?」右京はそう言うと席を立ち、自分の座席の上に置いてある鞄の中から紙コップの袋を取り出した。
「ねぇこのおじさん誰?」仲俣が尋ねた。
「あぁ私たちの後ろの席にいた杉下さん。東京の公務員なんだって。結構AKBのことも知っていて結構物知りなの。なかまったーより賢いかも。」竹内が笑いながら答える。
「おや。仲俣さんも賢明な方のようですね。」
「なかまったーはAKBをやりながら早稲田大学に通ってるんですよ。」市川が言う。
「おや。これほどの忙しさで早稲田に通われるとはさぞ大変でしょう。僕には到底両立できそうにもありません。」右京は紅茶を注いだ紙コップを仲俣の座席のテーブルの上に置いた。
「いえ、AKBも好きだけど学校の授業も好きなので。」仲俣は右京に会釈をして紙コップを手に持って一気にお茶を飲み干す。
「昨夜も公演後に大学のレポートを仕上げたとお聞きしました。結構眠りも深かったので相当寝不足だったのでしょう。それなのに何故琵琶湖へ出向いたのですか?明日も公演などがあれば一日家で体を休めたいと僕なら思うのですがね。」
「えぇ。でも今日は特別なんです。大場さんの為に…。」仲俣がそう言うと一瞬にして全員が凍りついた。仲俣もすぐに驚いた表情をする。
「大場さんの為とはどういうことでしょうか?」右京は鋭く尋ねる。
「いえ。こっちの話です。そ、それより杉下さん。琵琶湖で買ったお土産いかがですか?買いすぎて食べきれないし紅茶も貰っちゃったり竹内の宿題まで面倒見てもらったのでそのお礼ということで…。」
島田がそう言うと足下の紙袋からえびせんべいの箱を取り出した。
「お茶に合いそうですね。では、頂きます。」右京はえびせんべいの袋を持ち、ペットボトルのお茶を飲んだ。


21 杉上左京 2011/11/06(日) 17:07:08.30 ID:/KqapWhP0
シーン4-4

静まり返った車内。右京はえびせんべいを食べながらペットボトルのお茶を飲む。6人も黙ってえびせんべいを食べていた。
「このおせんべい。なかなか美味しいですねぇ。どちらでご購入なされたのですか?」右京はえびせんべいを持ちながら島田の方を向く。
「えっと。確か近江長岡の駅だったかな?とにかく買う最中に特別快速が来ちゃって慌てて買ったもので。」
「そうですか。いやぁなかなか美味しいですよ。今度観光に来たら是非購入したいと思ったものですから。」右京はえびせんべいの袋をポケットにしまう。
「ところで琵琶湖観光は楽しめましたか?」
「えぇ。天気も良くて琵琶湖も綺麗でした。そういえば遊覧船乗るとき乗船所でみおりんが財布がないないって騒いで結局ポシェットに入ってたんだよねー。」島崎が笑いながら市川の方を向く。
「えっ?あぁはい、そうでしたね。あの時はみんなごめんなさーい。」市川が手を合わせて笑顔で頭を下げた。
「そういえば去年来たときは確か横山が駅で財布ないって騒いだっけ。そしたらみなるんの鞄に入ってたってよね。」山内がそう言うとまた重い雰囲気になった。
「ほぉ、去年も琵琶湖を訪れたのですか?」右京が身を乗り出す。
「えぇまだ研究生だった去年の夏にお仕事で9期生全員で来たんです。あの時は伊吹山に登らされたりと大変だったけどみんな楽しかったなぁ。」山内が笑みを浮かべる。
「本当に。あの時はみんな和気藹々として楽しかったよね。」竹内も笑いながら話す。
「そうですか。伊吹山に。真夏となればとても暑かっただろうと思います。でもさぞ良き思い出になられたのでしょうね。」
「えぇ。まさか一年後はこんなことになっているなんて思ってもいませんでした。」島田が目を潤ませる。
「宜しければお話をお聞かせ願えませんか?ここで会ったのも何かの縁。僕にも何か手助け出来ることがあるかもしれませんからね。」
右京が再び水筒から紅茶を注いで飲んだ。


25 杉上左京 2011/11/06(日) 20:27:26.87 ID:/KqapWhP0
シーン5 回想 2011年8月17日8:30 AKB48劇場

スタッフルームには電話が殺到しスタッフは対応に追われていた。
ファックスには中傷する文字が書きなぐられた紙が何枚も流れてきている。スタッフたちがバタバタとしている。
「クソ!あぁ一体どうしてこんな大事な時期に!」
頭を抱えながら書類の束を机の上に投げたのは劇場支配人の戸賀崎智信である。
彼が机に投げた書類はチーム4メンバーである大場美奈と森杏奈のプロフのコピーである。
これが昨晩何者かによってインターネットに流出し、運営本部や報道各社にもその流出サイトのURLが貼られたメールが送られたのだ。
これにより報道各社から取材の申し込みが殺到し、これを見たファンから抗議の電話やファックスが相次いでいるのだ。

そんな時チーム4のメンバーが公演のリハーサルの為に劇場入りしていた。
勿論スキャンダルの流出騒動はメンバーからのメールで知っていた。
当然ながら全員動揺を隠せないでいた。
「何であんなのが流出するの?」竹内が山内に問う。
「分かんないよ。多分みなるんやあんにんの活躍が疎ましく思ったアンチの仕業だと思う。ひどすぎるよ。」
山内も動揺を隠せない。
「でもヤバイよね。こういうのが出たら。最悪解雇もあるかも。せっかくチーム4もこれからだっていうのに。」
永尾まりやが泣きながら言う。
「でも報道にまでリークするなんてひどすぎる。何か噂だと大場が総選挙に入ったのが気に入らないメンバーだったなんて言われてるみたいだよ。」
島崎がリハーサルで使う書類を右手で握り締めていた。
「とにかくまだよく分かんないんだからとにかく今は今日の公演に集中しよう。」
島田が立ち上がって声高に言った。
そしてメンバーたちも立ち上がりいつものようにストレッチを始めたのだった。


26 杉上左京 2011/11/06(日) 20:30:13.95 ID:/KqapWhP0
シーン6 回想 2011年9月2日10:00 AKB48劇場

劇場に突如チーム4のメンバーが集められた。そして、全員が座る中心に戸賀崎が立った。
「えー皆さんおはようございます。レッスンなどもあるので早速本題に入ります。先日の大場と森の一件ですが、
昨夜協議を重ねた結果、大場が謹慎を申し出たのでそれを受理し、無期限の謹慎に入ることになりました。
また、併せてキャプテンの辞退も申し入れてきましたのでしばらくの間キャプテンは空席とします。
そして、森ですが持病である腰痛の悪化もあることから本人が辞退を申し出たので長期休養も提案しましたが、
本人が固辞したのでこれを受け入れました。
これからスタートという大事な時期にこのような失態を犯し、チームを離れることを
2人はとても残念で他のメンバーに申し訳ないと言っていました。以上です。」
戸賀崎の発言後、当然ながらざわついた。メンバーの多くが涙を流した。泣きじゃくる声が多くあるなかで目を真っ赤に腫らして涙がこぼれ落ちている竹内が立ち上がった。
「私、知っているんです。あるメンバーが二人を陥れるためにやったということを。」
その言葉を聞いたメンバーたちはさらに騒ぎ始める。
「何を言っている竹内。他のメンバーを疑うことはよくないぞ。ということはよほど確証があるんだろうな?」
「あります。私聞いたんです。ゆいはんがあのプロフが流出した日に劇場近くのネットカフェでゆいはんが怪しげな姿で入る姿を。時間もネットで話題になる数分前だし間違いないかと。」
竹内が横山のニックネームを言い出した瞬間「えぇ!」という驚きの声が劇場内に響きわたる。
無理もない。同期生の中でも一番の出世頭であった横山が仲間である大場と森のスキャンダル流出に関わったという発言はただでさえ二人の仲間が離脱する悲しみに打ちひしがれたメンバーたちの心にさらに衝撃を与えた。
「な、何を…。横山はそんなことをするはずはないと思っている。一応運営として調査はするが頼むからこれ以上いい加減なことを言わないでくれよ!他のメンバーも安易な発言やネットの書き込みは絶対にしないように!」
戸賀崎は声を大きく荒らげて足早に劇場の外に出ていった。


28 名無しさん@お腹いっぱい。 2011/11/06(日) 21:27:56.78 ID:ncNR0VYL0
これは期待

30 杉上左京 2011/11/06(日) 21:32:47.93 ID:/KqapWhP0
シーン7  10月29日 20:24 岐阜県関ヶ原 ひかり528号東京行 7号車車内

大まかな話を聞いた右京は黙って水筒の紅茶を飲む。6人は目を潤ませながらあの時の出来事を思い浮かべていた。
「すみませんねぇ。こんなお辛いことを思い出させてしまいまして。
そんな時に恐縮ですが、竹内さん。あなたは劇場前のネットカフェに横山さんが入ったと仰っていましたが一体その情報はどこから仕入れたのでしょうか?」
「聞いたって言ったけど実際は見たんです。あの日劇場に忘れ物をして取りに戻って帰宅しようとしたときに真正面のビルのネットカフェに足早に入っていくゆいはんの姿を。
そして怪しいんで見ていたらわずか15分ほどで出てきてそのまま足早に去っていきました。」
「なるほど。あらかじめサイトのURLなどを調べておけば短時間でも十分流出させることはできるでしょう。
ですが、ここでひとつ大きな疑問が残ります。横山さんが入る時も出るときも足早になっていたことです。
普通ならば目的を達成したのならゆっくり去るでしょう。ましてやネットカフェを利用しているということは跡がつかないようにしているのですから慌てる必要もないでしょう。」
「それはやはり気の迷いとかあったんじゃないですか?やっぱり仲間を陥れるようなことをしているとか思えば。」
島崎が答える。
「これはあくまで僕の勝手な推測なのですが、横山さんは第三者に呼ばれたのではないでしょうか?
そしてその第三者に命令されあえて大場さんや森さんのスキャンダルの流出を手伝わされたかあるいは呼ばれて店内を歩き回っても何もなくそのまま去った。
そうすれば入る時も出るときも足早であったのも納得がいきます。」
「ということは、杉下さんは大場たちを嵌めたのは横山じゃないと言いたいのですか?」島田が尋ねる。
「えぇ。少なくとも彼女の意思で行われたものだとは思えませんねぇ。首謀者は別の誰かではないでしょうか?」
右京はそう言うと座席から立って通路に出る。
「どちらへ行かれるんですか?」山内が尋ねる。右京は振り向き
「確かめてみましょう。」そう言ってデッキの方へ足早に歩いていった。

デッキに着いた右京はポケットからスマートフォンを取り出して操作した後右の耳元に持っていった。
「もしもし、神戸君。調べて欲しいことがあります。」


31 杉上左京 2011/11/06(日) 21:39:01.14 ID:/KqapWhP0
シーン8  10月29日 20:58 秋葉原 ネットカフェアキバーン店内

「やれやれ。何で僕がこんなことをしなきゃいけないんだよ。」尊は溜息を付きながらレジカウンターへ歩いていく。

「すみません。私警視庁特命係の神戸と申します。実はとある捜査で8月16日午後6時以降の防犯ビデオの映像を見せていただきたいのですが。」
尊は店員に警察手帳を見せて防犯ビデオ提示を求めた。
この店は幸いにも警察官立寄所となっており、店員もすぐに店長を呼び、店長が尊を事務所へ案内して防犯ビデオはあっさり見ることができた。

防犯カメラの映像には慌てて入店する横山の姿が映っていた。店内をウロウロして5分あたりで携帯電話の画面を見ながら二階へ上がった。
そして、カウンターに寄り伝票を受け取ると一番右恥の部屋に入った。そして8分ほどで出てきてカウンターで精算を済ませると
携帯電話を見ながら足早に店を出ていった様子が映し出されていた。

「どうもお忙しい中ご協力いただき誠にありがとうございました。」
尊はそう言うと店の外へ出て目の前に停車させていたスカイラインGT-Rに乗り込み、携帯電話を取り出して電話をかけ始める。
「もしもし杉下警部。やはり横山っていう子がやったと思います。携帯電話を見ていたし多分携帯で指示されたのでしょう。
部屋から出てきたときは何か寂しげな表情をしていましたからね。えっ?その前も見たかって?いえ見ていませんけど…。
えっ?ちょっと!」
尊は険しい表情でスマートフォンを見つめて通話を切った。
「まったく!僕への気遣いはないんだからあの人は…。」
尊は文句を言いながら再び店内へと戻る。

数分後再び車に戻った尊は携帯電話を手に持ち電話を掛ける。
「もしもし。はい。警部のおっしゃった通りでしたよ。十分ですか?もういい加減にしてくださいよ。
店長からは怪しまれて結構大変だったのですから。あれ?ちょっと…?」
尊は溜息をつき、携帯電話を助手席に投げ、エンジンをかけて車を走らせた。


32 杉上左京 2011/11/06(日) 21:43:56.41 ID:/KqapWhP0
シーン9  10月29日21:14 岐阜県関ヶ原 ひかり528号東京行 7号車車内

新幹線が停車して既に2時間を超えていた。乗客たちは疲労からか座席で眠っている者が多い。
だが、相変わらず車掌のもとには罵声を浴びせている乗客も何人もいる。
通りかかった車掌の一人が声を荒らげる乗客らの対応に終始していた。
その姿を尻目に右京はスマートフォンをポケットに入れると足早に車内に戻る。

「すみませんね。どうやら竹内さんのおっしゃったことは事実のようですし、
私の推測も大方当たっておりました。横山さんはやはり第三者からの指示を受けてあのサイトを流出させたようですね。」右京は座席に腰掛ける。
「やっぱり…。でも何でゆいはんなんだろ?」竹内が腕を組む。
「仮に首謀者をXとしましょう。Xは横山さんに対し強い怨恨みたいなモノを持っており、
横山さんを仲間の不祥事を平気で世間に売るような卑劣な人間であることにしようとしたかったのでしょう。
無理もありません。この一年で彼女の環境は劇的に変化しましたし、あれだけ大所帯のグループですからそういった恨みを持つ人間も少なからずいるとは思います。」
「ゆいはんのことだから断れなかったのならばもしかして上位メンバーの誰かとか?ほとんど先輩だし言われたら聞くしかないし…。」山内がそう言った。
「確かに先輩メンバーの言うことであれば断ることはできなかったかもしれませんね。横山さんの周囲は先輩で人気も高いメンバーがほとんどですからね。
そのメンバーが横山さんの人気を妬んでやらせた可能性は十分考えられますが、それならばもっと大きいスキャンダルを狙うでしょうし、
もっと違ったやり方をするのではないでしょうか?そして何故大場さんと森さんのことだったのでしょう?」
「たまたま見つけたからじゃないの?結局何でも良かったとか。」市川が杉下の方を向く。

その時また右京のポケットからバイブ音が鳴り響いた。
「ちょっと失礼します。」右京はそう言うとデッキの方へゆっくりと歩いていった。


33 杉上左京 2011/11/06(日) 21:46:34.43 ID:/KqapWhP0
シーン10 10月29日21:10 警視庁鑑識課

「いやぁそれにしても杉下警部がAKBのメンバーと同じ新幹線にいるとは羨ましい限りですなぁ。
私ならば声も掛けることも難しいでしょう。握手会も何十回も行っているのに一般会話さえ未だできないのに。」

警視庁鑑識課の米沢守は結成時から劇場やイベント、握手会に出向くほどの熱狂的なファンである。
彼は仕事一筋で有給休暇をほとんど消化してしまうことも多かったがAKBに出会って以来
休暇を取ってAKBのイベントに遠くまで出向くほどである。

ちなみに右京がAKBに興味を持つようになったきっかけも米沢である。
本来右京は末廣亭のDVDを借りようと米沢に依頼したのだが、
米沢は誤って2010年の東京秋祭りのDVDを渡してしまったのだ。
3日経ってようやく気づいた米沢は慌てて謝罪しに向かったが、
そのDVDを見てから右京はすっかりAKB、特に横山由依の魅力に惹かれてしまったのだ。
それ以来二人は顔を合わせる度にAKB談話に花を咲かせている。

「この流出サイトのプロフとブログですが、画像ファイルに変換していますね。何しろ流出したときには閉鎖されていたものですから。
まだ存在しているうちに誰かが変換して保存しておいたようですね。」
米沢はパソコンの画面を見つめながら言った。
「しかし何でメンバーになってこんなものをやっていたのかな?」
尊が後ろから米沢に尋ねた。
「メンバーも格差がありますからどこかでストレスの捌け口が欲しかったのでしょう。
彼女たちもこれほど早くこれが注目されるとは思ってもいなかったでしょうから。」
「ということはこれを見ていた友人あたりが彼女たちの人気や付き合いの悪さを妬んだのかな?」
「いやぁあれだけ多忙のゆいはんを使ってやらせるのだからこれをやったのもメンバーでしょう。
実に残念です。同じグループのメンバーを使い、同じグループのスキャンダルを流すとは。」
「ファンにとっては耳の痛いことですよね。しかしこんなことを何故杉下警部はこんなことを調べろって言うのだろ?」
「何か不安ですね。」米沢はそう言うとパソコンを凝視しキーボードを操作する。尊は携帯電話を取り出して杉下に電話する。


34 名無しさん@お腹いっぱい。 2011/11/06(日) 22:04:59.82 ID:Wj2uHHwE0
なかなか良いですねえ
米沢……ヲタかw
ゆいはんに指示していた首謀者Xが誰なのか……気になりますねえ


38 杉上左京 2011/11/06(日) 22:25:42.82 ID:/KqapWhP0
シーン11  10月29日21:34 岐阜県関ヶ原 ひかり528号東京行 7号車車内

「なるほど。では何か分かりましたらまた連絡をお願いします。」
右京はそう言って通話を切りポケットにスマートフォンをしまって車内へ戻る。
「杉下さん。何度も行ったり来たりしてますけど何でそこまで。」
島田が顔を上げて右京の方を見ながら尋ねる。
「どうしても気になってしまいまして独自のルートで調べています。
何しろ大ファンなものですからね。皆さんのことをとても心配しているのですよ。」
「それはそれで有難いんですけどでも、こんなことを何故こんなに調べる必要があるのですか?」
「僕、よく推理小説を読むのですがどうしても何か嫌な予感がしてならないのです。
そんな胸騒ぎがしましてね。そうなると放っておけない性格なので。」
「もしかして杉下さん私たちを疑っているんですか!」
島田が声を荒らげる。
「いえいえ。そんなことはありません。これはあくまで僕の余計なお節介です。
皆さんにご迷惑をおかけしているのであれば申し訳ありません。」
「でも、この問題はすっきりしないからはっきりさせたほうがいいんじゃないかなぁ…。」
市川が島田の顔色を伺うようにか細い声で言った。
「市川さんのおっしゃる通りです。世間的にこの問題は有耶無耶なままです。
このままでは皆さん疑心暗鬼になられて公演に集中できなくなってしまえばファンの皆様に多大な迷惑にもなってしまいます。
ファンの一人としてそれはとても胸が痛いことです。是非お手伝いさせては頂けませんか?」
「はぁ…。」島田は急に小さな声になってしまった。右京の情熱さやファンに対する思いに圧倒されたのだ。
「ひとつだけ分かったことがあります。あの流出したものは既に削除されており出回ったのは
その前に何者かが画像ファイルとして保存したものをアップローダーと呼ばれるファイル保管、公開サイトにアップして流出させたということです。」
「それはわかります。元になったのはすぐに削除されたのか見れなくなりましたから。」
仲俣が座席から右京の方へ振り向く。
「じゃあ多分Xはネットカフェに画像を持ち込んでそれを横山にアップさせて流出させるようにしたってことなのかな?」
島崎はそう言って袋からポッキーを取って食べる。
「恐らくそうではないでしょうかね?」右京がそう答えると再びバイブ音が響く。


39 杉上左京 2011/11/06(日) 22:32:32.28 ID:/KqapWhP0
シーン12 10月29日21:40 警視庁鑑識課

「ま、まさかこんなことが起きていたとは…。」
米沢は愕然とした表情でパソコンの画面を凝視していた。
「どうかしたのですか?」
米沢の後ろの席で右肘をついて退屈そうに座っていた尊が眠そうな顔をしていた。
「いやぁネット掲示板で噂になっていたので調べたのですがみなるんは神奈川の自宅で自殺未遂を図っていたのです。
自宅で毒のようなものを服用したようです。謹慎が発表された翌日のことですね。」
米沢は動揺している様子で尊に神奈川県警の事件データベースを見せる。
「9月3日午前8時に自宅でなかなか起床しないのを心配した母親が見つけて119番通報。
現場検証の結果、部屋にあったペットボトルの紅茶から少量のアルカロイドが検出。
本人はすぐに磯子総合病院に緊急搬送されたようですね。」
「えぇ。どうやらまだ意識が戻ってないみたいで集中治療室にいるようです。
報告書によるとどうやら自宅にあった日記帳に挟んであったイブキトリカブトの根を入れたようです。
少しだったので致死量にまで至らなかったようですな。」
「でも何故マスコミは報道しなかったのかな?普通誰かがリークしてもおかしくないはずなんだけど。」
尊は腕を組んで椅子に座る。
「あの騒ぎの直後の自殺騒動では信頼が堕ちると判断したのでしょう。
多分代理店や運営側が揉み消しを図ったものと思われます。
警察の報告書なんて警官以外読めませんし、病院も隠すでしょうしね。」
「しかし、メンバーであればその事実を知っているはず。」
「彼女たちのネットワークは恐らく相当広いので一人に情報が入れば一日あれば全員に知れ渡ってしまうだろうと思います。」
「じゃあそれを知ったメンバーが復讐を考えることも。」
「考えたくもありませんが謹慎直後の行動ですからこの問題のせいで自殺に追いやられたと考えても不思議ありませんね。」
「狙われるとすれば疑いをかけられた横山由依さん!」
「まっまさか…そんな…。」
「そういえば杉下警部の乗った新幹線にいるメンバーって琵琶湖に行ったって言っていましたよ。」
「もしかして…。いや、そんなことあるはずない。絶対あるはずない。」
激しく動揺する米沢を尻目に尊は携帯電話を耳に当て鑑識課の部屋を走って出ていった。


40 杉上左京 2011/11/06(日) 22:49:25.44 ID:/KqapWhP0
シーン13  10月29日21:59 岐阜県関ヶ原 ひかり528号東京行 7号車車内

「なるほど。これでようやく謎が解けました。」
右京はスマートフォンをポケットに入れて車内へ戻る。
「ようやく僕が疑問に思っていたことが分かりました。いやぁこれでスッキリしました。」
「じゃあXの正体が分かったのですか!?」竹内が笑顔で座席から立ち上がる。
「えぇ。そして、あなた方がこれから何をしようとしていることも。」
右京の言葉に全員が動揺した様子である。手が震え、唖然とした表情になった。
「な、何を言ってるんですか杉下さん。私たちはただ琵琶湖に旅行へ行っただけで…。」
島田が声を震わせている。
「いえ、それは嘘ですね。あなた方本当は琵琶湖ではなく伊吹山に行ったのではありませんか?」
右京の問いに全員がお互いの目を見合い、オロオロしている。
「何か証拠でもあるんですか?私たちが伊吹山に行ったという証拠が!」
島田が座席から立ち上がり声を荒らげる。
「もちろん証拠はあります。まずは島田さん。あなたが僕にえびせんべいをくれた時です。」
右京は胸ポケットからえびせんべいを取り出した。
「えぇ。それが何か?まさかそれが証拠じゃないですよね?」
島田がさらに声を荒らげる。
「いえ、えびせんべいではなく、これを買った場所です。
島田さん、あなたはこれを購入したのは近江長岡駅の売店と申しました。
そして買っている最中に特別快速が来たので慌てていたそうおっしゃいましたよね?」
「はい。」
「しかし、近江長岡駅はそもそも琵琶湖ではなく岐阜県側に近い場所にある駅ですし、
それに琵琶湖に行ったとすればJR西日本の管轄になります。
しかし、JR西日本管轄で滋賀県を走る路線に特別快速という種別の電車はありません。
あるのは米原から東のJR東海の管轄する東海道本線だけです。
琵琶湖に行ったのであればそんな発言は普通出てきません。
恐らく近江がついていれば何とか乗り切れると思ったのではありませんか?」

右京の問いに島田は言葉が詰まってしまった。だが右京は冷静だ。
「しかし、まだ嘘である確証はありますよ。」


41 杉上左京 2011/11/06(日) 22:56:09.07 ID:/KqapWhP0
シーン13-2

「島崎さん。確かあなたは船に乗るときに市川さんが、財布がないと騒いだエピソードをお話になられましたよね?」
「はい。」島崎が小さく頷く。
「そこです。多分琵琶湖周遊船に乗られるときのお話だったのでしょう。ですが、琵琶湖の周遊船は全て予約制です。
わざわざ財布を出して運賃を支払うことはありません。以上のようなお話を聞いたときからずっと疑問に感じていました。
それからもう一つ。皆さんの格好です。琵琶湖であれば今ぐらいの気候ならばあちらの方のように
薄い長袖の服装でヒールぐらいが丁度いいぐらいです。」
右京は今いる座席の前から五列目の席に座る女性を指差した。
「ですが、皆さんはかなり厚着でコートまでありますし全員運動靴です。そして靴にはかなり泥もついています。
まるで山を登ってきたかのようですね。」
右京は全員の服装と靴に視線を向けた。
「いや、私とかは結構寒がりだし…。」竹内が何とかフォローを試みる。
「竹内さん。寒がりならば何故そこに空のアイスカップがあるのですか?新幹線の車内に暖房はかかっていませんし
この気候で乗ったばかりでアイスクリームとは不思議ですね。ましてや寒がりというあなたが。」
右京は竹内の座席のネットに入っているゴミの入った袋を指差した。
中には完食したアイスクリームのカップが見えている。竹内も黙り込んでしまった。
「皆さんの目的はずばり大場さんの件の復讐。そうじゃありませんか?」
全員が右京の方を向く。
「何故杉下さん、大場のことを…。」
「実は独自の伝手で調べさせていただきました。最初から皆さんの行動には疑問を感じまして、
そして大場さんのスキャンダルの一件を聞いたときに何か裏があるのではないかと感じましてね。」
「もういいでしょみんな。全部話そうよ。」市川が涙を流し、かすれた声で言った。
「それにしても杉下さん。まるで刑事みたいですね。」
島田がうなだれた様子で杉下の方を向く。
「実は僕は…」右京がそう言った瞬間バイブ音が響く。右京は立ち上がりデッキに向かって足早に歩き、
デッキに着くとスマートフォンを耳に当てる。
「そうですか。どうもありがとう。」
電話を切った右京はドア越しにメンバーらを見つめる。


45 杉上左京 2011/11/06(日) 23:50:19.55 ID:/KqapWhP0
シーン14  10月29日22:08  車内

サイレンを鳴らした覆面パトカーが環七を突き進む。
乗っているのは警視庁捜査一課の刑事伊丹憲一、三浦信輔、芹沢慶二の3名。
伊丹は不機嫌そうな顔をしている。
「何でたって俺たちがこんな真夜中にアイドルの小娘なんかの保護に付き合わされなきゃいかんのだ。」
伊丹は助手席で頭を掻いた。
「アイドルの小娘ってゆいはんですよ!いやぁ僕なんて神戸さんから頼まれたときは飛び上がる思いでしたよー。」
運転する芹沢が顔を微笑ませていると隣の伊丹が芹沢の頭を平手で叩く。
「何だお前ゆいはんって炊飯ジャーじゃねぇんだぞ!ふざけてるのか?」
「ふざけてません。ファンの間ではそう呼ばれているんですよ。」
「何だお前、そのえー…何だっけ?アクベ48だったかそんな小娘集団のファンなのか?」
「ちょっと!伊丹さんまさかAKB48を知らないんですか?」
「興味はねぇし別に知ったところでどうってことねぇよ。なぁ三浦さん。
俺たちぐらいはそんなの知らねぇよな。」
「何だAKB48だろ。それ位俺だって知ってるぞ。息子がファンなんだ。
これで息子に自慢できる。何しろ人気のメンバーだろ。何ひとつ父親らしいことできていないからいい土産話になる。」
「へぇー。ちなみに息子さん誰推しなんすか?」
芹沢が興味津々の様子でバックミラー越しに三浦を見る。
「えーと確か、さ、さ、さし何とかって言ってたっけ。」
「さっしーですか!?良かったですね三浦さん。今から行くスタジオにいますよ。
今Notyetの新曲プロモの撮影中らしいので。」
「何!本当か!いやぁ刑事やってて本当によかったぁ!」
三浦は顔を微笑ませ定期入れに挟んである息子の写真を見つめる。
「何だクソ!俺だけ仲間外れじゃねーか!あぁ気分悪い。
一体どうなってるんだ最近の若い奴らは!」
伊丹は腕を組んでしかめ面をしながら窓の外を見る。


46 杉上左京 2011/11/06(日) 23:52:42.74 ID:/KqapWhP0
シーン15  10月29日22:12  都内某スタジオ

覆面パトカーはスタジオの玄関前に停車し、伊丹、三浦、芹沢が降りて玄関へ足早に駆けていく。

スタッフに案内され3名は楽屋のあるフロアを歩く。
そして奥から二番目の右側の楽屋のドアの右横に「Notyet様」と書かれた貼り紙がしてある。
伊丹がドアの前に立ち、2回ノックをしたところ中から「はーい」という声が聞こえたので伊丹がドアノブに手をやってドアを開ける。
「夜分遅くにすみません。私警視庁捜査一課の伊丹と申します。あと三浦と芹沢です。横山由依さんはおられますか?」
伊丹たちが警察手帳を見せる。そして伊丹の問いかけに対し正面に座っていた横山由依が手を挙げた。
「はい、うちですけど?何か?」
「実はあなたに危険が及ぶ事態が発生しましたので保護対象として警視庁で身柄を保護します。
お忙しいところ大変恐縮ですが警視庁まで御同行願います。」
伊丹の言った言葉に横山、北原理英、指原莉乃、大島優子は唖然としていた。
「ちょっと待ってください。まだ撮影の途中なんです。撮影まで待ってはもらえないのですか?」大島が立ち上がる。
「大変申し訳ありませんが人命に関わる問題で一刻も早く保護するようにと言われております。既
に運営側にも連絡してこの旨の了承を得ていますのでどうか御理解頂けますでしょうか?」
「人命って横山は命狙われてるってこと…ですか…?」
指原の顔は青ざめ、体を震わせていた。
「そうならない為に保護するのです。どうか御協力お願いします。」
三浦が頭を下げる。
「分かりました。撮影を途中で投げ出すようになるけどみんなに迷惑をかける方がウチはもっと嫌なので行きます。
みんな、ごめんな。ウチのせいで…。」
横山は3名に頭を下げて鞄を持つ。
「じゃあ行きましょうか。」
伊丹がそう言うと横山は小さく頷いて部屋を後にした。


47 杉上左京 2011/11/06(日) 23:57:51.88 ID:/KqapWhP0
シーン16  10月29日22:16  岐阜県関ヶ原 ひかり528号東京行 7号車車内

右京が車内に戻ってきた。島田たちは目を赤くしていた。
「そういえば途中でしたねぇ。」
右京はそう言うと右の内ポケットから警察手帳を取り出して提示する。
「申し遅れました。警視庁特命係の杉下と申します。最初はここまで言う気はありませんでしたが、
皆さんのことを調べるうちにやはり身分を明かしておく必要があると判断しました。本当にすみませんでした。」
「やっぱり杉下さん刑事さんだったんですね…。じゃあ私たちは…。」島田が下を向く。
「皆さんは確かに殺人を計画しました。ですが実行に移してもいませんし皆さんを告発するつもりもありません。
そして、ターゲットの横山由依さんは先程警視庁で保護しましたのでもはや計画は実行に移すことはできません。
もう真実をお話になられてはいかがでしょうか?」
右京は座席に腰掛ける。

しばらく沈黙の間があったが島田が一息ついて話し始める。
「杉下さんのおっしゃる通りです。大場のスキャンダル、翌日の自殺未遂を知った時に誓いました。
あれだけチーム4の為に頑張っていた大場をちょっと人気が出てきたからといってあんなものをネットに流して潰しにかかるなんていつも間近で見ていた私たちはとても許せませんでした。
ましてや流したのは横山ですよ。人気も全国区であれだけ活躍しているのにまさか同期で一緒に頑張ってきた大場にあんな仕打ちをするなんて思ってもいませんでした。」
「そのことを横山さんに問い詰めなかったのですか?」右京が島田に尋ねる。
「もちろん問いただしました。でも、否定するだけでなく自分は忙しい、そんなことに付き合う暇はないなんてもうすっかり私たちなんて相手もしてくれませんでした。
あの横山の態度も私たちをここまで駆り立てたのだと今考えるとそう思います。」
「なるほど。確かにこの間まで同じ研究生として苦楽を共にしてきた仲間からそのように突き放された発言が出れば頭に来たでしょうね。
それであなた方は横山さんに大場さんの経験した辛さを罰として与えようとしたというわけですね?」
「そうです。横山には大場の苦しみ、辛さを知って欲しかった。それができるのは私たちしかいない。
横山に自分の犯したことの重大性を知らせることができるのは…。」
島田はさらに涙を流す。


48 杉上左京 2011/11/07(月) 00:00:30.05 ID:1tqL+uuM0
シーン16-2

「ありがとうございました。しかし良かったです。
あなた方のような将来有望な方々を犯罪者になることを未然に防ぐことができました。
警察官としてこれ程嬉しいことはありません。」
「いえ、私たちも良かったです。杉下さんに会っていなければどうなっていたことか。」
島田がハンカチで目を拭う。
「しかしみなるんさんのブログを流出させた首謀者Xは誰なんですか?
杉下さんはもう知ってるんでしょ?」市川が右京を見つめる。
「えぇ、分かってはいるのですがまだ疑問が残っています。
何故横山さんはXの言うことを聞いたのかです。」
「杉下さん。もしかしてこれって罪になるのですか?」島崎が尋ねる。
「どうでしょうかねぇ?大場さんの個人ブログですしこれが悪意による流出と証明されれば名誉毀損罪に当たるかもしれませんねぇ。」
「やっぱり犯罪なんですか?」
「大場さんが刑事告訴を決めた場合は問われるかもしれません。警察も被害届を出されれば調べますからね。
そうなればこの犯罪計画も表沙汰になり警察が動く可能性も十分ありますねぇ。」
右京は水筒から紅茶を注いで飲む。
「あっごめん。私トイレ行ってくるね…。」
島崎が青ざめた顔で座席から立ち上がりカバンを持って足早にデッキの方へ駆けていった。
右京はそれを黙って見ながら紅茶を口に入れた。そしてバイブ音が響き、デッキに向かった。


50 杉上左京 2011/11/07(月) 00:10:31.03 ID:1tqL+uuM0
本日はここまでにします。この続きは明日の夕方に掲載予定です。
明日に完結までUPできると思いますので。

あと、森杏奈さんのニックネームが入山杏奈さんのニックネームを書いてしまいました。
十分な取材不足で勘違いしたまま掲載してしまい大変申し訳ありませんでした。
このような間違いもあった場合は遠慮なくご指摘願います。
かなり重大なミスでしたのでご指摘を頂いた皆様に大変感謝します。ありがとうございました。

ではまた明日というか本日夕方。


54 名無しさん@お腹いっぱい。 2011/11/07(月) 00:30:44.71 ID:9AVhvG650
あとは大河内さんと尊が一緒に酒飲むだけだな
ところどころ右京さんの口調がおかしい気がするけどそれは気にしないことにする


56 4たに 2011/11/07(月) 00:39:29.23 ID:E863FVweI
うん。掛け値なしに面白いです。
こうやって、違う方が書いた作品にwktkするのも
いいですね。
特にメンバーの心情が丁寧に描かれてるのは
とっても好きなスタイルです。

エンディング気になるなぁ。


61 名無しさん@お腹いっぱい。 2011/11/07(月) 05:57:51.59 ID:bFedPYb5O
相棒っぽい展開。
右京に振り回される尊にオタクな米沢、無関心のイタミン…、鉄板だけど面白い。
何より右京が右京っぽくていい。

古畑・相棒とくると、後は湾岸署が読みたいね。

ちょっと準備してみるか。


67 杉上左京 2011/11/07(月) 18:14:26.57 ID:1tqL+uuM0
シーン17  10月29日22:19 警視庁刑事部応接室

「今晩はこちらで御休みして頂きます。入口には警官を立たせます。
何かご要望などおありでしたらこちらの女性警官にお申し付けください。
あとお手数ですが狙う者が盗聴している危険性もあるので携帯電話を預からせてもらいます。」
伊丹がそう言うと制服を着た女性警官が歩み寄り小さなプラスチックのカゴを差し出す。
横山は渋々鞄から携帯電話を取り出してカゴの中に入れた。
「あの、いつ帰らせてもらえるんですか?撮影や公演もあるんで…。」
「なるべくお早めにお帰り頂けるよう全力で捜査にあたりますのでしばらくご辛抱ください。では、私はこれで。」
伊丹は一礼してドアを閉めた。

しばらくするとドアからコンコンと2回ノックする音が聞こえた。そして尊が部屋に入る。
「どうも、私警視庁特命係の神戸と申します。
入れ替わりすみません。実はどうしてもお聞きしたいことがありましてね。」
尊は左手で持っていたペットボトルのお茶を横山に差し出し、
そのまま右手で持っていたミネラルウォーターを一口飲む。
「はい、何でしょうか?」
「えぇ、実は僕の上司である杉下警部が今、新幹線の車内でチーム4の島田さんたちと一緒に同乗されているのですが、
実はそこで彼女たちが大場さんというメンバーの方の問題をあなたがネット上に流出させたことを恨んでいたという情報が入ったのです。
そう、あなたが保護されたのは実は彼女たちがあなたの命を狙っていたからなのです。」
「はぁ、そうですか…。」
横山はそう言ってお茶を一杯飲み、下を向く。
「おや、あまり驚いてないようですね?普通ならもっと唖然としたりするものですけど、まるでそのことを知っていたような素振りですね。」
「恨まれても当然です。ウチがしたことなんですから。ウチが全部悪いんです。ウチがあんなことさえしなければ…。」
横山は大粒の涙を流し始める。
それを見た尊は予想外のことで頭が真っ白になっていた。
「あの…。ちょっちょっと失礼しますね。」
尊は慌てて立ち上がり部屋の外へ出る。
そして携帯電話をポケットから取り出し電話を掛ける。


68 杉上左京 2011/11/07(月) 18:19:43.35 ID:1tqL+uuM0
シーン18  10月29日22:28 岐阜県関ヶ原 ひかり528号東京行 7号車車内

デッキの右扉前で島崎が鞄から紫の花束を取り出す。
その花束を見つめながら唾を飲み込み、根の部分を口へ持っていこうとした。
「またそうやってお逃げになるつもりですか?」
右京がポケットにスマートフォンをしまい、島崎の背後で言うとはっと動揺した表情で島崎が振り向いた。
「えっあっいや…その…。」
「やはり島崎さん。あなたでしたか。首謀者Xは。」右京の問いに島崎は小さく頷いた。
その時心配したのか他の5名が駆け寄ってきた。
「はるる!まさか、何であんたが…。」
島田が島崎の両肩に両手を持ち、体を揺らす。
「許せなかったの…。大場も横山も。最初この9期生は私が中心だった。
いろいろなお仕事にも呼ばれたし、公演もそう。総選挙も28位で当時の研究生では最高の評価だった。
それなのに…。公演すらロクに呼ばれてなかった横山が今じゃ中心メンバーにいるし、
大場なんてキャプテンよ!周囲も運営も私のことなんて忘れたかのような扱いになって…。
だから全員潰れてしまえばいいってそう思ったの!あんたたちだってよ。
何かあれば大場、みなるんって何よ。だからあんたたちがそこまで思うなら一緒に巻き込んで潰してやろうって!
どうせあんたらは私なんていようがいまいがどうでもいいって思ってるんでしょ?」
島崎が涙を流しながら声を荒らげて島田を突き放した。
島田は右手で島崎の頬を引っぱたいた。
「ぱるる!何ふざけたこと言ってるんだよ!?私はあんたをどうでもいいなんてこれっぽっちも思ってない!
ここにいるメンバーもそうでないメンバーも!
そして巻き添えのようにチームを去った杏奈だってそう!あんたは間違ってる!」
二人の言い合いで周囲の人間がざわつきデッキ近くに人が集まってくる。

「二人ともおやめなさい!!新幹線の中ですよ。」
右京が突然大声で二人に一喝する。
「あ、あの…お客様…。」
ひ弱そうな若い車掌が駆け寄ってきた。
「申し訳ありません。すぐ済みますのでどうか他のお客様を席にお戻しください。
我々もすぐに戻りますので。」
右京がそう言うと車掌は野次馬の乗客に席に戻るよう促してあっという間に静かになった。
「島田さんのおっしゃる通り島崎さん。あなたは間違っています。
もし、あなたをどうだっていいなんて思うのなら何故横山さんは自分がやったと言い張るのでしょうか?」
「杉下さん。それはどういうことですか!?」島田が驚いたような様子で右京を見つめた。


69 杉上左京 2011/11/07(月) 18:33:24.24 ID:1tqL+uuM0
シーン19  10月29日22:23 警視庁刑事部応接室

「全部ウチが考えてやったことです。ウチが全部悪いんです。
犯罪になるんやったらウチを捕まえてください。ウチは全て受け入れる覚悟はしていました。」
横山は強く尊に迫る。尊はミネラルウォーターを飲み干すと溜息をつく。
「横山さん。誰かを庇いたいお気持ちはよく分かりますけどもう分かっちゃっているんですよね。
島崎さんが全て仕組んだ事も。
証拠として流出させた劇場近くのネットカフェの防犯ビデオに島崎さんが先に個室に入って出た後にあなたが入るの。
そしてその前後にあなたたちが携帯電話でやり取りをしている記録も。
警察はもう全て調べているのですよ。だから正直に真実をお話してくれませんか?」
「さすが日本の警察は優秀ですね…。そうです。神戸さんの言うことは正しいです。
でもウチがいけないんです。ウチが美奈ちゃんのブログを見つけてしまったことが全てなんです。
それを遥香ちゃんに見せてしまったのが…。遥香ちゃんがあんなことを企ててしまったのはウチのせいなんです。
だからウチは流出に協力もしたし、悪役にもなりました。それが私が美奈ちゃんにできるせめてもの償いです。
まさか美奈ちゃんがあそこまで思い詰めるなんて…。そしてその流れでまさか杏奈ちゃんのまで流れてしまうとは…。」
横山は大粒の涙を流して自分を責める。
それを見た尊はポケットからハンカチを取り出して横山に差し出し、横山は一礼してハンカチで涙を拭う。
「横山さん。そんなに自分を責めないでください。そして、そんなことで自分を犠牲にしても誰も得はしませんし、
それは贖罪をしていることではありません。
あなたが本当に贖罪の意識があるのであれば真実を話し、彼女の贖罪を促すことだけです。
あなたはそれをやり遂げた。もう十分贖罪を果たしましたよ。」

尊は立ち上がり、ドアを開けて外にいた警官から横山の携帯電話を受け取る。尊は横山の携帯電話を渡す。
「もうお帰り頂いて結構です。あっすみません。ひとつお願いがあるのですが…。」
尊は色紙と黒の油性マーカーを取り出した。


72 杉上左京 2011/11/07(月) 19:41:36.08 ID:1tqL+uuM0
シーン20  10月29日22:34 岐阜県関ヶ原 ひかり528号東京行 7号車車内

「島崎さん。今のあなたはこの新幹線と同じ状態ですねぇ。」
右京は島崎の目を見つめる。島崎はもちろん他のメンバーも理解できなかった。
「変な例えですみません。つまり、島崎さん。あなたは最初の高評価に満足してしまいそこで立ち往生してしまっているのですよ。
あなたが満足している間に悔しい思いをしたメンバーは評価を上げるために必死に努力をします。あなたの何倍、何十倍、何百倍も。
そうなれば追い越されるのは必然ではありませんか。新幹線と人の違いは単純です。新幹線は色んな条件が一つ欠ければどうしようもありませんが、
人は障害があっても何とかして乗り越えようと頭を、体を使い条件を整えます。
ですが、あなたは他人の作る条件をアテにしてそれがないとなれば他人のせいにして他人を排除してしまおうと考える。
自己成長をするという考えがないじゃないですか?他人を排除してもあなたは成長しません。
ただ立ち往生しているだけで何も変わりません。」
右京の言葉に島崎は出る言葉がなかった。
そして今まで右手に持っていた花束を床に落とし、自分も床に崩れた。
「杉下さん…。私、間違っていました。何でも他人のせいにして逃げてきた。
そうやって自分の置かれている現実から目を逸らしていた…。でも、もう遅いですよね。私、あんなことを…。」
島崎の涙が床に滴り落ちる。
「いえ、島崎さん。あなたは何も罪を犯していませんし、私はあなたの行為を処罰するつもりもありません。
だから今からでもやり直しは可能です。今回のことを深く反省し、今後の活動に活かしてください。
あなたならばきっと成長できるはずだと私は思います。」
島崎は顔を上げる。そして、座り込む島崎に島田が右手を伸ばし、島崎は左手を差し出して起こしてもらった。
「そして、あなた方が罪に問われない理由がもうひとつあります。
それは、島崎さんがお持ちになっている花束です。それはイブキトリカブトだと思っていらっしゃるようですが違います。
それはリンドウです。当然無毒で何かに混ぜても体に害はありません。御存知なかったでしょうね。一人を除いて。」
右京は後ろを振り向き、右端にいた仲俣を見つめる。


73 杉上左京 2011/11/07(月) 19:45:15.79 ID:1tqL+uuM0
シーン20-2

「杉下さんはやっぱり分かってらしたんですね。」仲俣の顔に笑みが溢れた。
「えぇ。僕の推測ですが、仲俣さんはこの計画を阻止したかった。しかし花の知識が薄いメンバーが多いので
あなたが花の確認をする係に名乗り出た。
同じ山で同じ色の花であれば勘違いをしてそれを持ち帰ると踏んでいた。そうではありませんか?」
「さすが杉下さん。何でもお見通しですね。でも、これはみおりんが言ってくれたおかげなんです。」
仲俣は左手で隣にいた市川の右肩に手を置く。
「なるほど。市川さんはずっと僕が核心に迫るにつれて表情が不安そうでした。
この計画にあまり乗り気ではなかったのは事実だったようですが…。」
「私、島田さんたちがコソコソこの話をしてるのを聞いちゃって不安になりました。
このままじゃチーム4はとんでもないことになってしまうって思ったんです。
だから毒のない違う花にしちゃえば何もなくて済むって思ったからなかまったーに相談したんです。」
「つまり、例え実行に移しても何もなかったのです。あなたたちは本当に素晴らしい後輩メンバーに恵まれましたね。」
島田ら9期生メンバーは唖然としていた。自分たちの計画は既に阻まれていたこと、
後輩の市川、仲俣がそんなことを考えていたことが信じられなかった。
「実は島田さん、竹内さん、山内さんもこの計画ではあなた方も立ち往生していたようですねぇ。
でも、それで実際あなた方は犯罪者にならずに済んだのです。お二人に感謝すべきですよ。」
「あんたたち本当に余計なことを…。でも、ありがとう…。」
島田が涙を流し、市川、仲俣を抱きしめる。そこに島崎、山内、竹内も加わり全員が涙を流す。
「では、お邪魔になりますから座席に戻りましょうか?」
右京がそう言うと6人は座席へ戻った。
右京も戻ろうとした時、バイブ音が響く。右京は立ち止まり、スマートフォンを取り出して右耳においた。
「杉下です。はい、はい、ほぉそうですか…。どうもありがとう。」
右京は通話を切り、スマートフォンをポケットに入れて座席の方へ歩いていった。


75 杉上左京 2011/11/07(月) 19:50:41.57 ID:1tqL+uuM0
ラストシーン

「杉下さん。さっきの電話があったようですけど…。」
竹内が尋ねると右京は笑みを浮かべた。
「大変良いお知らせです。大場さんが意識を取り戻されたそうです。
医師の話ではこのまま容体が安定すれば数日で一般病棟に移せるとのことです。」
「よかったぁぁぁー!!」6人がハイタッチをして涙を浮かべながらこの知らせを喜んだ。
右京も微笑み、水筒の紅茶を注ぎ、一口飲んだ。

「えー、お客様にお知らせします。只今現場検証と保守点検の方がすべて終了したとの報告がありました。
これより運行を再開致します。お客様には大変長い間お待たせしまして申し訳ございませんでした。
次は岐阜羽島に停車します。」
車掌のアナウンスに車内も安堵の声が響き渡った。そしてゆっくり新幹線が動き始めた。
「ようやく動き始めましたねぇ。」右京が窓を見ながら言う。
「えぇ、私たちもようやく動き始めました。これからの成長を見ていてください。」
島田が後ろにいる右京の方を向いて力強く言った。
「えぇ、是非劇場で拝見させていただきます。」
「杉下さん。是非何かお礼をさせてください。
私たちは杉下さんのおかげで動き出せたわけですから。」
「いえ、お礼は既に頂きましたから結構です。」
右京がそう言うとスマートフォンの画面に映る横山と横山のサインが写った写メを見て微笑んでいた。

長い間停車していた新幹線は徐々に加速し、漆黒の暗闇のなかを一気に駆け抜け、東へ向けて走り去った。

このお話はフィクションです。


76 名無しさん@お腹いっぱい。 2011/11/07(月) 19:55:10.28 ID:nAhLHh+hO
>>75
お疲れ!良かったです
4メン好きだから目立たせてくれてうれしい


77 名無しさん@お腹いっぱい。 2011/11/07(月) 20:38:31.92 ID:xlWbzsSM0
おつおつ
楽しませてもらいました^^


78 名無しさん@お腹いっぱい。 2011/11/07(月) 20:48:51.66 ID:qCAoROJrO
面白かったです!!
これからも応援してます(^-^)/


79 名無しさん@お腹いっぱい 2011/11/07(月) 20:50:17.66 ID:WT5uHYXJ0
面白かったです♪

神戸さんの活躍も読んでみたいなあ


あ、でも「ぱるる」ね(^^;)


[小説]杉下右京vsAKB48[相棒]

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