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1: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 12:41:26.71 ID:TO5vVB8s0
以前、AKB小説として戸賀崎さんの短編小説や握手会を舞台とした
サスペンス小説を載せさせて頂きました。
その際のコメントに「今度はSKEで」と書き込みがありました。
しかし当時はSKEのメンバーの知識が乏しく快い返事が出来ませんでした。
それから、少しずつ勉強をさせてもらいどうにか彼女達を主人公にして
小説が出来上がりました。

暇つぶしに読んでもらえれば幸いです。

前回もそうでしたが連続投稿規制(バイさる)に掛ると一定時間投稿
できませんので了承願います。

尚、章題と曲の内容は関係ありません。



『overture(SKE48 ver.)』


朝からの土砂降りの雨
校庭に投げ捨てられた鞄
慌てて駆け寄る女生徒と3階の窓から嘲笑するクラスメート達
泥水の中に散らばった物を鞄の中にかき集める少女
篠突く雨は更に追い詰めるかの様に彼女の体を激しく叩きつける
髪を濡らした雨は滴り落ち、頬に流れた

鞄のサイドポケットからフェルトで作られたマスコットを取り出すと
両手で包み込み祈るようにしながら彼女は嗚咽の合間に呟く

「珠理奈、助けて…」

3: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 12:46:21.82 ID:TO5vVB8s0
『兆し』


松井玲奈のマネージャー川崎は駅弁二つが入った袋を片手に持ちながら
新幹線のチケットを見つつ二人を先導してグリーン車に乗り込んできた。
座席を探しながら、乗客が少ないのに安堵する。

「あっ、ここだ」

と示しながらホーム側とは逆の列の席に松井玲奈と松井珠理奈を誘導する。
川崎のすぐ後ろにいた玲奈は珠理奈に道を譲ると窓際に座らせた。
二人が席に着くと川崎は持っていた駅弁を玲奈に渡して
彼女達が持っていたボストンバックを荷物棚に乗せてやった。

「はいこれがチケット。いつもの通り東京駅で本田さんが待ってるから」

と玲奈に二人分の必要なチケット類を渡した。
それぞれ事務所は違うが利便性を払い移動に際しては、
名古屋では川崎が、東京では珠理奈のマネージャーの本田が担当していた。

「それじゃ気を付けて」

「はい。お疲れさまでした」

玲奈は川崎の背中に声を掛けた。

「そうそう、珠理奈はちゃんと学校の宿題をしておくように」

「もう高校生なんで宿題はありませ~ん」

と言われた珠理奈は舌を出す。川崎はそれを笑って受け止めホームへ出た。

「さぁ、お弁当食べよう。ペコペコだったんだ」

珠理奈は玲奈が持っている弁当の入った袋から弁当と飲み物を取り出した。

「珠理奈。ほらまだ川崎さんが見てるから」

と肘で珠理奈を突きホームからこちらを見ている川崎に視線を送った。
珠理奈はえへへと笑い川崎に対して媚びた。川崎は半ばあきれ外人風に肩をすくめた。
やがてドアが閉まり静かに列車は名古屋駅を発車する。
川崎は『いってらっしゃい』と声に出さず口だけを動かし小さく手を振る。
車内の二人も『行ってきます』と同じ様に返す。
ホームに残った川崎は両手を上に伸ばすと背伸びをして溜息をつき階段に向かって歩き出した。

5: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 12:51:28.09 ID:TO5vVB8s0
二人は早速弁当を広げ頬張った。

「ねぇ玲奈は今度の新曲の振り付け覚えた?」
「ああ、あれね。サビの部分が難しいよね」
「でしょ、あそこ本当に難しいよ」

と箸を持ちながら腕だけで振りをする。

「こ、こら珠理奈行儀悪いから」

玲奈は慌てて珠理奈を制止する。それでも玲奈は珠理奈とこうしているのが嬉しくてしょうがなかった。

「さっきまで夕焼けが綺麗だったのにもうすっかり夜だね」

食べ終えた珠理奈が外を見ながらつぶやくと玲奈も黒い鏡になった窓を見た。

「本当だね、真っ暗だ。でもこの街灯り好きなんだよね」

玲奈は流れて行く風景を見る振りでガラスに映る珠理奈の顔を見つめた。

「そうだ、ググタス見なきゃ」

と珠理奈は傍らのポーチからスマートフォンを取り出して操作した。

「これ、まだしてたんだ」

と声を掛けられ玲奈を見た珠理奈はポーチのチャックに付けられたストラップを持ち上げ

「これ?」
「うん。たしかSKEが始まった頃にしてた物だよねえ」
「よくそんな前の事を覚えてるね。これはね初めてもらったお給料で自分用に買ったストラップなんだ

ほら、“JURINA”って書いてるでしょう?これね自分で好きなパーツを集めて作れるんだよ」
珠理奈は懐かしそうにストラップを見ている。

「暫くしてガラケーからスマートフォンに変えたでしょ、でもねこれだけは離せなくてこうしてポーチに付けて持ち歩いてるの」
「それじゃ凄く思い入れがあるんだね」
「まぁね」
「ちょっと見せてもらっていい?」
「えっ、いいけど」

珠理奈はポーチごと玲奈にストラップを渡した。玲奈はそれを受け取るとポーチひざにストラップを左の掌に載せる。
それからそれを包み込むようにして右手を上から被せると目を閉じた。
珠理奈はその何かの儀式のような仕草を黙って見ていた。暫くその状態が続いたかと思えば玲奈が目を開けた。

「これより大切にしているアクセサリーがあるよね?」

唐突な問い掛けに答えられない珠理奈

「それは、学生鞄に付けている手造りの人形?みたいな物でしょ」

玲奈の言葉を聞いて珠理奈は大きく目を見開いた。

「ど、ど、どうしてそれを…」
「このストラップが教えてくれたの」

玲奈は珠理奈の驚き振りが楽しいのかニコニコしている。

7: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 12:56:30.30 ID:TO5vVB8s0
「うそだ。きっと前に学校から直接劇場に来た時にたまたま鞄に
付いていたマスコットを見たんでしょ」
「違うよ。だからこのストラップが教えてくれたんだって」

それでも懐疑的な表情で見ている珠理奈に対して
玲奈はもう一度ストラップを掌に包んだ。
そして今度は目を閉じたままクスクスと笑った。

「珠理奈、あなた今朝部屋でこけたでしょう。それもパジャマから
着替えている時にバランスを崩して…」

そこまで話したら玲奈は笑って先が続けられなくなった。

「玲奈!ストップ、ストップ。ストラップ!」

真っ赤になった珠理奈は玲奈からポーチごとストラップを奪い取ると
自分の顔の横に持っていき
最後はぶら下がっているストラップを指差し叫んだ。

「分かった、分かったからもう許して」
「信じてくれたならいいけど」

玲奈はニヤニヤが止まらない。

「あぁ、びっくりした。もう、玲奈には何も触らせないから」
「大丈夫だよ。意識しないと全然聞こえないから」
「何?どう言う事」
「あのね」玲奈は自分の不思議な能力について話し始めた。
「お話が出来るのはその人が大切にしている物だけ。
それ以外は無言か最低限の単語だけの
いわゆる塩対応なの」
「このストラップは珠理奈の想いが込められてるからいっぱい
話してくれたんだ
でもね思いが強過ぎるとこっちの都合なんて関係なしに声が
入り込んでくるのが難点なのよね」

うんざりした表情で更に続ける玲奈。

「前に握手会で30代位の女の人が来たの、
その人と握手した瞬間に男の人の声が聞こえて
いえ聞こえたって言うかラジオの様に音声がドドッって
頭に入り込んできた感じ。その時に『あっ、この人亡くなってるんだ』って
分かったの。するとその人が『先月亡くなった主人がファンで今日は主人の代わりに来ました』って話してくれたのよ。
後で見るとその人2つ結婚指輪をしてた、
多分旦那さんの思いが指輪を通して入って来たのね。
『ご主人喜んでますよ』って聞こえた声を伝えると奥さんがありがとうって言ってくれた」
「ちょっとやめてよ、苦手なんだからその手の話」

珠理奈は両腕を抱えながら訴えた。

「ごめん、ごめん。でもそれ本当なの。
困ったのは負の思いも伝わるから嫌な気分になるの」
「あっ、だから急に玲奈が不機嫌になるのはその所為?」
「そう。そんな時はどうしょうもなくて、ひたすら楽しい事を考えようとするんだけどね」
「それは、それで大変そう」

珠理奈はやがて窓の外に目をやると「私だけじゃなかったんだ…」とつぶやいた。

「えっ?何、聞き取れなかった」

玲奈の問い掛けに意を決した様に話をし始めたが囁くような
小さな声だったのでよく聞き取れなかった。

「それでね、実は私も…」

と珠理奈が言い掛けた時、列車はトンネルに入ったので
更にその声はノイズにかき消された。

9: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:02:51.76 ID:TO5vVB8s0
『アンテナ』


SKEのメンバーはその日PV撮影の為にマイクロバスで現場に向かっていた。
朝が早かったせいか何人かは寝ていたが、後ろの座席に集まった数人は賑やかだった.
その中でも中西優香は今回撮影のデモ曲をiPodで繰り返し聞いていた。
その隣に座っていた出口陽も中西に見習いポシェットからiPodを出した。
本体にヘッドホーンのコードを巻き付けているので少し乱暴にコードを引っ張ったから
コードは絡まってしまった。

「何これ!本当に腹が立つ」
出口は引きちぎるかのように、コードを振ったので尚の事固く結ばれた。
中西はそれを横目で見ながらそっと出口の左手を取り両手で包(くる)みながら

「落ち着いて、あきちゃん」
すると出口は急に体の力が抜けたように座席の背にもたれ掛って溜息をついた。
「あぁ何か中西に手を握られると癒される感じがする」
「そう、よかった。一体どうしたの?イラついてるみたいだけど」

中西は手を離して顔を覗き込むように話し掛ける。
出口はもう落ち着いていて絡まったコードを丁寧に解きながら
昨晩電話で母親とけんかをした話をした。
「そうだったんだ」
中西は話を聞きながら「どこでも親が口うるさいのは一緒だね」と笑った。
「それにしても」とふと気付いた様に「中西に手を握られた瞬間に安らいだ気分になれたのはなんでなの?」
と疑問を中西に訊いた。

「だって私自称“Healing Human”だから」
「な、な、何?その“Healing Human ”って」
中西は、それに答える代りに出口の首の後ろに右手を差し入れ、額に左手を当てると念を込める様に目を閉じた。

「ちょっと何するの・・・・」

出口は突然の中西の行動に驚いた表情になったが、たちまち静かになり目を閉じ眠りに落ちた。
中西はクスッと笑うとすぐに両手を引いて暫く寝顔を見つめていた。
やがてバスがカーブに差し掛かり体勢が動いた刺激で出口は目を覚ました。

「…あれ、私寝てた?」
「うん、気持ち良さそうにね」
「ああっ!」
出口は何かを思い出したかのように大きな声を上げたから一瞬何人かのメンバーが注目する。
その視線に気付き急に「何でもないよ、ちょっと寝ぼけただけだから」と言い訳をした。
そして声を潜めて中西に耳打ちする。

「何なのあれ?」
「だから言ったでしょ“Healing Human ”だって。手を握ると落ち着かせ、首の後ろに手を当てれば眠らせてあげられるの」
「うそ!超能力を持ってるの」
「超能力かどうかは知らないけど知らない内にこんな能力が身についてたの」
「それじゃ、中西の握手会に来た人は皆癒されるの?」
「それはないと思う。だって私意識しないもん」
「意識しないと癒されないの?」
「うん。だってずっとしてたら凄く疲れるんだ」
「へぇ、中西ならではの能力だね。今度イライラしたら癒してもらおう」
「別にいいよ。お役に立てるなら」

中西は出口に向かってアルカイックスマイルを見せた。

10: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:09:36.89 ID:TO5vVB8s0
現地に着くと風は少しきついがきれいに晴れ渡り気持ちがよかった。
すでに撮影スタッフが準備を終えていて後はメンバー待ちの状態だった。
「着替えとメイキャップはあそこのキャンピングカーで、ただ狭いので順番でお願いします。それと休憩食事はこのバスを使って下さい」
やがてメンバー全員のスタンバイが終わり監督からの説明が行われ撮影が開始された。
ただその日は、時折強く吹く風の所為でかぶっている帽子が飛ばされたりして何回かの中断が余儀なくされた。
監督は時間が勿体ないので当初の計画を変更しコマ切りで繋げる方法で色々なテイクを撮る事にした。

全員で撮るシーンで何回も中断する所をSKE48劇場の支配人である湯浅洋は最初から見ていてある事に気付いた。
午前中の撮影が終わり、昼食休憩が取られると湯浅は監督の元に行った。
「監督、すいません。さっきの撮影した映像見れますか?」
「えっ、さっきの?ええいいですよ」
と言うと映像担当の者に声を掛けると湯浅に見せる様に言った。
「忙しいのにすいません」
と湯浅は担当者に謝ると彼は「いいですよどうせ今の内にチェックしなくちゃならないんで」
と二人で弁当を食べながら小さなモニターで最初から今撮影した映像を確認した。
どのテイクでも最後は風の所為で衣装が乱れ中断していた。
「やっぱり…」
湯浅がつぶやく
「何かありました?」と聞かれたが「ああ別に僕の勘違いでした」と思わず答えてしまった。
それから最後まで映像を見終わると「ありがとうございました」と礼を言いその場を離れた。
(まさか言っても信じてくれないだろうし、本当に感違いかもしれないし…)
湯浅は直接本人に聞いてみる事にした
マイクロバスで休憩していた須田亜香里を呼び出すと単刀直入に疑問を投げかけた。

「休憩中にゴメン。ちょっと気になる事があって」
少しよそよそしい湯浅の口調に亜香里は警戒した。
「な、何でしょうか…?」
「もしかしてお前分かるのか?」
「え~と、分かるのか?が分かりません」
「あっそうだよな。説明しなくっちゃ分からないよな。」
湯浅は照れ笑いをした。しかしこれで落ち着く事が出来た。
「さっきの収録風景をずっと見てて気付いてさっき映像も確認した。ズバリ聞くがお前、風が吹くタイミングが分かってるのか?」
「えっ、どうしてそれを?」
「お前は風で皆の帽子やらが飛ばされる前にすでに帽子やスカートを押さえてる。いやお前がそうすると風が吹いてくるような気さへする」
「…。ばれましたか。実は私分かるんです、突風が吹くのが。気配を感じるとかそんなんじゃなくて直感って言うかよく分からないんですけど」
「やっぱりそうか…。秋元先生が言ってたのはこう言う事だったのか…」
「秋元先生が?何て言ってたんですか」
今度は亜香里が質問してくる。
「ああいや、何でもないよ。お前だけじゃないかもしれないなそんな能力があるのは。ありがとう、すっきりしたよ」
「湯浅さんはすっきりしたけど私はすっきりしてない!」
立ち去ろうとしている湯浅にしがみつきその答えを聞きだそうとする。
「ごめん、また今度話すから」
と言い残すと地団駄を踏む亜香里を残して足早に湯浅は立ち去って行ってしまった。
「う~ん、も~う!」
亜香里はあきらめて戻ろうと振り向いた時、そこにニヤニヤしている出口陽と目が合った。
(だめだ、やっかいな人に見つかった…)
二人の気持ちは見事なまでに反比例した。

11: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:14:40.56 ID:TO5vVB8s0
1日目の撮影も終わりメンバーとスタッフはホテルに入った。
昼間の汗を温泉で洗い落とし、大広間で全員での晩御飯を食べる事になっていた。
大人の人達はビールでメンバー達はジュースかお茶で乾杯し
現地で取れる海の幸山の幸に舌鼓を打っていた。
スタッフはアルコールで気分がいいのかエコーの効きすぎた
カラオケでそれなりの歌をそれなりに唄っている。
少女達はアルコールがなくとも美味しい食べ物があれば盛り上がれる。
向田茉夏はウーロン茶をビールの様に隣に座っている玲奈に
「まぁ一杯」と立て続けに注いで飲ませていた。
玲奈は茉夏から注がれるのが嬉しいのかやけにテンションが高く、
ふざけて酔った振りをして茉夏に抱きついた。
「まなつ、こんなに私を酔わせてどうするの?」
「ちょ、ちょっと玲奈さん重いって。それにウーロン茶で酔うわけないでしょ」
「えへへへ、分かった?う~んまなつ可愛いよ!」
再び玲奈は茉夏に体ごと寄り掛かった。
「玲奈さん、トイレはここを出てまっすぐ行って一つ目を右に曲がったところにありますよ」
「ありがとう、まなつは本当に気が利くね。
でも何で私がトイレ行きたいって分かったの?」
「えっ、え、えっとほらさっきからウーロン茶ばかり飲んでたじゃないですか。
だから行きたいんじゃないのかなって…」
そう言いながら目が泳いでいる茉夏を見た玲奈は
「その話は後で聞くからね」と席を立った。
残された茉夏は(ばれたかな?)と少し焦りながらも「まぁいいや」とつぶやく。
やがて玲奈が帰ってくるとコップに残ったウーロン茶を一気に飲み干す
「まなつはいつから分かるようになったの?」
いきなり単刀直入に聞いてきた。
「な、何なんですかいきなり」
ととぼけてはみたものの玲奈がそう言う能力がある事を前提に話を聞いていると察した。
「分かるんでしょ?」
「分かるか分からないかと言えば分かる方でしょうね…」
茉夏は仕方ないとそう告白した。玲奈はにた~っと笑うといきなり抱きついてきた。
「やった~!私と一緒だ!」
「え~っ!玲奈さんもおトイレ行きたい人とおトイレの場所が分かるんですか!」
「違うよ。私の場合は物とお話が出来るの」
「うそ、何かカッコイイじゃないですか。
私なんかトイレですよ、それに自分が行きたい時はトイレの場所は分からない
他人じゃないと見えないんですから自慢にもならない」
「へぇ~、まなつがトイレねぇ」
「玲奈さん変な言い方しないで下さいよ」
「もしかすると他にもいるかも知れないわね」
と玲奈は少しワクワクしていた。

12: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:22:23.10 ID:TO5vVB8s0
『Innocence』


少女は仕事で遅くなる父親を待つ事無く母親と二人で食事を終えると
それから一緒に台所へ立ち洗い物を済まし、自分の部屋へ戻って来た
鞄の中から、破られた写真の破片を出すと机の上でジグソーパズルの様に並べた

突然、奪い取られた写真
返してと懇願する少女
破られた写真は宙を舞い少女の涙を隠した
破片をあわてて拾い集める少女を見下し蹴り飛ばすクラスメート
床に転がりながらも拾い集める事を辞めない彼女を
皆はみて見ぬふりをした

「よかった、珠理奈の顔は破られてない」
そう呟くと今日何度目かの涙を流す
「私が悪いんだ。大切なものを持っていった私が悪いんだ」
破れた所をテープで貼りながら自分を納得させる様に繰り返す言葉
「そうだ珠理奈に手紙を書かなくちゃ」
少女は可愛らしい便せんを用意した

“色々あったけど、今は友達も出来て楽しい学校生活を送っています
これもすべて珠理奈が私に元気をくれたおかげだね
友達にもSKE48を応援するようにいつも話していて今度チケットが取れれば
一緒に公演に行こうねって約束したよ”

(ごめんね、珠理奈…これが最後だから…)


コンサート以外ではテレビ収録でない限り、SKE48全員が集まる事は少ない。
そしてその楽屋はいつも騒がしい。これは慌(あわ)ただしいだけでなく
そう言う年代が集まっているからかも知れない。
向田茉夏は古川愛李の隣でメイクをしていた。
二人で取るに足らない話をしている所に八方美紀が割り込んできた。
「あいりんさん、ごめんなさいこれの片方が見つからないの」
とイヤリングを一つを古川に手渡す。
「鞄の中をよく見て、底の方に転がってるから」
「ありがとう。てっきり家かなって思ってたから」
イヤリングを返してもらうと矢方は戻って行った。
「玲奈さんが言ってた事は本当だったんだ…」
「うん?まなつ、どうしたの?」
「あいりんはいつから分かる人になったんですか?」
「何の事?」
「いや、とぼけなくても分かってるんですから」
茉夏は“知ってるんだぞ”と言いたげな顔で愛李を見ている。
「そんな顔されても、本当に分からないんですけど」
「さっきのみきてぃのやり取り、見てたんですから」
「あっ、あれ?まなつは知らなかったんだっけ。別に隠してた訳じゃないんだけどね」
「知らない」
「私ペアになっている物の片一方がなくなったらどこにあるか分かるんだ」
「やっぱり玲奈さんが言ってた事は本当だっんだ」
「何?玲奈さんが何て言ってたの」
茉夏はあの時の話を愛李に聞かせた
「玲奈さんも茉夏そうなんだ、私が知っているのはかおたんもそうだよ」
「かおたんも?」
「そう、彼女は街灯や家の電燈が点くタイミングが1時間以内だったら時刻でわかるんだって」
茉夏は新たに知るメンバー達の特殊能力を知る度に何故今まで知らなかったんだろうと思った。
それは多分、自分も含めて“別に自慢出来る能力ではない”と言う事だったからだろうと推理した。
「うそ!SKEってそんな人ばかりいるの?」
茉夏が驚いていると出口陽が寄って来た。

15: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:27:42.96 ID:TO5vVB8s0
「まなつ、何騒いでるの、私も混ぜてよ」
「何かめんどくさいのが来た」
「あいり、その言い方ひどくね~」
「今ねSKEには特殊能力を持っている人が何人かいるって話をしてたんです」
「特殊能力…?あぁ、中西やだーすーみたいな人の事か」
「ええっ、中西さんやあかりんもですか!」
茉夏は驚き半分ワクワク感半分で楽しくなりつつあった。
出口は二人の話を聞きながら何かを思いついた様にニヤリと笑う。
「陽さん、また変な事考えているでしょう?」
愛李は暴走する前に釘を刺す。
「まぁまぁ、私にまかしておいて」
そう言うと出口陽は離れて行った。
その日から彼女は水面下で暗躍しながら新たなプロジェクトを立ち上げようとしていた。

『AKB48 リクエストアワーセットリストベスト100 2013』
でのSKE48の全体リハーサルが地元名古屋行われた。
朝から飽きるほど繰り返されるリハーサルに対して誰もが真剣に取り組んでいる。
劇場の舞台と違って広いステージを使ってのパフォーマンスに慣れるには時間を要した。
その中でも皆で食べるランチは楽しみの一つでもある。
茉夏は食事が終わったら集まる様に出口から言われていたので同じ休憩所の隅のテーブルに向かった。
そこには、すでに何人かが集まっていてその中に松井玲奈もいた。
玲奈は茉夏を見つけるとここへおいでと隣に座る事を勧める。
一通りのメンバーがそろった頃、出口が立ち上がり集まってもらった旨を説明し始めた。
「えーっと、皆さんに集まってもらったのには訳があります」
誰もが半ば仕方なしに付き合って上げている感が滲み出ていたが、黙って聞いている。
「私、出口陽の調査によればここにいる皆さんには特殊能力がある事が判明しております」
出口は大袈裟に話し続ける。
「先ず私の右にいるあいりんはペア物の行方不明になった片方の在りかが見えます。
その隣の中西は人を癒しの能力で眠らせる事が出来て、次の玲奈は想いの詰まっている物と話が出来ます」
その時に「凄い」と誰かから言葉が漏れた。
「隣の茉夏はその人に触れただけでトイレに行きたいか分かり尚且つトイレがどこにあるかも分かります」
「…なんか恥ずかしい」
と当の本人は思わず俯く、玲奈はそんな茉夏をヨシヨシとする様に頭をポンポンと叩いた。
「そして、かおたんは街灯や部屋の灯りが点くのが分かり、
だーすーは突風が吹くのが分かって最後に珠理奈は何と…」
と言いかけた時リハーサル再開の声が掛り、結局何の為に集められたか分からず終いで中断されてしまった。

16: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:32:14.30 ID:TO5vVB8s0
『手紙のこと』


その日のリハーサルが終わったのは夜遅くになっていた。
皆が帰り準備をしていた時にAKSのスタッフがメンバーに届いたファンレターを配った。
珠理奈は輪ゴムで括られた手紙の束を受け取ると、すぐに誰からか確認をしその中から1通を取り出して読み始めた。

「珠理奈、何ニヤニヤしているの?」
玲奈は手紙を読んでにやけている珠理奈に話しかけた。
「だって嬉し事が書いてあるんだもん」
とにやけた顔を崩しもせず玲奈に向かって答える。
「この子ね私と同い年で、ほらこの前話したでしょう私が大切にしている手作りのマスコットをくれたのが彼女なの」
「ああ、おぼえているよ確か学生鞄に付けていたんだっけ」
「そう、それ。彼女、名前は白河優希って言うんだけどね。実は優希は学校でいじめに遭っていて
そんな中私をテレビで知ったんだって、同い年で私のダンスを見ていたら元気が出てそれからSKEの曲を聞き始めて
いじめは辛いけど頑張ろうって気になったって手紙をくれたの」
「へぇそうなんだ。でもその笑顔からして今は立ち直ったのかな」
「そう。今は友達が出来て今度SKEのコンサートも一緒に来るんだって」
ほらっと珠理奈は玲奈に手紙を渡した。
「読んでもいいの?」と問いかけると珠理奈は頷いた。
その手紙を受け取った瞬間に強烈な負のエネルギーが玲奈の体を貫き思わずうめき声を上げそうになった。
そんな事も知れずに珠理奈は嬉しそうに玲奈を見ている。
しかし暫らくすると玲奈は涙を流し始めたのでその異変に珠理奈はようやく気付いた。
「・・・玲奈、どうしたの?」
「珠理奈、落ち着いて聞いてね。彼女…嘘をついてる」
驚いた表情で停まった珠理奈に玲奈は話を続ける。
「彼女のいじめは無くなっていない。むしろ前よりひどくなっている」
珠理奈の表情が次第に崩れだし大粒の涙が溢れてきた。
「うそだ!何で玲奈はそんな事を言うの」
珠理奈の叫び声が皆のいる楽屋に響き渡る。
その声でメンバーも集まりだしSKE48劇場支配人の湯浅洋も何事だとやって来る。
湯浅が来た時には、玲奈は困った顔をして珠理奈は床にへたり込んで顔を手で覆い泣いていた。
「玲奈、何があった」
湯浅の問い掛けに玲奈は答えず
「珠理奈よく聞いて、彼女はこの時凄く思い詰めている。最悪な事が起こるかも…」
「最悪な事って何よ」
その言葉には怒りが込められていた。
「それはつまり…」
玲奈はその言葉を避けるために代わりを探したが思い浮かばず黙ってしまった。
「じゃ何で優希は私に嘘をつく必要があったの」
涙声で珠理奈が問いかける。
「理由までは分らないけど、珠理奈に対してごめんなさいって言う想いが込められてるのが分る」
「玲奈、だから何があった。説明しろ」
湯浅はしびれを切らせたかのように問い掛ける。
「湯浅さんちょっと待って!」
中西が割って入った。
「さぁ、珠理奈、落ち着こう」
と中西は珠理奈の背中と手を取って椅子に座らせると目を閉じた。

17: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:38:15.21 ID:TO5vVB8s0
見る見るうちに珠理奈の嗚咽が納まり落ち着いた様子になった。
その次に玲奈の手を握り同じようにすると「玲奈、詳しく話して」と促した。
玲奈は最初どう説明するか迷ったが、信じてくれないのは十分承知しながも自分の能力の事を含め全てを話した。
珠理奈はその話を口を挟む事無く聞いていた。
「ねぇ玲奈、私は結局優希を救えなかった事?」
「それはどうかは私には分らない。でも早く彼女を何とかしなくちゃいけない事は確かだと思う」
そこに湯浅が珠理奈に向けて話をする。
「珠理奈、歌で環境を変えるって事は出来ないんだ。歌で変える事が出来るのは人の心なんだと思うよ
そして人が変われば環境も変わって行く、もしくはその環境に対抗する力が生まれるんだ」
「でも私は彼女を救えなかったじゃん」
珠理奈は新たな涙を流した。
暫らく沈黙の中、珠理奈のすすり泣く音だけが響いた。
「…でも何で彼女は嘘を書いたんだろう」
出口陽が疑問をつぶやく。
「この手紙からは分らない。もしかするとそこに答えがあるのかも知れない」
と玲奈が答える。
「とにかくそれなら本人に聞くしかない」
今度は珠理奈がそれに答えた。
「優希の携帯番号は知らないけど手紙でのやり取りはしてるから住所は分る。今から行って来る」
「おいおい、ちょっと待て。今日はもう遅いしそれは無理だ」
湯浅が制止すると
「それじゃ明日行く」
「明日は珠理奈と玲奈は東京だろ」
「そんなのどうでもいい。私は優希の所に行く」
珠理奈が再び叫ぶ。
「私達が行く」出口が珠理奈に向かって宣言した「だからあなた達は予定通り東京に向かって」
その言葉にみな出口に注目した。
「私達“TEAM ESP”が彼女を救うべく活動を開始します」
「何、その“TEAM ESP”って」
愛李が出口に聞く
「さっき言いそびれたんだけど私出口Pが特殊能力を持っているメンバーをプロデュースします。その仕事初めとして優希さん救出作戦を
実行します。だから玲奈・珠理奈を初めとしたESPのメンバーがその任に着きます。
取り合えず明日彼女の家に残った私達が行くから住所を教えて」
「ふざけてないよね?」愛李が問い掛ける。
「当たり前でしょ!人の命が掛かっているのよ。それに彼女はSKE48の、私達の歌を聞いて勇気を貰ったって言ってるんでしょ
そのままほって置けると思うの?私達は全力で救うのよ」
「珠理奈、陽ちゃんもそう言ってるんだし後は私達に任せて仕事に行ってきな」
中西が珠理奈を促した。
「それじゃ、彼女が大切にしているような物を借りてきて。珠理奈は今まで来た彼女の手紙を全て見せて、そこから読み取るから」
と玲奈が言うと珠理奈は嗚咽から声を出す事が出来ず大きく頷いた。
「何か分ったら連絡するから。珠理奈元気を出すんだよ」
と中西が珠理奈の肩に手を置いて慰めた。
その場にいたほとんどのメンバーは“TEAM ESP”がどう言うものなのか理解が出来なかったが
大変な事が起こっている事だけは分かった。

19: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:45:14.06 ID:TO5vVB8s0
『嘘つきなダチョウ』


翌朝、出口・中西・愛李・松村の4人が珠理奈から教えてもらった
住所から優希の家を目指していた。
松村がスマートフォンの地図を頼りに先頭を切ってメンバーを先導した。
やがて、白河の表札がある家を見つけた。
「ここだわ」
「どう説明する?いきなり“私達特殊能力でお嬢さんの危機を知りました”って言っても怪しまれるだけだし」
と愛李が不安がるとすかさず出口はチャイムを押した。
「はい」と母親らしい声ですぐにドアホン越しに返事があった。
「おはようございます。あのう私SKE48の出口陽って言います。
実はお嬢さんからちょっと気になるお手紙を頂きまして
それで今日伺わせてもらいました。お嬢さん、優希さんにお変わりございませんか?」
「・・・・・・」
少しの沈黙が続き「…少しお待ち下さい」と切れてしまった。
すると今度は玄関ドアが開き女性が出てきた。
「どうぞお入り下さい」と中に招き入れてくれた。
ソファーに腰を下ろした4人はどう切り出そうか悩んでいたがそこはPである出口に任せた。
「あのう、どう言う事なんでしょうか?娘の気になる事って」
と先ずは母親から聞いてきた。
「はい。実はSKEの松井珠理奈に届いた手紙なんですが大変言いにくいですけど優希さんがいじめにあっていて
とても傷付いているとあったんです。本当なら珠理奈自身が来れば良かったんですが忙しくて代わり私達がお伺いしたと言う訳です」
その言葉で母親は驚いた様子で口を手で覆ったまま出口を見詰めた。
「いやこちらの思い過ごしならいいんですけど…」
「まさか、あの子がいじめだなんて…」
その後は涙声になり続かなかった。
「どうしました?お母さん」
出口は崩れ落ちる母親の背中を擦りながら問い掛ける。
「あの子、昨日学校から帰ってあと外出して帰ってないんです」
嗚咽交じりにそう答える。
「お母さんすいません。お嬢さんの部屋を見せてもらえませんか、そこから何か分るかも知れません」
母親と共に彼女の部屋に入ると4人は手分けをして手がかりを探した。
「あの、かばんの中を見てもいいですか?」
と愛李が母親に確認を取る。
「ええ、どうぞ」
ボロボロになっているかばんの中からふやけてた状態から乾いて変色した何冊もの教科書やノートが出てきた。
母親はそれを確認すると再び泣き崩れた。
「中西、ここはいいからお母さんに付いていてあげて」
出口が言う。
「分った、じゃ後お願いね」

18: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:41:40.92 ID:l0LE15hV0
イスパニア?スペイン?

21: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:50:36.54 ID:TO5vVB8s0
>>18
理解しました。ここでは「extrasensory perception」の意です。


残った3人は手掛かりが無いかと探した。特に彼女が大切そうにしていそうな物を念入りにして。
松村が机の抽斗(ひきだし)を開けた。
「かおたん、そこは…」
と愛李が注意をしようとした瞬間そこにあったものを見て絶句した。
「こ、これは」
そこには、破られてテープで補修された珠理奈の写真があった。
それが彼女にとってどれだけ大切な物か想像するのは容易な事だった。
「ひどい」
「これを借りて行きましょう」
その後はこれと言った手がかりは掴めなかった。
リビングへ行くとソファーで横になっていた母親の傍らに中西がいた。
「お母さん大丈夫ですか?」
「えぇ、お見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません」
「昨日から帰って来ていないって事ですが、警察には?」
「はい昨日の夜に届けました。父親は仕事に出かけましたがさっき連絡したらすぐに帰って来るとの事です」
「残念ながら手掛かりになるような物は見付かりませんでした。しかし私達も彼女を探したいと思います、心配でしょうが
お気をしっかりとお持ちになって下さい。それとこの写真をお借りしたいんですけどよろしいですか?」
出口が落ち着かせるように優しく母親にそう声を掛けた。
母親は差し出された珠理奈の写真に息を呑んだが「娘を探す手掛かりになるのなら何でも持っていって下さって結構です」
「いえ、これだけでいいです。何か分りましたらすぐに連絡を差し上げますので携帯番号を教えて下さいませんか?」
出口は母親から携帯番号を書いたメモを受け取ると家を後にした。


玲奈は東京に向かう新幹線の中で珠理奈から手紙を受け取った。
珠理奈は届いた順に玲奈に渡し、玲奈はそこから何かを読み取ろうとしていた。
玲奈は内容を読む事無く両手で手紙を挟むと目を閉じた。
「あっ、この手紙、珠理奈に申し訳ないと思ってる」
珠理奈はすぐに手紙を返してもらうと中身を出して読んだ。
「これは、ようやく友達が出来たって頃の手紙だ」
「理由が分らない。ただ珠理奈に対する自責の念が強すぎてそれ以上の話が聞けないよ」
「後は陽ちゃん達が彼女から話を聞いてくれれば何とか助ける事が出来るんだけどね」
珠理奈がそう言いながらため息をつく
「とにかく東京に着いたら電話して見ようよ」
珠理奈は昨晩心配でほとんど寝てなかったが不思議と今でも眠たくは無かった。

東京についてすぐに珠理奈は出口に電話をした。しかしそれは珠理奈を泣かせるのに十分な報告だった。
すぐに珠理奈から携帯を奪い報告を改めて聞いた後、玲奈は珠理奈を叱咤した。
「珠理奈、しっかりしなさい!こんな所で泣いててもどうする事も出来ないでしょう。ファンはあなたを待っているのよ
そのファンの中には優希ちゃんのような子もいるかもしれない、あなたはそんな人達に元気を与えなくちゃいけない
後の事は明日帰ってから皆で考えましょう」
「…わかった」
そこには年相応な子供っぽい珠理奈がいた。

23: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 13:57:35.91 ID:TO5vVB8s0
『遠くにいても』


バスの車窓から見える景色は、少女の心とは裏腹に清々しく晴れ渡り風は心地好かった
ヘッドホンから流れている曲はもう既に何十回とリピートされている
たぶんこれが自分が聞く最後の曲だと分かっていた

今の現状を打破する方法はいくらかあるだろう
そうこれも、その選択肢ひとつなんだと言い聞かせながら
少女はその場所を目指した


翌日昼過ぎになって玲奈と珠理奈はSKE48劇場の楽屋にやって来た。
「どうだった何か手紙から読み取れた?」
といきなり玲奈に対して出口から聞いてきた。
「ダメだった。ごめんなさいの念がほとんどだった。ただ・・・」
「ただ、何?」
「よく分らないんだけどね、その嘘をついている手紙の中に安らぎって言う感じが漂っているの」
「益々分らないって事だけは分った」
珠理奈はさっきから黙り込んで彼女から貰ったマスコット人形を握り締めていた。
「珠理奈それが優希さんに貰ったマスコット?」
中西が慰めるように背中を擦り話し掛ける。
「うんそう、ほらこれが送られた時に一緒に入ってた写真。これでしょう」
とその写真を見せた。
「本当だ、このマスコットを持ってる」
写真と現物を見比べる。
「…うん?ちょっと待って。これ写真に写ってる物と違う。ほらこの写真のマスコットの口、ここには半円形の形だけど珠理奈のは猫口のように波打ってる」
言われた珠理奈は改めて見比べる。
「確かに言われればそうだ」
「あいり、出番よ」
急に出口から名前を呼ばれた愛李は戸惑う。
「何をしているの!あなたはペアの片一方の行方が分るんでしょう。もしかしたら彼女はこれを持っているかも知れない、探して見て」
「持っていればいいけど。じゃあ珠理奈さんそれ貸して」
珠理奈は愛李にマスコットを渡す。
愛李はそれを握ると目を閉じた。
「うわっ、本当に持ってる。ここは…見た事がある、えーとどこだったっけな」
愛李は口で説明するのを諦め近くにあったノートとペンを取ると得意な絵でそこを表現した。
「どこか高台から海が見える」
愛李が説明しながら絵の説明する。
「羽豆岬じゃないかな」
中西が答えた。
「そうだ羽豆岬だ、私PV撮影で行ったから見覚えあったんだ。間違いない今彼女は羽豆岬の展望台にいる」
と愛李が叫ぶと皆に生気が戻った。
「すぐに行かなくっちゃ」と珠理奈が席を立つ。
そこまでを傍らで静観していた湯浅は
「おい、今日はレッスンだろ。そんなのは警察に任せておけばいい、それはお前達の仕事じゃない」
その言葉に珠理奈が怒りを込めた目で湯浅を睨み付けた。その珠理奈を制する様に玲奈が湯浅に問い掛ける。
「警察にどう説明するんですか?超能力で彼女の居場所を突き止めました早く保護して下さいって言うんですか?」
「そ、それはだな…」
「それに、もし手遅れになったら珠理奈さんのショックは今までの比じゃない程になってSKEを辞めるって事を言い出すかもしれませんよ
それでもいいんですか?」
と松村が畳み掛けるように援護射撃をする。
「…分ったよ。レッスンの先生には俺から連絡するから、お前達は車で待ってろ」
湯浅は出口に車のキーを渡した。

24: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:03:36.89 ID:TO5vVB8s0
ワゴン車に湯浅が乗り込みエンジンを掛ける、ナビには予め助手席に座った出口が羽豆岬をインプットしていた。
メンバーは出口が招集した“ESP”の面々だった。
「まったくお前達ときたら…」
とハンドルを握りながら湯浅はぼやいた。
「今は混んでるから1時間半から2時間位掛かるぞ」
「と言うと4時ぐらいだね」
出口が振り返って皆に言う。
「あいり、今彼女がどこにいるか見えない?」
出口に聞かれた愛李はこめかみを押さえながら
「今はダメ。車に酔うしこれ結構疲れるの。距離が離れているからかな」
「分った。珠理奈はググタスの更新を頻繁にして」
「こんな時にそれどころじゃないよ」
「彼女が見ているかも知れないから」
「そうか、早まるなって書き込めばいいのね」
「だめ!そんなこと絶対に書かないで。いつもの通りでいい、そう“メンバーでドライブを楽しんでます”って
写真を撮ってアップするの。ただしその写真の片隅にそのマスコットを写るようにして
それが彼女だけにしか分らない珠理奈からのメッセージになる」
出口は的確な指示を珠理奈に与える。
「なるほど、大切なのは彼女しか分らないサインを送ることなのね、あきさんすごい」
須田亜香里は感心する。

珠理奈達を乗せた車は名古屋高速都心環状線を経由して知多半島道路・南知多半島道路を目指した。
途中事故渋滞に巻き込まれ羽豆岬に着いたのは予定の時刻を大幅に過ぎて5時を大きく過ぎていた。
駐車場に車を止めると湯浅を残して皆車を飛び降りると、中西と愛李を先頭にして走り出した。
「お、おい待ってくれ!」と車の戸締りをすると湯浅もその後を追う。

空は最早夕暮れが近付いているのが分る。
「あと53分で街灯が点灯するから!」
走りながら松村が叫ぶ。周りが暗くなれば益々見つけられなくなるのは誰もが承知していた。
それ故にどうか展望台にいてくれと珠理奈は強く思った。

25: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:08:22.49 ID:TO5vVB8s0
『羽豆岬』


少女は、コンクリートの淵に腰掛けながら、夕陽に焼かれていた
ブラブラさせている足元には、黒い海が蠢(うごめ)いている
時折通り過ぎる船からのソニックブームの様な波が
コンクリートに跳ね上がり少女の靴を濡らした

i Podの電池はすでになくなり、今まで見ていた携帯も同じように黒い画面に変わっていた
(どうやら、私の分身は珠理奈とドライブを楽しんでいるのね。よかった)
沈みゆく夕陽を見ながら、少女は周りの全てが後片づけをしている様な気がしていた


鳥居横にある石の階段を何段も駆け上がり羽豆神社を横目にひたすら展望台を目指す。
やがて見えてきた展望台の階段を上がる頃にはさすがの彼女達も息を切らせていた。
「優希!」
珠理奈が叫びながら展望台に立った。
しかし、そう広くないそこには誰もいなかった。
走ってきた疲れと、優希がいないことへの精神的な疲労が彼女達に圧し掛かり皆その場にへたり込んでしまった。
「どこにいるの…」
珠理奈は地面に手を突いてつぶやく。
「あいり、もう一度お願い。もう時間がない」
出口が愛李に声を掛け珠理奈からマスコットを受け取り渡した。
愛李はなるべく息を整え意識を集中する。
「ここからそう遠くない。海面が足元に見える…。分った防波堤だ」
玲奈は展望台から見える防波堤を見たが西陽が強くてここからは確認できなかった。
「みんな行くよ!」
おそらくこれがラストチャンスだ。そこにいなければ周りは真っ暗になり見つけるのは容易な事じゃなくなる。
(大丈夫、絶対に見つけてみせる)
珠理奈は心に強く願った。
展望台の階段を駆け下りるとやっと追いついてきた湯浅とすれ違った。
「はぁ、はぁ。いたのか?」
と問い掛けるのがやっとだった。
「防波堤に行くから」
それをドップラー効果のように聞きながら湯浅はその場でひざに手を突きどうにか立っていた。
それは強がりではなく、一度しゃがみ込むと立てないと思ったからだ。

26: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:13:13.79 ID:TO5vVB8s0
夕陽は赤く防波堤を駆ける8人を染めていた。先頭を切る珠理奈は祈るよな気持ちで走った。
最初は小さく黒いシルエットにだった師崎港南防波堤灯台がはっきり見える距離なってきた。
いた!灯台の右側の堤防に誰かが座っているのが見えた。
珠理奈は走るのを辞めると静かに息を整えるように歩いて近付いて行った。
細い堤防は先頭が停まると必然的に後続は足止めを余儀なくされる。

優希はマスコットを片手に沈みゆく夕陽を見ていた。
「知ってる?ここから見える水平線はどんな今日もリセットするんだよ」
不意に声を掛けられた優希は思わずその声がした方を見た。
「…珠理奈、どうしてここに・・・」
「私は優希が寂しいときは傍にいるよ。隣に行ってもいい?」
優希は立ち上がりそれを静止した。
「だめ!こないで。私は自分自身をリセットする為にここに来たの」
防波堤の先端と灯台の立っている場所には隔たりがある。
そこに建っている師崎港南防波堤灯台は高さ12メートルで堤防とは基礎の部分で繋がっているのでそこに行くのには
一旦そこで終わっている堤防から基礎の部分に下りてから近付かなければならなかった。
「ごめんね。私、優希の嘘に気付けなかった」
「そんな事ない、謝らないで。珠理奈は何も悪くない私が全部悪いの」
「お願い教えて。どうしてあんな嘘を書いてきたの?」
時間稼ぎをするかのように珠理奈が話し掛ける。
優希はあの頃を思い出しながら珠理奈の問い掛けに答えた。
「珠理奈から初めて手紙を貰った喜びは今でも忘れていないよ。
いじめにあっている私に対して『がんばれ』とか『負けるな』とか一言も書いてなかった。
それよりも『私にはあなたの置かれている状況が想像は出来るけど実際には分りません。
もしかすると、想像以上にひどいかも知れない、だから安易に気休めも言葉なんて言えません。
その代わりにこう言います、本当につらいのならそこから逃げてください。そのままの自分を受け入れてください。
もしあなたが私のパフォーマンスで元気が出るのなら私はこの手足が千切れるまでダンスをします。
喉が潰れるまで歌を唄い続けます』って書いてあった。私はそれを何十回も何百回も読み返して涙した。
そして『ああ、私は珠理奈に支えてもらっている』って思ってた」
そうする間にも夕陽は沈み行き空の茜色が海面にも滲み始めた。
「でもそんな時に珠理奈は倒れてしまった。そこで私は気付いたの、珠理奈はただでさへ大変なのに
私が心配を掛ける事で尚更負担を負わせているんだって、だから少しでも安心してもらおうとしてあんな嘘を書いたの」
「違う、倒れたのはそんな事じゃない。あれは私が悪いの優希は全然関係ないの」
「それにね、嘘を書いているうちにもう一人の自分を見つけたの、手紙の中の自分が楽しそうにすればそれだけで幸せを感じた。
せめてもう一人の私はとことん幸せになって貰おうとしたの。でも空想の自分と実際の自分の差が広がれば広がるほど
絶えられなくなってきてもうダメだと思った」
珠理奈は言葉を失い暫らくの間波の音だけが周りを包み込んだ。
「あのね」と松村が話しに割り込んだ「私達何か不思議な力が備わっているみたいなんだ」
出口が「かおたんこんな時に何言ってるの」とたしなめようとした時、中西がそれを無言で止めた。
「玲奈さんは誰かの愛用品と話が出来るし、あいりさんはペアの無くした片方のある場所が分るし、中西さんは人を癒せる事が出来る
そして、私は街灯が点くタイミングが分るんだけど全然自慢もならない。
でも今はっきり分ったの何で私達がこんな力を授かったのか、それは全てあなたを助ける為だったって」
「私の為?」
「そう、あなたの為。それはあなたが正直に珠理奈さんにSOSを発信したから。だから、珠理奈さんに嘘つく事無く助けを求めればいいじゃない
もしそれで、珠理奈さんが倒れそうになったら私達が全力で珠理奈さんを支えるから」
松村は最後は涙声になっていた。
「珠理奈、本当?」
珠理奈は泣き笑いの顔で頷いた。
「…珠理奈」
優希は両手を珠理奈に差し出しながら寄って来た。

27: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:22:49.61 ID:TO5vVB8s0
須田亜香里もやはり涙混じりにその光景を見ていた。
その時に違和感を感じた(来る!)
「珠理奈さん、突風が吹く!皆も体勢を低くして!」
珠理奈はその言葉を聞いて瞬時に走り出した。堤防の端からジャンプすると優希に抱き付き安全な所まで引っ張ると身を屈めた。
それを見ていた皆は一瞬珠理奈が消えたかと思った。何故なら人間離れしたスピードだったからだ、例えるのなら
フイルムの早送りの様な動きだった。
「何、一体何が起こったの?まるで“まじすか学園”のブラックみたい」
出口はしゃがみながらその光景を見ていてそう思った。玲奈から話は聞いてはいたがそれは想像を遥かに超えていた。
珠理奈が優希を庇(かば)いしゃがんだ瞬間に髪を激しく泳がせる様な風が吹いた。
風が収まると珠理奈は「玲奈、後はお願い」とその場で倒れこんでしまった。
「珠理奈!どうしたの珠理奈」
優希は急に倒れ込んだ珠理奈を見て取り乱した。
「大丈夫よ、珠理奈は時間のズレを修正してるだけだから」
「そう言えば珠理奈の能力聞いてなかった」
と中西がつぶやく。その疑問に答えるように玲奈が答える。
「珠理奈は自分の周りの時間の流れを遅くする事が出来るの」
「えええええっ!!!!」
玲奈と出口以外の者が驚く。
「でもねその副作用って言うか、ずれた時間を調整するかのようにこうして強制的に眠りに落ちるの」
「そう、それがあの時強制入院した原因なの」
珠理奈が寝転んだまま話を始めた。
「玲奈、どれくらい寝てた?」
「10秒位かな」
「じゃ3倍くらい時間を遅らせたのかな。実は私は時間を遅くする事が出来るの、つまり自分から見たら皆遅く見えるのよ
その中で私は普通に動ける。逆に皆から見れば私は早く動いているように見える。要はハイスピードカメラみたいなものかな
つまり動きが遅くなればなるほどフイルムは早く動くって事」
余り理解できないのか出口が「珠理奈、その例えがあまり分らない」と首を傾げた。
「陽ちゃん、後で説明してあげるから」と中西が慰める。
「意識すればするほど時間を遅らせることが出来る事が分かってから、初めの頃は面白くって何回も使った、誰も気付かないしね。
便利なのは振り付けの危うい所は後出しじゃんけんのように真似ることもできる。皆がゆっくりだから合わせる事なんて簡単だし、
駄洒落も時間を掛けて考えられるし良いこと尽くめだった。しかし気を抜いた瞬間に時間のズレた分だけ今度は
自分の動きが停まるの。で、ある時スタッフさんが反応がなくなった私に気付いて心配された。
当時は乱発してたからちょくちょく見られたのかもね、それで心配して強制入院になったって訳」
「もしかして、その能力の所為で人より時間が早く流れて老け顔・・・」
出口がそこまで言いかけた時、珠理奈に睨みつけられた。
珠理奈は立ち上がりお尻の汚れをパンパンとはじいたてから優希に抱きついた。
「本当はあの歌のように友達同士でここに来たかったんでしょう」
「うん・・・、心配掛けてごめんね」
「心配を掛けるのも、心配するのも親友だからだよ」
「ありがとう、珠理奈」
ふと珠理奈は夕陽を見てから
「かおたん、街灯が点くまで後どれ位ある?」
「後17分かな」
「わー急がなくっちゃ」
「どうしたの?」
「あの歌の通り皆で展望台で写真を撮るの。ほら急いで」
玲奈と珠理奈それと優希は防波堤に引き上げてもらうと急いで踵を返した。
当然そうなるとつい今しがた走ってきた湯浅が先頭に立つ事になった。
「ほら、湯浅さん急いで夕陽が沈んでしまうまでに展望台まで急がなくちゃいけないんだから」
「こらっ押すな、落ちるだろうが!俺は体力がないんだから」
その時の皆はまるであのPVのようにはしゃいで映っていた。

28: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:27:47.09 ID:TO5vVB8s0
『思い出以上』


展望台に全員が上がってきた時には夕陽はその姿をほとんどを水平線へと沈めていた。
「よし撮るぞ。ハイピース」
湯浅がシャッターを切る。映った画像は真っ赤に燃える空と完全にシルエットになった彼女達があった。
「だめだ、フラッシュを焚かなきゃ」
それを見ていた優希は
「それでいい、いえそれがいい。どうせ涙に濡れた顔なんだしシルエットならそれを笑顔に変換できるし
それに夕陽がとても綺麗」
「うんそれでいいよ」
と皆が同意した。
「じゃ写真を送るからお互いにメール交換しよ」
珠理奈と優希は互いにメールを交換しようといたが、あいにく優希の携帯の電池は尽きていた。
珠理奈は湯浅からメモ帳の1ページを切って貰うとそこに互いの携帯アドレスを書いて交換した。
その時、優希は珠理奈の腕を突然引っ張って場所を少し移動する。
それは、余りにも自然だったので誰も気に留めない。
傍で見ていた湯浅自身もそうだったがすぐに空から何かが落ちてきたのが見て取れた
それは小さなもので今まで二人のいた場所に落ちた。
「何だ」と確認すると鳥の糞だった。空を見上げると山へ帰っていくカラスが数羽いた
(まさか、この子も目覚めたのか)
そう思いながらも偶然だと自分に言い聞かせた。

「さぁ、帰るぞ。優希ちゃんのお母さんには連絡しておいたから、劇場まで送るからね
皆はレッスンだから」
「え~っ!今日は休みじゃないの」
皆からブーイングが上がる。
「誰がそんなこと言った。先生には遅れると連絡したんだ」
「それじゃ、皆で食事は?」
「途中でコンビニに寄るからそこで弁当を買って帰る車中で皆で食べるといいさ」
「信じられない」
出口が拗ねる。
「さぁ、帰るぞ」

もう暗くなった長いウバメガシのトンネルを抜けると松村がカウントダウンをした
「3・2・1」
そして指をパチンと鳴らすと、街灯が一斉に灯った。

それは優希の行き先を明るく導いていた。

29: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:33:50.52 ID:TO5vVB8s0
「ねぇ」と助手席にすわった出口が湯浅に聞いた「どうして、湯浅さんは私達の言う事を信じたの?普通は戯言(ざれごと)として
笑い飛ばすのに」
すると湯浅は「何となくお前達の力が分っていたんだ」と話し始めた。
「最初は僕はそんな事は信じちゃいなかった。しかし秋元先生が教えてくれた」
すると後部座席から亜香里が身を乗り出し
「そうだ、あの時も『秋元先生が』って言ってた。どう言う事か教えて下さい」
「分った話すよ。実は秋元先生は見える人なんだ」
「そっちの話ならしないで」
珠理奈が耳を押さえながら訴える。
「そっちの話?あぁ霊的な話ね、違うよ。先生が見えるのはオーラーなんだ、人間から発しているエネルギーが色になって見えるんだって
先生が言うのには額の辺りに出てるのがその人が持っている特技のオーラーらしい。綺麗な色が出てる人はほぼ完成されていて
先生はあえて完成されてなくて、くすんでるオーラーの人を伸び代があるからって採用したんだって」
湯浅は今改めて秋元の凄さを感じていた。
「秋元先生のSKE結成当時のインタビューで『エネルギーに満ちている』って答えたのは恐らくその事だと思うよ」
「それで歌えなかった踊れなかったって人も合格してたのね」
出口はじゃあ私もそうなのかなって考えていた。
「そう言う事だな。それとSKEの審査のとき驚いたって今まで見てきた中で特殊な色のオーラーを持っている人が多くて
これは何かあるぞって直感したらしい、多分それがお前達の特殊能力の事だって今まで見てて分った。
その中でも玲奈と珠理奈は郡を抜いてたって、それは色だけじゃなくて大きさだったんだって。他の人の3倍はあるようだよ
それも同じ苗字で松井だろ先生も不思議がってた。特に珠理奈は他の人のオーラーに影響をされてどんどん大きくなるって気付いて
早々にAKBに混ぜたって。案の定、選抜組の持っているオーラーに影響されて一回りも二回りも大きくなったって喜んでた。
玲奈は人に影響を与えるオーラーらしい、先生の例えによるとダイヤを研磨するのにはダイヤを用いるって言うだろ
玲奈はそれなんだって元々玲奈は凄い力を持っているらしく他の人が玲奈に触れると力を磨き磨かれるようだ。だから珠理奈玲奈は
一緒にいるだけで互いに成長するって。同じようにAKBでは前田敦子と高橋みなみ、秋元才加と大島優子、柏木由紀と渡辺麻友。
NMBなら山本彩と渡辺美優紀なんかがそうらしい」
「HKTは?」
「それは聞いてない、これからじゃないかな?」
「他はともかく、珠理奈さんと玲奈さんは分るわ。特殊能力にしても私達と比べ物にならないもんね」
松村が思わず感想を漏らした。


サンシャイン栄の建物前には優希の両親が待っていた。
やがて優希の姿を見つけると何人もの人が往来する中、3人は抱き合って泣いた。
「間にあって本当に良かった」
その風景を見て珠理奈がつぶやくと、そこにいたメンバーが無言でうなずいた。
「さぁ、行くぞ」と湯浅が促す。
「珠理奈!」
優希が珠理奈を呼びとめる。
「ありがとう。私、もう絶対に負けないから。そしてこれからは本当の事を書くね」
「うん、待ってる」
ニッコリと笑う珠理奈に優希は手を振り、
それから彼女の両親ともども深く頭を下げた。

30: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:39:03.62 ID:TO5vVB8s0
『1!2!3!4! ヨロシク!』 


学校での優希の環境は変わってはなかった。
しかしあの日を境に彼女自身が変わった。
嫌な事をはっきりと口にしていじめに対して拒否反応を示すようになった。
初めのうちは生意気だと暴力的行為もあったが、今では無視と言う孤立状態になっていた。

放課後、掃除当番だった優希はゴミを焼却炉に持っていくのを半ば強引にさせられている。
やけに賑やかしい校庭を尻目に焼却炉にゴミを入れると、もう誰も残っていない教室に戻って来た。
ひとり帰り支度をしていると、携帯のメール着信音がした。
確認すると珠理奈からのメールだった。
“一緒に帰ろ!”の短い文章にカラフルな絵文字が飾られている
(一緒に帰ろ…?)
暫くどう言う意味か分からなかったが、やがてまさかと思い3階の窓から校門を見るとたくさんの人だかりが出来ていた。
急いで教室の戸締りをし、鍵を職員室に返してから走って行くとそこに珠理奈がいた。
「珠理奈、どうしてここに」
息切れ切れに声を掛けると、珠理奈は満面の笑みで両手を広げ優希に駆け寄りその腕に絡みついた。
「優希!元気だった?今日は朝からのお仕事も終わって学校もお休みしたから、会いに来ちゃった」
と大袈裟に喜ぶ、優希自身もそうだが周りの生徒達も唖然としてその光景を見ていた。
「よく私の学校が分かったのね」
「うん、優希ママに訊いたら教えてくれた」
二人はまるで恋人同士の様に腕を組んで歩き出す。
「あっ、そうだ」
珠理奈は立ち止ると振り返りそこにいるたくさんの生徒達を見た。
「これからも私の大親友の白河優希をよろしくお願いします」
と深く頭を下げた。
「ちょ、ちょっと珠理奈何やってんの」
戸惑う優希に珠理奈は再び腕をからめると
「どこかで、美味しいスイーツでも食べながらお茶でもしよう」
「えっ、う、うん、いいけど」
「そう、じゃ早く行こう。いっぱいお話したい気分なんだ」
「じゃ駅前に美味しいパン屋さんがあってそこは喫茶コーナーがあるんだ」
「いいじゃん、そこにしよ」
珠理奈はまるで遊園地のアトラクションに向かう時の様にはしゃいでいた。
「珠理奈、こんなことして怒られない?」
「こんな事って、優希の学校へ来た事?」
「だってたくさんの生徒達が写メ撮ってたしツイッターとかに呟かれちゃうよ」
「さぁそれはどうだろう、怒られちゃうかも知れないけど別にいいや。悪いことしてないし気にしないよ」
「…珠理奈」
「うん?」
「ありがとう」
「どういたしまして」
それから、二人は顔を見合わせて笑った。

31: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:44:57.19 ID:TO5vVB8s0
二人で街中を歩いていると、道行く人が珠理奈を見て驚いた表情になったり手を振ったりする。
その度に彼女は笑顔で挨拶をしたり、手を振り返したりして愛想を振りまく。
今では名古屋だけでなく全国でスーパーアイドルグループであるSKE48のセンターを務める松井珠理奈の凄さを
優希は改めて思った。と同時にその珠理奈がこうして自分と腕を組み歩き、親友と言ってくれるのが信じられなかった。
「ほらあそこのベーカリーショップがそうだよ」
優希が『Re:Natamu』と書かれた赤い看板で指差す。
「リ:ナターム?」
珠理奈はそこに書かれていた文字を読んだ。
「そう、あそこはメロンパンが最高なんだけど、フルーツパンケーキも美味しいの」
「そうなんだ、じゃ玲奈にお土産として買って帰ろうかな」
やがて二人は喫茶コーナーの隅っこのテーブルに着き『フルーツパンケーキセット』を注文した。
待っている間にそこの店長が色紙を持って来たが、珠理奈はそれに対しても快くサインをする。
やがて、持って来られたパンケーキはいつもの倍近くフルーツがトッピングされていた。
二人でそれを頬張りながら、取り留めのない話に花を咲かせていた。
「ねぇ、優希今度SKEのオーディション受けて見ない?」
突然の珠理奈の提案に優希は
「えっ。私には無理だよ」と驚いた様に即答する。
でも、珠理奈はあきらめない。
「そうかな、私は優希なら大丈夫だと思うよ。ねぇ真剣に考えてみてよ」
言われた優希はにこりと微笑みながら自分の夢を語った。
「私ね羽豆岬でかおたんに言われた言葉をずっと思ってたの」
「かおたんの言葉?」
「そう、何故自分達がこんな能力を持っているかって話」
珠理奈はあの時の情景を思い出していた。
「あぁ、あれはかおたんが沈黙させちゃいけないって咄嗟に思いついたんだって。
確か基は映画から来てるって、何でも主人公の息子が喘息なのも娘の変な癖も
全て無意味に思われてた事が最後にこの為だったのかってストーリー」
「そうだったんだ。でもそれより私はずっとその意味を考えてた。
何で私はいじめを受けてきたんだろうって、それは原因じゃなくて意味って事で。
そして分かったの、私は学校の先生になっていじめで苦しんでいる子供達を救おうって
いじめられてきたからこそ分かる事がある筈。もしそれで一人でも救えたら私の経験は
その子の為に必要だったんだって思えるでしょ?でもこのままじゃ私の今は
忘れたい記憶でしかない。珠理奈が私を助けてくれたように私も未来の誰かを助けてあげたいの。
そして、今の私も救ってあげたい」
優華は照れ臭いのか珠理奈の顔を見る事が出来ず、外を見ていた。
「凄いよ。優華の夢を私は応援する」
珠理奈は薄っすら涙を浮かべ嬉しそうに微笑んだ。

それから二人は普通のガールズトークを弾ませ、お土産にその店自慢のメロンパンを2つ買った。
店側のお金はいいですの申し出を丁寧に断り料金を払うと店を出た。
駅に向かう道すがら、今買ったばかりのメロンパンが入った紙袋を指差し
「これで玲奈を“メロン、メロン”にしてやるんだ」
といつものダジャレを言うと優希も負けずに
「2つも食べるとお腹“パンパン”になっちゃうよ」
と返す。
「今の勝負は私の勝ちだね」と珠理奈は胸を張った。
二人はアイドルとファンではなくごく普通の女の子の友達として街の雑踏の中に溶け込んでいた。

32: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:49:24.77 ID:TO5vVB8s0
『今 君といられること』


優希の父はあれから帰宅時間が早くなり晩御飯も家族3人で取る事が当たり前になっていた。
優希は今日珠理奈が学校に来てくれた事、二人でお茶をした事を話した。
両親はそれを嬉しそうに聞きながら、娘を救ってくれたSKEのメンバーに感謝をせずにはいられなかった。


優希の机の上の写真立てにはオレンジ色の空の下、
シルエットになってしまい、
もう誰か分からないVサインをする親友達が飾られていた。


END







『女の子の第六感』


「あぁ面白かった」
須田亜香里はteamS公演前の劇場の楽屋にいた。
「何が面白いって?」
出口が後ろから声を掛けて来た。急な声に少し驚いたが亜香里は持っていたスマートフォンを見せながら
「この小説ですよ「SKEはESP?」って言う」
「どれどれ」と出口はそれを受け取ると読み始めた。
そんなに長くないのですぐに読み終わる。
「笑っちゃう、茉夏の能力がトイレが判るだって、
でも何で私には何の能力もないわけ?
その点でこの小説は駄作以外何でもないわね。ふん」
出口はスマートフォンを亜香里に返しながら
「でも、これ続編がもうすぐアップされるわよ」
「えっ、そんな事書いてました?」
「書いてないよ。でも私には判るの」
出口は得意げな顔をした。
「ちょっと前からマンガやテレビドラマとか映画のラストシーンを見た後
続編やSPがあるなって判る様になったの。現に今のところ確率は100%だから」
「ほんとですか!でも作者さん大変そう」
と亜香里は誰か分からない作者に対して同情した。
「そんな何処の誰かも分からない作者の都合なんて知らないわよ。とにかくすぐに挙がるから、これは間違いない」
出口がとんでもない事を言っているのも気付かず亜香里はニコニコしながら
「わーっ楽しみだな」と喜ぶ。
「次回作は、多分サスペンス物ね。メンバーの誰かが事件に巻き込まれ、私率いるTEAM ESPが
活躍するとかしないとかの内容かもね」
出口は素直に喜ぶ亜香里を見ながら
(単純な子はどこか可愛いな)と目を細めた。


To be continued?

33: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:57:44.16 ID:TO5vVB8s0
最後まで読んで下さった皆さん、ありがとうございました。

今回は、人物紹介編として書かせていただきました。
人物像が違うとかあったかもしれませんが、
それは自分の知識の無さです。すいません。

楽しんで頂いたのならうれしいです。

ありがとうございました。

34: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 14:58:59.55 ID:9HIwRWMA0
茉夏が空気過ぎるんだがwww

面白かった


都筑都筑はよwww

35: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 15:01:37.86 ID:TO5vVB8s0
>>34
感想ありがとうございます。

鋭い指摘ですねw
彼女は、次回作で仕事をしてもらいます。

楽しみにしてて下さい。

36: 名無しさん@実況は禁止です 2013/06/16(日) 15:12:07.50 ID:TO5vVB8s0
次回作は、別スレにて挙げさせてもらいます。

連続投稿規制回避の為です。

引用元: 【SKE小説】 SKEはESP? 『強き者よ』