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1 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/15(日) 23:51:08.08 ID:Nwskl9I7O
柏木「ちょいちょーい! おかしいでしょ。何で秋元先生が1位なのよ」

渡辺「? 何言ってるの? ゆきりん。やすすは3回連続1位で、AKBの不動のセンターだよ? 一体、何を?」

柏木(おかしい・・・何かがおかしい・・・昨日は11時に寝た・・・まゆゆからメールが来てて、面倒臭かったから返さなかったけど・・・)
柏木(で、起きていつも通り劇場に来たら・・・いつの間にか世界は秋元先生一色。どうやら聞く話しでは、秋元先生が3回とも選挙で1位を取っているとのこと)
柏木(おかしい・・・まだ夢の中なのかな?)

柏木「そうよ! これは夢の中よ。多分目が覚めたら、あっちゃんが1位の当たり前の世界が広がっているはず・・・」



※メンバーのイメージを著しく壊す可能性があります。恐ろしくキャラ崩壊が激しいと思いますのでご了承ください。
なお、この物語はフィクションです。


5 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/15(日) 23:56:21.00 ID:pVibc1pX0
渡辺「? ・・・ゆきりん、今日可笑しいね? まあいいや、取り敢えず、公演が始まるから早く舞台に行こう!」

柏木(取り敢えず、ここは夢の中! 目が覚めたら、きっとあっちゃんが1位のいつもの世界が広がっているはず! きっとそう!)

柏木「ごめんごめん! よーし、みんなで頑張ろう! 円陣やるよー」


7 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/15(日) 23:57:00.67 ID:pVibc1pX0
~自室にて~午後11時

柏木「今日も良い汗かいた! おやすみ」
柏木「って、ちょいちょーい! やっぱおかしいでしょ! 何でまだ目が覚めないのよ、いつまで秋元先生が1位なのよ!」

仲川「どうしたの? ゆきりん、眠れないよ?」

 柏木は仲川の部屋に泊まりにきていた。
 理由は特にない。何でも「今日、番組の企画でホラー映画見たら怖くて眠れなくなっちゃた! 一緒に寝て!」・・・とのことらしい。

柏木「いやいや、はるごん! 第三回選抜総選挙1位は誰!?」

仲川「? おかしいよ、ゆきりん。そんなのやすすに決まってるじゃない。というか過去3回とも・・・」


9 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/15(日) 23:58:07.05 ID:pVibc1pX0
柏木(ふむふむ、1位が秋元先生で、2位があっちゃん。3位が大島優子ちゃんで、4位が私・・・という風に後は繰り下がっているだけ)
柏木(確か三回目の選挙の40位てれいにゃんだっけ? れいにゃんが選挙圏外になっているってこと・・・? あれ?)

 柏木は一つの違和感に気付く。

柏木「あれ・・・? 40位がれいにゃんのまま?」

仲川「だから何言ってるの! ゆきりん。れいにゃん、40位じゃん! じゃんけん大会でも準優勝だし、波に乗ってるよね!」

柏木「・・・? どういうこと? 1位に秋元先生が入って後は繰り下がるだけだから、れいにゃんは圏外になるはず・・・」
柏木「あれ?」

仲川「どうしたの、ゆきりん」


11 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/15(日) 23:59:22.13 ID:pVibc1pX0
柏木「ねえねえ、はるごん。指原は何処にいるの?」
柏木「指原、10位じゃないの・・・? 何で10位がレナちゃんなの?」

仲川「な、ゆきりん! いくら、指原先生が優しいからって、指原なんて呼んだ駄目だよ! 総合プロデューサーを!」

柏木「そっかー、ごめん・・・指原先生が・・・ってえー!」

 柏木はリンクをクリックして、別のページに見る。すると・・・

柏木「ホントだ・・・総合プロデューサー、指原莉乃・・・」


12 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:01:28.19 ID:pVibc1pX0
仲川「指原先生でしょ、ゆきりん。成人式迎えたっていうのに、これじゃあなかなか大人になれないよ!」

柏木「(お前だけには言われたくない・・・)ごめんごめん、ということは秋元先生の替わりに指原がその役目をってこと・・・」
柏木「じゃあ、組閣祭りを計画したり、じゃんけん大会なんていう訳の分からない企画を考えたのも、全部指原ってこと!?」

仲川「だから何言ってるの、ゆきりん。そんなのAKBのメンバーじゃなくても、知ってるよ」

柏木(世も末だ・・・頭が痛い・・・。この狂った世の中は・・・誰か味方はいないの・・・あっ)
柏木「そういえば・・・」


14 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:02:18.17 ID:pVibc1pX0
仲川「どうしたの、ゆきりん」

柏木「うんうん、何でもない」
柏木(明日は、たかみなさん、あっちゃん、麻里子様、小嶋さん、大島優子ちゃん達と、成人になったし飲み会でもしようって話だったんだ・・・)
柏木(最初は面倒臭かったから断ろうとしたんだけど・・・このAKBの主力と逢えるってことは、私の味方ももしかしたら・・・)

柏木「明日、聞いてみるか・・・」

仲川「ゆきりん、もう寝よう! 遥香眠いよ。蝋燭消すよ」

柏木「うん、分かった。でもはるごん、いくら節電とはいえ、電気くらいは点けようよ・・・しかも寒い・・・」

仲川「じゃあ、おやすみー、ゆきりん。Zzzzz・・・」

柏木「(寝んの早っ)とりあえず寝るか・・・」


15 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:03:04.34 ID:5vnBfCrU0
~飲み会の席~

篠田「じゃあ、私が年長者だし、乾杯の音頭を取らせていただきまーす」

大島「早く飲もうぜー!」

篠田「急かさない急かさない・・・ごほん、・・・あっちゃん、たかみな、ゆきりんも成人になりました。成人祝いということで、今日は飲み会を主催させていただきました。ご出席ありがとうございます」

柏木(珍しく真面目だな、麻里子様)

篠田「というわけで、ここで成人になった、たかみなからすべらない話があるそうで、聞いてみましょう」

高橋「っておーい! やっぱりこういう流れかよー!」


16 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/16(月) 00:04:13.00 ID:5vnBfCrU0
小嶋「たかみな、早く始めよ!」

高橋「仕方ないな・・・これ、メッチャ面白いんですけどね、今日の朝温かい缶コーヒー飲もうとして、ボタン押したんですよwww。そしたらですね、冷た」

篠田「かんぱーい!」

全員(高橋除く)「かんぱーい!」

高橋「・・・かんぱーい」

柏木(たかみなさん、成人迎えてもこんな感じ・・・)

大島「おーい、にゃんにゃん、これ終わったらおじさんとカラオケ行こうぜ」

小嶋「やだー、めんどくさーい。帰って寝るー」

篠田「にゃろの家行っていい? 家どこ?」


17 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:06:19.02 ID:5vnBfCrU0
柏木(相変わらず、カオスだな・・・早く帰りたい・・・けど、我慢して)
柏木「あの・・・たかみなさん」

たかみな「ん、どうした、ゆきりん?」

 柏木は一番、話に乗ってくれそうな高橋に声をかけた。

柏木「秋元先生・・・いえ、秋元康さんのことですけど・・・」

たかみな「何で、そんな改まってるんだよー。やすすならドラマの撮影があるらしくて、今日は来れないってさー」

柏木「いや、そのことなんですけど、秋元・・・やすすさんって・・・」


19 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:07:10.83 ID:5vnBfCrU0
前田「ねえねえ、たかみなー。これ、美味しいよー♪ 飲んでみなよー」

たかみな「カシスオレンジか・・・うん、美味しいな。後で私も頼んでみるわ」

大島「お、あっちゃーん。これも美味しいから、飲んでみろよ」

前田「優子、顔真っ赤だよ。うん、ちょっと飲んでみるね・・・おぇ、何これ!?」

大島「日本酒だよ日本酒。大吟醸、美味しいだろ?」

前田「まずい・・・」

高橋「あっちゃん大丈夫かよー・・・ごめんごめん、でゆきりん何だって?」



20 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:07:59.93 ID:5vnBfCrU0
篠田「たかみな、このグラス持って持って」

高橋「うん? 持てばいいの・・・?」

篠田「何で持ってるの、どうして持ってるのー♪」

 篠田のコールが始まって高橋無理矢理飲まされる。

高橋「ぷはー、な~なんだよ~、いきなり~、うぃ~」

篠田「たかみなが酔っぱらった、酔っぱらった。ほれ、もう一杯~♪」

大島「おいおい、たかみな具合悪いんだからふざけんじゃねーぞ!」

柏木「(もうこの人は駄目だ・・・)あの、あっちゃん・・・」

前田「zzzzzz・・・」


21 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:08:36.66 ID:5vnBfCrU0
柏木「(寝ちゃってる・・・さっきの日本酒が駄目だったのかな)あの、こじはるさん」

小嶋「ねえねえ、ゆきりん。どうして、月は丸いのかなー?」

柏木「・・・(この人も駄目だ)」

 篠田は駄目、大島と高橋は酔っぱらってる。前田は寝てる、小嶋は・・・話しても仕方がない。

柏木(もう・・・早く帰りたい・・・)

 収穫が全くなかった、柏木であった。


22 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:09:28.72 ID:5vnBfCrU0
~1週間後~

 今日は音楽番組の収録の日だ。
 ということで、スタジオに選挙21位以内が一同に介している。

柏木(あれから、全く進展がない・・・やっぱり、秋元先生はセンターだし、あっちゃんは2位だし、はるごんは子供だし、はーちゃんは昭和だ)
柏木「たかみなさん。そう言えば、秋元康さんはまだ来てないんでしょうか?」

高橋「ああ、ドラマの収録みたいでさ、収録の開始までには何とか間に合うらしい」

柏木(あれから、秋元先生が出演しているテレビ番組やPVを見てみたけど・・・やっぱり変。ほとんどの曲で秋元先生がセンターポジションを勤めている)
柏木(しかも異常にダンスのキレがいいのが不気味だ・・・)

横山「あのー、柏木さん。京都に帰京してて、お土産買ってきたんですけど、いりますか?」

柏木「うん、ありがとうゆいちゃん。これ、何て言う食べ物なの?」


23 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:10:36.59 ID:5vnBfCrU0
横山「知らないんですか? 京都名物、おたべですよ、おたべ」

柏木「あー、そういえばマジすか学園の役名も「おたべ」だったね。うん、美味しい! ありがとう、ゆいちゃん」

高城「あー、ゆきりん。隠れて何食べてるの、あきちゃもちょうだい!」

横山「いいですよ、はい」

高城「これ美味しいー。これ、ゆいちゃんが作ったのー? レシピ教えてー」

横山「いえ、私が作ったわけじゃ・・・」

高城「ねえねえ、ゆきりん。作り方知らなーい?」

柏木「知らん! というか、ゆいちゃんが作ったわけじゃないんだからね、そこんとこちゃんと聞いてた、あきちゃ?」


24 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:11:26.31 ID:5vnBfCrU0
高城「ふーん、そうなんだ。じゃあ、あきちゃも帰って作ってみるね!」

柏木「頑張ってね・・・(あきちゃの話は真面目に聞くだけ損だ)」

高橋「おかしいなー、やすすなかなか来ないなー・・・開始まで後5分だぞ、電話してみるか」

???「すまん、遅れてしまった」

 額に汗を浮かべて、急いで楽屋に入ってきたのは秋元康だった。

柏木(秋元先生、この狂った世界になってから、初めて会うな・・・)
柏木(前の世界と全然変わらない・・・顔も髪型も体型も、声も喋り方も・・・それなのにAKBのセンターって・・・みんな何か違和感感じないの?)


25 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:12:22.11 ID:5vnBfCrU0
高橋「おー、やっと来たか。それじゃあ、みんな、スタジオ入りするぞー」

全員「はーい」

柏木(このままじゃ、何も進展しない。よーし)
柏木「ねえねえ、秋元せ、やすすさん」

秋元康「お、柏木か。どうしたんだ。妙に改まって」

柏木「ドラマの撮影どんな感じですか?」

秋元康「おー、今回は初めて時代劇に挑戦するけど、なかなか新鮮だな。だが、初めてだからなかなか上手くいかなくって困っている」

柏木「へえー、そうなんですか。がんばってくださいね」

秋元康「おう」


26 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:13:24.24 ID:5vnBfCrU0
柏木(いつもの秋元先生と全然変わらない・・・)

 柏木の疑問もそっちのけで、番組の収録が始まった。
 番組ではAKBメドレーと称して、「大声ダイヤモンド」→「ヘビーローテーション」→「フライングゲット」を選挙21位以内全員で歌った。
 その後、司会者との軽いトークで終わり、というありがちな内容だ。

秋元康「最近、ぐぐたすにはまっていまして、高城が他のメンバーのコメントを荒らすんですよ」

高城「あきちゃ、荒らしてないよー」

秋元康「その他にも、メンバー同士の掛け合いが面白いので、ぜひみんな見に来てください!」

 番組の収録は無難な感じで終了した。


27 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:14:14.05 ID:5vnBfCrU0
柏木(昨日、必死にフォーメーション覚えたけど・・・珠理奈がセンターの大声でも、大島優子ちゃんがセンターのヘビロテでも、あっちゃんがセンターのフラゲでも、全部秋元先生がセンター)
柏木(唯一、センターじゃないのは、制服が邪魔をするや夕陽を見ているかなどの初期の曲。さらにじゃんけん選抜の曲だけ・・・)

秋元康「今日も無事終了したな、みんなおつかれさま」

大島&秋元「おつかれさまでーす!」

秋元康「そういえば、収録の時にも言ったけど、最近ぐぐたすにはまりすぎて睡眠不足だ・・・指原先生が「ぐぐたす選抜」なんていうから・・・正気に戻れ、やすす」

柏木(秋元先生が指原先生って・・・新鮮)


28 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:14:49.67 ID:5vnBfCrU0
渡辺「でも、やすすはやっぱりダンスのキレもいいし、歌も上手いね。アンチも多いけど、その分人気もあるし、今年も1位は堅いね」

秋元康「いやいや、流石に4回連続は厳しいだろ。今年はソロデビューも決まっている、まゆゆだろ」

高橋「そうだぞー、まゆゆ。お前もやすすからセンター取る気でいかないと」

渡辺「やっびゃあ。いやいや、やすすに勝てる気しないよ・・・」

柏木(狂ってる・・・)

峯岸「ここだけの話さ・・・」


30 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:15:43.42 ID:5vnBfCrU0
柏木「うん? どうしたんですか、峯岸さん」

峯岸「今年、四回目になるわけだけど、正直誰が1位を取ると思う?」

柏木「えー? 分かんないですよ、まあ私じゃないことは確かですけど・・・」

峯岸「まゆゆも言ってるけどさ・・・やすすの1位はまだ崩せないと思うんだよね。ダンスも上手い、歌も上手い、ルックスも良い、トークも上手い。それでいてドジなところもあるし・・・アイドルの完成系だと思うわ。やすすは」

柏木「・・・」

峯岸「後はスキャンダルでっちあげて崩すしか・・・」

柏木「えっ? 峯岸さん、今なんて言いました?」

峯岸「・・・うんうん、何でもない。今の話は忘れてね、言ったらどうなるか分かってるよね。じゃあ」


31 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:16:26.61 ID:5vnBfCrU0
柏木(ブラックブラック言われるけど、峯岸さんの方が黒いと思う)
柏木(それにしても秋元先生、メンバーと馴染んでるな・・・というか私より馴染んでるんじゃないの)

秋元康「おい、高橋。お前、ぐぐたすで「おいらはテカミナ」って書いてるけど」・・・」

高橋「えっ、私そんなこと書いて・・・あかーん、麻里子様が勝手に私の携帯を」

柏木(でも、可笑しいけど、この世界で良いのかな。確かに可笑しいけど、別にみんな楽しそうだし、AKBも安定している)
柏木(そうそう、別にこれでいいじゃない。今のとこ、全く支障をきたしてないんだから)


32 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:17:08.68 ID:5vnBfCrU0
秋元康「ぐぐたす面白いな、指原先生も色々とコメントしているみたいだし・・・」

峯岸「あっ、充電器見付かったー! よーし、今まで充電器なくて、ぐぐたす更新できなかったけど、今日から出来るぞー」

柏木(・・・うんうん!)
 
 柏木は机を叩いて立ち上がった。
 みんなが柏木の方に視線を向けて、恥ずかしくなったのか座り直し。

柏木(やっぱり可笑しいでしょ! 秋元先生がセンターで、みんなと馴染んでAKBなんて! 私の思い浮かべていた、憧れていたアイドルってこんなんだったの!)
柏木(うんうん、違う! あんなおっさんがアイドルの完成系なんて笑わせる! みんなちょっと頭が可笑しくなっているだけ!)


33 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:17:41.69 ID:5vnBfCrU0
高城「どうしたの・・・ゆきりん? いきなり机叩いてたけど・・・」

柏木「うんうん、何でもない・・・あきちゃはアイドルって何だと思う?」

高城「えっ? どうしたの、いきなりそんな質問・・・。うーん、キラキラしてる人かなー? あきちゃバカだから分からなーい」

柏木(そうよ、アイドルっていうものはキラキラしているもの。秋元先生がキラキラしている、ふざけんなですわ)
柏木(ならば、みんなの目を覚ますために)


34 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:18:07.67 ID:5vnBfCrU0
柏木「私がセンターを獲る・・・」

高城「ん? 何て言ったの、ゆきりん」

柏木「何でもない」
柏木(私が今年の選抜総選挙で1位を獲って、みんなの目を覚ませてやる。私が最強のアイドルになってやる! 秋元先生なんかに負けてられない)

 こうして柏木の「総選挙1位までの道のり」が始まった。


35 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:19:04.04 ID:5vnBfCrU0
 ■名古屋のエース■

平田「今日も公演良かったねー! それじゃあ、明日も公演控えているし、今日はゆっくり休んでください。解散!」
全員「おつかれさまでしたー!」

 ――ここは名古屋の栄にあるSKE48劇場。
 今日の夜の公演が終わり、SKEのチームSのメンバー達は荷物をまとめて帰ろうとしている。
 みんなの表情は清々しいもので、額から流れる汗も輝いている。
 しかし――そんな、ダイヤモンド――みたいな空気の中で、道ばたにある汚い石ころのような表情を浮かべるメンバーがいた。

松井珠理奈「はぁ・・・」
松井玲奈「どうしたの、珠理奈―?」


36 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:20:04.16 ID:5vnBfCrU0
 松井珠理奈――かつて、指原先生からダイヤモンドの原石と呼ばれたメンバーである。
 SKEでありながら、AKBのセンターになることを運命付けられた少女。
 そんなスーパー中学生も、今日は浮かない顔をしていた。

珠理奈「いやさ・・・何でもない・・・」

玲奈「どうしたの・・・? 珠理奈らしくない、悩みがあるなら相談に乗るよ」

珠理奈(相談できるわけないだろ・・・何てたって)
珠理奈「いや、本当に何でもないから大丈夫。ちょっと今日は疲れてるだけ」

玲奈「ふーん、じゃあ今日は気を付けて帰りなよ。明日も朝からレッスンだし」

珠理奈「・・・」

 そう言って、玲奈は控え室から出て行った。


37 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:20:55.47 ID:5vnBfCrU0
珠理奈(私の悩み・・・間違っても、玲奈だけには言えるはずがない)

 玲奈に「大丈夫」と言ったが、明かに珠理奈は浮かない顔をしていた。
 バッグを持ち、珠理奈は一人で控え室から出た。

珠理奈(はあ・・・私はこれからどうしていけばいいんだろ・・・)

 タクシーを使って帰る、という手段もあったが、今日は歩きたい気分だったので、少々危険かと思ったが徒歩で帰ることにした。
 せいぜい、20分程度のところだからである。

???「珠理奈」

珠理奈「この声は・・・」

 後ろからの声に気がつき、振り返る。


38 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:21:54.46 ID:5vnBfCrU0
珠理奈「篠田さん・・・」

篠田「ちょっとお仕事で名古屋まで来ててね。どうしたの、浮かない顔してるけど」

珠理奈「いや、ちょっと・・・」

篠田「今から公演も終わったし、暇でしょ? 近くの喫茶店でご飯食べようよ」

珠理奈「・・・」

 今日は早く帰りたい気分であったが、大先輩の篠田の誘いを断れる訳もなく、付いていくことにした。

篠田「なかなかお洒落なカフェでしょ? 名古屋に来たら、絶対ここに来ることにしてるんだ」

珠理奈「そうですね、外からは見たことあるんですけど、初めて入りました」


39 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:22:51.36 ID:5vnBfCrU0
篠田「じゃあ、お腹も減ってるだろうし何か頼も。すいませーんカレーライス、一つ」

珠理奈「・・・サンドイッチで」

 あまり喉も通らないので、サンドイッチを選択。
 料理が珠理奈達のテーブルまで運ばれ、二人は各々食べ物を口に運んだ。

篠田「で、どうしたのさ珠理奈。浮かない顔してるけど・・・」

珠理奈「・・・いや、本当に何でもないんです・・・何も」

篠田「・・・実はさ、珠理奈の様子が可笑しいって知らせてくれたの、玲奈なんだ」

珠理奈「え・・・玲奈が?」



40 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:23:54.65 ID:5vnBfCrU0
 意外な名前が出てきて、驚きの表情を隠せない中学生。

篠田「最近、珠理奈の様子が可笑しい・・・良ければ、話に乗ってやってくれませんか、って三日前くらいに玲奈からメールがね」

珠理奈「・・・」

篠田「・・・らしくないよ。そう、最近、というかここずっと。半年くらい、ずっと何かを考え込んでいる。チームSの、いやSKEのセンターがそんな表情浮かべちゃ、チーム全体に迷惑がかかるよ」

珠理奈「すみません・・・」

篠田「ほら、言ってみなさいよ。お姉さんが訊いてあげるよ? 力になれるか分からないけど」

珠理奈「・・・実は・・・」


41 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:25:13.53 ID:5vnBfCrU0
 意を決して口を開く珠理奈。

珠理奈「私の、今回の総選挙の順位知ってます?」

篠田「もちろん、知ってるよ。13位でしょ」

珠理奈「14位です・・・いや、私、SKEに入った頃から指原先生に推され続けているわけじゃないですか・・・なのにこの体たらく」

篠田「・・・」

珠理奈「といっても今まではまだ良かった。今回は得票数が多すぎた。一位のやすすさんでさえ、14万票。その下の前田敦子さんが13万票。やはり首都圏の基盤がありますから、名古屋では勝てない・・・
    諦めているわけじゃないんですけど、そうやって自分を慰めることが出来ました。東京と愛知・・・名古屋じゃハンデがある、と・・・でも」

篠田「今回は玲奈が10位で珠理奈を上回った、そこが問題と・・・」


43 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:26:20.49 ID:5vnBfCrU0
珠理奈「そうなんです・・・今まで、何とかSKEの中ではトップ、名古屋という同じフィールドでは1位を取り続けていたんです」

珠理奈「しかし今回は、玲奈が10位でメディア選抜に入り私を上回りました。それが許せなくて・・・」

篠田「・・・」

珠理奈「もちろん、玲奈を恨むわけじゃありません。しかし最初から推され続けていて・・・「大声ダイヤモンド」からじゃんけん選抜を除いて全ての選抜に選ばれ続けていました。けど、玲奈は決して最初から推されていたわけじゃありません」

珠理奈「それなのに、着々と結果を出し続けて、今回は10位。SKEリクエストアワーでも2回連続で「枯葉のステーション」が一位を取り、格の違いを見せつけました」

篠田「玲奈人気は最近凄いもんね。いや昔からか・・・」

珠理奈「はい・・・私、自分を許せないんです。指原先生が私のことを期待してくれて、今までずっと推してくれました。それにかかるコストも膨大だったでしょう」


44 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:27:39.60 ID:5vnBfCrU0
珠理奈「でもそのコストに見合うだけの結果が出せなかった・・・私、このままじゃメンバーにも、スタッフさん達にも・・・」

篠田「ねえねえ、珠理奈・・・私と珠理奈の違いって何だと思う?」

珠理奈「えっ?」

 突然の質問に、言葉が詰まる珠理奈。

珠理奈「何でしょう・・・ルックスですかね・・・後、容姿とか、人気とか」

篠田「違うよ、私と珠理奈の違いは「生まれた年が違う」。それだけなんだよ」

珠理奈「生まれた年が・・・」

篠田「そう・・・もちろん、色々と違いはあるよ。全く同じ人間なんて、遺伝子レベルまで見たら存在しない。けどその中で私と珠理奈の違いは年齢は違う・・・これ、どれだけ大きな違いだと思う・・・?」

珠理奈「・・・」

篠田「私と珠理奈は10歳も年が違う。つまり珠理奈は後、10年は努力することが出来るってこと。これは大きな違い・・・年取ってくるとね、本当に若い人が羨ましいのよ・・・若い人にはどうにでも出来る可能性がある」


45 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:28:38.88 ID:5vnBfCrU0
珠理奈「・・・」

篠田「だからね、慌てなくてもいいのよ。まだまだ珠理奈には可能性がある、私から見てもね。まだまだ若いから指原先生も回り道させてると思うよ、今年で中学卒業だっけ?」

珠理奈「はい・・・」

篠田「じゃあ今からだ・・・それにみんな重圧を背負ってる。やすすだって、あっちゃんだって、優子だって、上位はとんでもない重圧を背負ってる。もちろん、玲奈にだってね」

珠理奈「玲奈にも・・・」

篠田「モノは考えようってこと。これで、玲奈は重圧を背負うことになってしまった。ファンの重圧をね・・・これだけファンに期待されているのに、ファンの期待っていうコストがかかっているのに、これから結果が出なかったらどうなるか・・・これって怖いことだよ」


49 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:30:40.30 ID:5vnBfCrU0
珠理奈「・・・」

篠田「その分珠理奈はそういう面での重圧はないかもね。つまりさ、モノは考えよう、当たって砕けろ失うものは何もない。失敗したって、こんだけ若かったらいくらでも修正できるよ」

珠理奈「・・・そうですね・・・」

 珠理奈は大きな息を吐く。

珠理奈「ありがとうございました・・・話を聞いてもらえるだけでも、肩の荷が降りました」

篠田「いやいや・・・色々偉そうなこと言ったけど、まあ適当にがんばりなよ。知ってる? 軍事用語で適当に頑張れは、全力で頑張れってこと」

珠理奈「・・・はい」


52 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/16(月) 00:31:53.42 ID:5vnBfCrU0
 ちょうど二人の食事も終わり。

篠田「じゃあ、帰ろうか。家まで送ってくよ、家どこ?」

珠理奈「いえいえ、もう後5分くらい歩いたところなんで、大丈夫ですよ。篠田さんだって明日も早いんでしょう?」

篠田「うん、明日は5時から仕事かな。まあ今からラジオの収録もあるけどさ」

珠理奈「は?」

篠田「今日は1時間くらい寝れるかな・・・ってもうこんな時間! 珠理奈、じゃあまた!」

 篠田は伝票を持って、急いで会計を済ませ店から出て行った。

珠理奈(相変わらず凄い人だ・・・)


53 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:33:00.83 ID:5vnBfCrU0
 ~日にちは変わって、SKE48劇場~

珠理奈「おはよーう!」

矢神「珠理奈!」

珠理奈「うん、どうしたのくーみん?」

矢神「どうしたじゃないよ!? ニュース見てないの? AKBの篠田麻里子さんが、第四回総選挙を前に卒業だって!」

珠理奈「は?」

 突然の知らせに動きが止まる珠理奈。

珠理奈「嘘・・・だって、昨日だって・・・」

矢神「それだけじゃないよ、珠理奈だ・・・」


54 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/16(月) 00:33:52.30 ID:5vnBfCrU0
玲奈「珠理奈!」

 珠理奈がもの凄い形相で珠理奈に近付いてくる。
 その目にはうっすらと涙も浮かんでいるように見える。

珠理奈「玲奈ちゃん、おはよう。どうしたの、凄い顔だけど・・・」

玲奈「どうしたじゃないよ! はい、今日の朝刊」

 玲奈から新聞を受け取る珠理奈。
 ――読んでみるが、字を字として受け取り、文章として頭に入れられない。

珠理奈「これは・・・」

玲奈「A、AKBに移籍ってどういうこと! そんなこと今まで一言も言ってくれなかったじゃん! それなのに、どうして、いきなり!」

 その一面には大きく「珠理奈、AKB48に移籍」という文字が――。


55 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:35:00.30 ID:5vnBfCrU0
 ■エースとの決別■

柏木「珠理奈が、珠理奈がAKB48に移籍ですって!」

高城「いきなりだよね! 全く訊いてなかった! 指原先生も大胆なことするよね! あきちゃビックリ!」

柏木「何じゃこりゃー!!」

倉持「・・・どうしたの、ゆきりん。うるさいよ、いくらスタンバイ中だからって」

 ――ここは夢の国――と呼ばれているテーマパーク。
 柏木は、高城、倉持の3人の「フレンチキス」でロケの仕事をしていた。
 内容はただ3人がアトラクションに乗って、面白いねー、とか、怖かったねー、とか言ったり、テーマパーク内のご飯を食べて美味しいねー、みたいなこと言ったりする在り来たりな内容。
 現在は一段落して、3人は椅子に座って次の出番が来るまで待機している。


56 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/16(月) 00:35:58.90 ID:5vnBfCrU0
柏木「ごめんごめん・・・というか、今ワンセグ繋いでたらニュースでやってたけど・・・珠理奈がAKB移籍って・・・明日香ちゃん知ってた?」

倉持「うん、お父さんがお仕事のためにスポーツ新聞毎日取ってるんだけど、今日は野球よりも珠理奈のことが一面に載ってた。オフシーズンだからってこともあるんだけど・・・」

柏木「あきちゃは・・・?」

あきちゃ「んー? 知ってたような、知らなかったような・・・あきちゃバカだか」

柏木「はいはい、ありがとう・・・最近、忙しくてニュースとか見てないから分からないけど、前々から珠理奈移籍っていう話はあったの?」

倉持「うんうん、今日いきなり。何でも珠理奈も全然知らなかったらしいよ」


58 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:37:41.24 ID:5vnBfCrU0
柏木(仕掛けてきたか・・・)

 柏木は無意識の内に爪を噛む。

柏木(珠理奈がこれで終わるわけがない、って思ってたけど・・・いくら中学卒業だからって、指原も思いきったことをやる・・・これで東京と名古屋のハンデがなくなって、票数もどう転ぶか分からない)

柏木(当面、気にすべき相手は秋元先生とあっちゃん、大島優子ちゃんとまゆゆだけだと思ってたのに・・・ここに来て・・・)

高城「どうしたのゆきりん。顔がブラックまりもっこりになってるよ」

柏木「って、そんなわけないでしょーよ! しかも今、見てたら麻里子様も総選挙前に引退って・・・」

倉持「まあ、正しくはAKBを引退するだけであって芸能界はまだ続けるみたいだけどね・・・」


60 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/16(月) 00:38:40.14 ID:5vnBfCrU0
柏木(このタイミングで・・・まだ咲子ちゃんも育ってない段階では、麻里子様のAKB脱退はそれ即ち、サムデイのAKBからの撤退を意味するから、まだしないものだと思ってたのに・・・まあ)

柏木「ライバルは一人減った・・・くくく」

高城「ゆきりんどうしたの? ゆきりんは本当に腹黒なんですか?」

柏木「ねえ、どうして本人が目の前にいるのにそんなこと言うの! もう知らん!」

倉持「選挙前に慌ただしくなるね・・・ただでさえ、まゆゆのソロデビューとか、色々あるのに・・・指原先生が言ってたAKBの再生ってこういうことかな?」

柏木「んー、どうだろ。後一つ、AKBの再生って言われて気に掛かることは・・・」


61 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:39:34.56 ID:5vnBfCrU0
倉持「ん?」

柏木「・・・いや、何でもない。多分、ただの思い過ごし」

 首を振って頭の内容を切り替える。

柏木「まあ、麻里子様が引退しようが、珠理奈がAKBに来ようが、私は私! がむしゃらに頑張るのみ!」

高城「うん、そうだね!」

柏木(無論、そういうわけにはいかないけど・・・)

 無論――篠田の引退、珠理奈の移籍は多大なる影響を被ることになる。
 その影響を無視したまま突き進むだけでは――おそらく総選挙1位なんて夢のまた夢だ。
 しかも柏木はセンタータイプではない、というのに――。

倉持「あきちゃあきちゃ。でもやっぱり珠理奈はチームAに移籍するのかな?」


62 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:40:51.34 ID:5vnBfCrU0
高城「難しいこと分かんないけど、順当に考えればそうじゃない?」

柏木(それだけが救いか・・・チームBに来られて、ファン同士で票数食われちゃたまっちゃもんじゃない)

倉持「まあ麻里子様も引退するし、順当かな。ちょうど一枠開くことになるし」

高城「それにしても、チームA凄いね! 麻里子様が引退するとはいえ、やすす、あっちゃん、たかみな、珠理奈、クアドラプルセンターで、脇をこじはるとかもっちぃとかで固めるわけでしょ? もう盤石の体勢だね」

柏木(確かに・・・あきちゃは自分の名前を出さなかったけど、あきちゃも十分な戦力。てか麻里子様が引退してくれて本当に良かった・・・ただでさえ、秋元先生、あっちゃん、たかみな、珠理奈のクアドラプルセンターっていう想像するだけで恐ろしいのに・・・)

柏木(その上で麻里子様と小嶋さんのビジュアル担当が脇を固め、あきちゃ、もっちぃでキャラ成分も豊か。さらにこの上でもし指原がチームAにいたら、この個性豊かすぎる面子も揃えられる・・・)


63 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:41:49.16 ID:5vnBfCrU0
柏木「・・・いや、本当に引退してくれて良かった・・・」

倉持「でも大丈夫かな? 流石にクアドラプルセンターはまとまりがないように思えるけど。たかみなをキャプテンに集中させるとしても、まだトリプルセンター。こんなんでまとまりが上手くつくのかな?」

高城「? ・・・大丈夫じゃない? ほら、強い人一杯いる方が強いし。あきちゃバカだからよく分かんないけど、野球でもホームランバッターが多い方が得なんでしょ?」

倉持「いやいや、確かに85年阪神とか、最後に近鉄とかホームランバッター多い球団が優勝するケースもあるけど、何てたって史上最強打線(笑)時代の巨人とか・・・」


64 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:42:26.72 ID:5vnBfCrU0
柏木(確かに。エースを揃えればいいってもんじゃない。もしかしたら、チームA推しの人はこれで票を食い合うかもしれない。そう考えると、私も有利・・・なのかな?)

 誰にも悟られないように、邪悪な笑みを浮かべる柏木。
 腹黒の真骨頂である。

スタッフA「じゃあ、フレンチキスの3人。始まりますので、集合してくださーい」

柏木・高城・倉持「はーい!」

柏木(とにかく、今は目の前の仕事に全力でやるだけ・・・それに、今日は・・・)



66 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:43:28.94 ID:5vnBfCrU0
 ~とある豪邸にて~

渡辺ミキ社長(以下、社長)「じゃあ、今日は無礼講なので楽しんでください。かんぱーい!」

全員「かんぱーい!」

柏木(そう、今日は社長と話ができる日・・・)

 ここはナベプロの社長、渡辺ミキ社長の家。
 今日は社長の家で鍋をする・・・題して「ワタ鍋」が開催される日だったのだ。

柏木「あきちゃ、何してるの?」

高城「うん? グーグル+だよ。面白いよー」

 最近、始められた新サービス「Google+」。
 今までのブログとは違い、メンバー同士の絡みも面白いとされ好評なサービスである。


67 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:44:24.59 ID:5vnBfCrU0
柏木「あきちゃ、ずっと思うんだけど・・・もう少し考えてからコメントした方が良いと思うよ・・・だから侮蔑の意を込めて「コメントマスター」って・・・」

高城「あー、ほらほら見て見てー。ワタ鍋のこと書いたらやすすが「渡辺美樹~! 鍋を食べさせてくれぇ~!」だって。面白いよね!」

柏木(・・・相変わらず、何なんだあの人は・・・)

 秋元康がアイドルになろうが、顔や言葉遣いは全く一緒。
 みんなが女の子言葉で喋ってるのに、秋元康だけが男言葉・・・そこに最大級の違和感を感じるのだが・・・

柏木「まあ、私だけだろう・・・どうせ」

 ワタ鍋も終盤まで差し掛かり、高城はずっとスマホをいじってるし、倉持はスタッフの人とプロレスと野球の話ばかりだ。
 柏木はこの時点で少し帰りたく、いやとても帰りたくなったが、眠さをこらえて我慢することにした。


68 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:45:09.33 ID:5vnBfCrU0
社長「ちょっと、私はお手洗いに・・・」

柏木(今だ!)

 社長が席を立つと同時に柏木も席を立つ。
 社長の後を追いかける柏木。

柏木「社長!」

社長「うん? どうした柏木。流石に私の家とはいえ、トイレは一つしかないぞ」

柏木「単刀直入に言います。私をソロデビューさせてください!」


69 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:45:51.10 ID:5vnBfCrU0
 ~とある日の作戦会議~

 そう、これは柏木が「総選挙で1位を獲ってセンターになる」と決意した、次の日である。

柏木「これが私の思う、AKBセンターの条件だけど・・・愛ちゃんはどう思う・・・?」

多田「うん。いいんじゃないかな、特に不満はないよ」

 柏木は自室に多田愛華を呼んで、作戦会議をしていた。
 作戦会議とはがむしゃらに頑張っても1位は取れないということ、多田を呼んだのは一人では心細く味方も必要と考え、作戦設計能力が高いと考えられる多田を味方に引き入れることにした。
 旧チームBの絆。

多田「それにしてもビックリしたよー。いきなりゆきりんから「1位獲って、センターになりたいから協力してくれ」だって」


71 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:46:45.45 ID:5vnBfCrU0
柏木「うん、いきなりゴメンね。愛ちゃん」

多田「うんうん、いいよいいよ。やすすのことは嫌いじゃないけど、私、ゆきりんの方が好きだし」

 多田の温かい言葉に喉から何かが込み上げてくる柏木。
 しかしそれを飲み込んで。

柏木「とにかく私が思うセンターの条件。①持久力が高いこと。これは毎日公演をやるAKB特有の問題となってくる」

多田「野球に例えると分かりやすいね。怪我してシーズン途中で4番とかエースが抜けられたらチーム全体がガタガタになる。だから怪我に強い人を4番やエースに添える」


72 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:47:39.79 ID:5vnBfCrU0
柏木「そう言うこと。②マスコミ対応能力が高いこと。やすすさん、あっちゃん、たかみなを見てて思うのは、決してマスコミの前では不味いことを言わない。無難とも言えるコメントをいつも言ってくる」

柏木「③スキャンダルを犯さない絶対の安定感。どんなに人気のメンバーでもスキャンダルは致命傷になってくる。これは旧チームBのエース格だった菊地あやかを見たら分かりやすい」

多田「本当にファンの人って、やっぱりスキャンダル気にするもんね」

柏木「うん、そして最後に最も重要な一つ。それは④精神力が強いこと。これは絶対的」

多田「今のところ、唯一勝てると思われるあっちゃんも、どんなに叩かれても食が細くならず、「知らない」と言い切る精神力。いや、鈍感とも言えるぐらいの天才的な精神力。これは重要だろうね」


73 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:48:43.86 ID:5vnBfCrU0
柏木「そう。AKBは始まって以来、実体よりも大きく見せることによって成長してきた。これはいくらマスコミから叩かれても、やすすさんやあっちゃんは潰れない、と考えたからだろうね」

多田「その点、大島優子ちゃんは攻撃力には優れるが、防御力には優れない、その差だね」

柏木「そう。重要なのはこれは運営から見て必要な条件ということ。そしてこの必要な条件を満たした人間を、次世代エースとして所謂ゴリ推しをしてくる。そしてそのゴリ推しの手段とは「テレビなどのメディアを使う」こと」

多田「現状では、公演で頑張っている人間よりも、テレビでのゴリ推し戦法の方が総選挙では有利に働いてくる。勿論、亜美菜のような例外はあるから、一概には言えないけど」

柏木「そういうこと・・・つまり、私のやるべきことは、テレビに出まくって、一般人の認知度を上げること。何だかんだ言って、母体が多い方が有利と考えられる」

多田「あっちゃんと大島優子ちゃんの違いはそこもあるよね。あっちゃんは多い人から少ない票を集め、大島優子ちゃんは少ない人から多くの票を集めた。やすすはその中間をいくんだけど・・・」

柏木「辛うじて、私は少ない人からの多くの票は集めやすい。後は一般知名度を上げること。そのためにはテレビに出まくって――」


74 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:49:44.71 ID:5vnBfCrU0
柏木(――テレビに出まくる手段の一つとしては、ソロデビューをすること。これは運営も分かってるから、次世代エース育成のためにまゆゆをソロデビューさせた)

社長「ソロデビュー・・・」

柏木「はい。私、もっと自分の可能性を広げてみたいんです。もちろん、フレンチキスの仕事もちゃんとやります。どんなに忙しくてもやり抜きます。ですので、お願いします私にソロデビューのチャンスを・・・」

社長「・・・」

柏木(即答で断ることなんて出来ないはず・・・太田プロのあっちゃん、ホリプロのともちんさん、この上で尾木プロのまゆゆやわさみんもソロデビューしてくるから、ここでナベプロが何もしないっていう訳にはいかないはず)

柏木(そして、現状で一番売れると考えるのは総選挙3・・・4位の私。ここで出遅れたら、サムデイのようにAKBから放っておかれるかもしれない)

社長「ゆきりんが・・・そんなこと言うなんてね・・・」


75 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:50:53.84 ID:5vnBfCrU0
柏木「お願いします! 私、どうしてもソロデビューしたいんです」

社長「自分の可能性を広げたい・・・それだけじゃないんだろうね・・・」

 流石、大手事務所の社長。柏木に裏があることくらいお見通しである。

柏木「・・・」

社長「・・・いいわよ。ちょっと考えてたところだし」

柏木「本当ですか!」

社長「でも分かってる? この時期にソロデビューをするってことは・・・」

柏木「・・・はい、まゆゆとの対立を意味する、ってことですね」

社長「そういうこと・・・」

 チームBのエース、渡辺麻友。
 チームBどころか、AKBのエースまで上り詰めようとしている少女。
 柏木にとっては旧チームBからの戦友ともいえ、対決するなんて、夢にも思っていなかった人物。
 そのエースとの――決別――。


76 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:51:48.89 ID:5vnBfCrU0
社長「・・・分かった・・・すぐには無理だけど、明日の会議でちょっと喋ってみる。指原先生の意向も必要だしね」

柏木「・・・ありがとうございます!」

社長「さあ、明日から忙しくなるな・・・」


77 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:52:29.34 ID:5vnBfCrU0
柏木(やった! 勝算はあるとはいえ、やっぱり不安だったけど・・・それでも何とかソロデビューを考えてもらえることが出来た・・・これで一歩前進)

 柏木は今日、最大の仕事を終え肩の荷が降りたのか背筋を伸ばす。
 ――しかし柏木はまだ分かっていない。渡辺のアイドルとしてのポテンシャルの高さを。
 去年のAKB紅白歌合戦で、松井珠理奈と「てもでもの涙」を披露したことの意味を。
 奇しくも、「てもでもの涙」は柏木と元AKBメンバー、佐伯美香の二人でAXにおいてユニット曲最上位を収めた曲だ。
 本当の戦いはこれからだと――。


79 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:53:53.18 ID:5vnBfCrU0
■武道館ライブ~AKB再生祭り~■

高橋「続けて、アンコール曲として3曲続けて聞いていただきましたが、いかがだったでしょうかー!」

 武道館は最高の盛り上がりを見せていた。
 最高の盛り上がりなのに・・・何処かAKBのキャプテン高橋みなみは浮かない顔をしていた。

高橋(可笑しい・・・何かが可笑しい。そもそもサブタイトルの「AKB再生祭り」って何なんだ。日本語的に可笑しいことは放っておいて・・・このまま終わるとは考えられにくい)

小嶋「それにしても」


82 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:55:23.87 ID:5vnBfCrU0
 小嶋がマイクを片手に言う。

小嶋「一体、このAKB再生祭り、ってどういう意味なんだろ、このまま終わっちゃうのかなー」

秋元康「特に指原先生は何も考えてないんじゃないか。というか、初心を忘れず今日から頑張っていきましょう的な、そんな意味でつけただけじゃないのか? 珠理奈もAKBに入ってくるし」

高橋(やすすも言ってるけど・・・いや指原先生は何か考えていらっしゃる)

 だてに「おニャン子クラブ」を率いて、全国優勝を成し遂げた名将を名乗ってない。
 
高橋(指原先生は無駄なことはしない・・・。無駄なことのように思えて、それは全て計算して作られている・・・なのにこのまま終わるなんて)

 会場がどよめく。
 高橋は振り返った瞬間、3年前がフィードバックし、この場で倒れてしまいそうになった。
 3年前の悪夢。

戸ヶ崎「はい、これからAKB48、新内閣を発表いたします」


83 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:56:25.04 ID:5vnBfCrU0
 会場が揺れる。
 怒号で揺れる。
 何が何だか分からないくらい、声が凶器となりメンバーに襲いかかる。
 何が起こったのか分からないメンバーもいる。佐藤亜美菜はすでに倒れた。
 高橋は倒れそうになりながら、戸ヶ崎の言葉に耳を傾ける。

戸ヶ崎「みなさん、ニュースや新聞でご存じの方も多いかと思われますが、松井珠理奈がAKBに移籍してきます。これに伴いチームAには秋元康、前田敦子、高橋みなみ、松井珠理奈、のクアトラプルセンターが完成してしまいます」

戸ヶ崎「流石にこのままではチームの戦力に偏りがありすぎるということで、3年前と同じように新内閣を勃発させたいと思います」

 会場は揺れる。
 まるで潰れてしまいそうになる。


84 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:57:02.06 ID:5vnBfCrU0
戸ヶ崎「といっても、3年前のようにほとんどチーム解体、ともいえるくらいの強引なシャッフルはいたしません。あくまで今回の目的は戦力の分散ですので、たった四人のメンバーのチームが変わるだけです」

 戸ヶ崎の言葉により、少しだけ安堵の息が漏れる武道館。
 佐藤亜美菜は担架で運ばれていった。

戸ヶ崎「それでは発表します。チーム名と名前を呼びますので、呼ばれたメンバーはそのチームに行ってください」

戸ヶ崎「それでは最初、チーム4「前田敦子」」


85 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:57:44.29 ID:5vnBfCrU0
 今日の武道館――いや武道館が建てられて初めてかもしれない、このような怒号のような歓声が上がるのは。
 流石の絶対的な精神力を持っている前田でも、フラフラになりながら何とかチーム4まで辿り着く。

戸ヶ崎「それでは続きます。前田敦子、チーム4移籍に伴い、チームA「竹内美宥」」

 地獄は続く。
 倒れそうになる竹内に気付いた高橋は、竹内まで近付き身体を支えながら何とかチームAまでの移動を終えた。

戸ヶ崎「それではもう一組のトレードを発表します。チームB「小嶋陽菜」」

 小嶋――放心状態でチームBまで移動。
 何が起こったか分かっていないようだ。

戸ヶ崎「チームA「佐藤すみれ」」


86 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:58:21.09 ID:5vnBfCrU0
 佐藤すみれ――名前が呼ばれたのに、微動だにしない。
 会場にどよめきが起こり、キャプテンの柏木が肩を叩く。
 すると佐藤すみれは両手で顔を収めながらチームAまで移動した。

戸ヶ崎「以上で発表を終わります。なお、新内閣は1ヶ月後の公演から始動します。ありがとうございました」

 こういって、何事もなかったかのように戸ヶ崎劇場支配人は舞台から消える。
 3年前と同じように――。


89 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:00:35.54 ID:5vnBfCrU0
平嶋「ゆきりーん」
柏木「なっちゃん・・・」

 そう――柏木の言っていた、3人の内の一人――1期生でありながら、チームBまで左遷されてきた少女。平嶋夏海。
 旧チームBからの戦友である。

平嶋「こじはるだって・・・私は同期だから、まだ大丈夫だけど。ゆきりん上手くやっていける?」
柏木「大丈夫、任せて・・・」

 そう、1期生が増えるのである。
 チームBのキャプテン、柏木としては少しやりにくさも感じざるを得ない移籍である。

柏木(これが指原先生の言っていた「AKB再生の意味」・・・! 注目すべきは、あっちゃんを一人でチーム4に行かせたこと。これは怖い、最悪あっちゃん卒業も考えられる)

 柏木は佐藤すみれをチームAまで連れて行き、高橋に「お願いします」と頭を下げた。


88 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 00:59:16.73 ID:5vnBfCrU0
 ~控え室、廊下前にて~

 ――地獄絵図だった。
 4人だけなので、ほとんどチーム解体に近かった3年前よりはマシであったが――過呼吸になって、倒れているメンバーもいる。
 泣き声だけがこだまする。
 そんな中、柏木はチームBで一緒に戦ってきた佐藤すみれを慰めながらこう思っていた。

柏木(恐れていたことの一つ・・・それは組閣祭り・・・流石にクアトラプルセンターは駄目と見たか、運営は。チーム4にあっちゃんを)

佐藤すみれ「ゆきりん、私大丈夫かな? やっていけるかな?」

柏木「大丈夫・・・。去年だって、チームBは3人しか残らなかった。大丈夫、きっとやっていけるよ」

柏木(それにしても、小嶋陽菜さんはチームB・・・これはまさかのトレードだった。来るとしても、まだチームの色に合いそうなあきちゃくらいだと思っていたのに・・・)


91 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:01:46.00 ID:5vnBfCrU0
高橋「ああ・・・まさか、再生祭りってこういうことだったとはな・・・ちょっと予想してたけど・・・」

柏木「ホントですね・・・」

高橋「ウチもこじはるがチームBに行くけどよろしく頼む。ああ見えて、結構しっかりしてる子だから」

柏木「はい・・・」

 もちろん、佐藤すみれがチームBから抜けることも重要であるが、小嶋がチームBにくる影響力も大きい。
 無視しようとしても無視しきれない影響力である。

柏木(は~。1位獲らないと駄目なのに、どうしてこんなに立て続けに・・・これで本当に票数が読めなくなった)

 明日は明日の風が吹く・・・そう言ってられない状況に、柏木は小さく溜息をついた。


92 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:02:44.09 ID:5vnBfCrU0
■とある一室にて■

峯岸「これで、あっちゃんは正直潰れる。流石の絶対的な精神力を誇るあっちゃんでも、チーム4に単独で行くのは骨が折れる。行かせるなら、たかみなを連れて行かせるべきだった。尤も、たかみなをチームAから外すことは考えられにくかったかが」

??「本当ですよねー。それにしても指原先生も思いきりましたね。あっちゃんをチーム4に行かせるなんて」

峯岸「代わりに竹内を育てるために、チームAに行かせたか・・・これでチーム4はどうなるか・・・まあ崩壊すると思うけどね。そしてもう一組、気になるのが」

??「小嶋さんとすーちゃんのトレードですね」

峯岸「そういうこと。これでチームAには初期メンがたかみなの1人しかいなくなった。まあ精神力の弱さを責任感でカバーするたかみなならやっていけると思うけどね」


93 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:04:24.41 ID:5vnBfCrU0
??「これでチームBは、エースまゆゆ、キャプテンゆきりん、官房なっちゃん、小嶋陽菜さんは何でしょう。ビジュアル担当でしょうか・・・」

峯岸「ともかく・・・。??。これで次の選挙でどう票が動くと思う?」

??「あっちゃんが潰れず、卒業の道を歩まない条件ですと、あっちゃんに票が流れると予想します。同情票も入ると思いますし、チーム4なら絶対エースとなると思いますし」

峯岸「・・・しかし、あっちゃんは潰れる。たかみなのいないあっちゃんなんて怖くない。それにしても一つ気に掛かることは、あくまで噂だけどゆきりんのソロデビューの話・・・??、何か聞いているか?」

??「いえ、何も聞いてません。進展しているんでしょうか?」

峯岸「エースとキャプテンの一騎打ちとなったわけだ。くくく、これで今年のAKBはまた一段と面白くなりそうね。心の準備していてね、??」

峯岸「今年は私が神の一人になる」


94 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:05:27.94 ID:5vnBfCrU0
 ■私が悪い■

峯岸「おい、菊地、そこ優子が座ってたから座んじゃねえよ」

菊地「あ、すみません峯岸さん」

 劇場の控え室のこと。
 昼ご飯のお弁当を食べようとしたら、何故か椅子が一つしか空いておらず、そこに座って食べようとしたら――。

菊地(峯岸さん怖いな・・・)

 菊地あやか――彼女は旧チームBのエース格の一人であった。
 神公演と言われた「パジャマドライブ」公演にて、鏡の中のジャンヌダルクというユニット曲でセンターをつとめたこともある。
 そう、あの神公演にて、最後に旗を立たせる菊地は、間違いなく主役であった。
 このまま順調にいけば、確実に選抜メンバーの一人にはなっている存在であった。
 しかし――。

菊地(まあ、いいや。床に膝ついたら食べれるし、そうしよ)


95 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:06:21.68 ID:5vnBfCrU0
 とある出来事がきっかけで、選抜どころか、総選挙においては圏外という位置に甘んじている。

菊地(あんな男に引っかかった私が悪い・・・そう私が悪いんだ)

 そうして寂しくお弁当をつついていると。

秋元「おお、菊地!」

菊地「秋元さん・・・」


96 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:07:03.29 ID:5vnBfCrU0
秋元「どうした、椅子がないのか? じゃあ、私の椅子を使えよ」

菊地「えっ、良いんですか・・・でもそれじゃあ、秋元さんの椅子が・・・」

秋元「良いよ良いよ。ちょっと最近身体たるんできているからスクワットしながら食べるし、全部食べずに家に帰って家族に分けてあげるんだ」

菊地(何で、スクワットしながら・・・)

 秋元流の冗談かと思ったら、本当にスクワットしながら食べ始めた。
 流石、秋元才加である。

菊地「ありがとうございます・・・」


99 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:08:11.80 ID:5vnBfCrU0
 ~公演終了後~

秋元「おお、菊地!」

菊地「秋元さん・・・」

秋元「今から何か予定あるのか!」

菊地「いえ、特に何もないですけど」

秋元「それじゃあ、私と一緒にジム行こうぜ! 最近、身体たるんできてるんだ! やっぱAKBって体力が重要だからさ、一緒に身体を絞ろうぜ!」

菊地「(ええっ、何で今から・・・)はぁ・・・」

秋元「よし、行くぞ!」

 強引に手を引っ張られてジムまで連れて行かれる菊地。


100 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:09:02.69 ID:5vnBfCrU0
秋元「ウッホ、ウッホ」

菊地「秋元さん、一体そのダンベル何キロなんですか・・・?」

秋元「ん? 78キロ!」

菊地「(それを片手で・・)はあ、ガンバってください」

 菊地も適当にマシーンを使ってトレーニングしていく。

秋元「ふう! 良い汗掻いた。おい菊地! サウナ行こうぜ!」

菊地「は、はい」

 断れるわけもなく、ただただ秋元に付いていく菊地。

秋元「ふう、やっぱりサウナは気持ちいいな!」


101 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:09:54.75 ID:5vnBfCrU0
菊地「そうですね・・・」

秋元「なあ、菊地、アイドルで一番大事なことって何だと思う!?」

菊地「何でしょう・・・やっぱ、ファンのことを信じることですかね」

秋元「惜しい! 正解は筋肉だ」

菊地「(えー)そうですね・・・それも有りかと思います」

秋元「というのは冗談だとして、菊地の良いところはそこだと思う。ファンのことを信じてこれたから――。3,4年前の事件、あの時ファンから相当パッシングを受けただろ・・・どうして俺達を裏切ったって」

秋元「あの時はみんながみんな敵に見えたはずだ、怖かったはずだ、もうアイドルなんてこりごりと思ったはずだ――でも――菊地はAKBに戻ってこれた。それはファンを信じたからだ。自分を応援してくれるファンがまだいる、ってな」


102 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:10:47.23 ID:5vnBfCrU0
菊地「・・・」

秋元「それが、菊地の良いところだ。これからもファンを信じ続ければ、きっと結果が出るはずだ」

菊地「・・・はい」

秋元「私も――少し前――とある事件の時、もうAKBなんて辞めようと思った。しかし私もこうして戻ってこれて、もう一度キャプテンなんていう役職をやらせていただくことが出来た。この時に、私は自分の筋肉を信じた」

菊地「えー」

秋元「というのは、秋元流冗句として、あの時に私もファンを信じた。だからかな、こうして戻ってこれたのは」

秋元「尤も菊地の方が凄いけどな。またAKBのオーディション受けにくるなんて、普通の人は考えない」

菊地「バカだからですよ。それしか出来ないんです」


103 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:11:26.30 ID:5vnBfCrU0
秋元「そう、菊地はバカだ。それが良いところなんだ。菊地はバカ正直に、自分の気持ちに正直になれる。そしてバカ正直に、ファンのことを信じられる――だからお前もガンバレ」

菊地「はい――」

秋元「いや、最近菊地、元気なさそうに見えてな・・・キャプテンとしてはやっぱ放っておけな・・・」

菊地「秋元さん!?」


104 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:12:21.29 ID:5vnBfCrU0
 ~休憩室にて~

秋元「はあ、すまんな菊地」

菊地「いきなり倒れてビックリしましたよ・・・」

秋元「とりあえず、私の言いたかったことはこんなところだ」

菊地「わざわざありがとうございます」

秋元「あ、それからもう一つ・・・菊地は怪しいと思わないか・・・」

菊地「怪しい・・・?」

 今まであくまで、軽い雰囲気で喋っていた秋元の声が一気に新妙味を帯びる。

菊地「怪しいって、何がですか・・・?」

秋元「いや、最近AKBにスキャンダルが多いと思わないか・・・いやAKB、に限らず」

菊地「ああ、大場美奈ちゃんとか、NMBなら吉田ちゃんとかでしたっけ? 確かに多いように感じますね・・・」


105 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:13:53.24 ID:5vnBfCrU0
秋元「そして、私の時も菊地の時も、何か可笑しくないか?」

菊地「? 何がですか?」

秋元「いや、これは私の野生の勘だけど・・・何か内部からバラされた感じが凄くするんだ・・・しかも最近のスキャンダルも週刊誌から、というよりネットから広がって大問題になっている。これに違和感を感じないか・・・」

菊地「・・・そういえば、少し。変な違和感が・・・」

秋元「うん、もちろん、裏切りがある、とかそういうことが言いたいわけじゃない。ただこれは私の思い過ごしだったらいいんだが・・・ごめん、変な話して。今の話は忘れて」

菊地「はい」

 こうして菊地の物語は終わるわけだが、第四回選抜総選挙にて地味ながら40位でアンダーガールズ入りを果たす菊地あやかの話である。
 柏木、渡辺とはまた違う、また違う道からAKBのセンターになろうとしている一人の少女の話である。
 バカ正直にファンのことを信じ続ける、一人の少女の物語であった。


107 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:16:23.24 ID:5vnBfCrU0
 ■エースとの決別2■

マネージャー(以下マネ)「・・・ということで、ゆきりんのソロデビューの日は○月。渡辺との直接対決は避けられたけど、CD発売日は渡辺ソロのCDの一週間後・・・比べられることは避けられないよ」

柏木「・・・分かってます」

マネ「キングレコードから発売。渡辺はソニーミュージックだからね・・・やはり、レコード会社も全力で渡辺に勝利しようとするだろう」

柏木「はい」

マネ「それでね、これは一つの提案だけど・・・」

柏木「はい?」

マネ「今回も指原先生が作詞して、曲のメロディーも大体決めているらしいんだけど、どうしても題名だけ決められないらしいんだ。そこで、指原先生はゆきりんに題名を決めて欲しいらしい」


108 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:17:29.17 ID:5vnBfCrU0
柏木「私に、ですか?」

マネ「そう。それで、最終調整に入るらしいから、今から歌詞が書いた紙と、曲が入ってあるCDを渡すから、今すぐここで題名を決めてくれないか?」

柏木「急ですね・・・分かりました」

 柏木はマネージャーから受け取り、イヤホンで音楽を聴きながら真剣そうな表情で歌詞を読む。

柏木「・・・」

マネ「どうだい・・・? 今日中に決まればいいから、後でメールでも」

柏木「いえ・・・決まりました」
 
 イヤホンを耳から外し。

柏木「題名は『センターは渡さない』です」



110 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:18:28.77 ID:5vnBfCrU0
 ~劇場の控え室にて~

 ――特段、考えて題名を決めたわけではない。
 というか只の直感。『センターは渡さない』という挑発的なタイトルであるが、別に渡辺を意識したわけでもない。
 たまたまアップテンポな曲調で、好きな人を渡したくない――あの人のセンターはきっと私――というような内容だったから、そういう題名にしただけ。
 腹黒の真骨頂でも何でもない。

渡辺「聞いたよ、ゆきりーん。私とゆきりんのCD発売日、一週間遅れらしいね」

柏木「まゆゆ・・・そうみたいだね、もう少しずらしてくれれば良かったのにね」

渡辺「ゆきりんには負けないよ!」

柏木「・・・! 私だって・・・」


112 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:19:26.76 ID:5vnBfCrU0
 ~劇場の控え室にて~

 ――特段、考えて題名を決めたわけではない。
 というか只の直感。『センターは渡さない』という挑発的なタイトルであるが、別に渡辺を意識したわけでもない。
 たまたまアップテンポな曲調で、好きな人を渡したくない――あの人のセンターはきっと私――というような内容だったから、そういう題名にしただけ。
 腹黒の真骨頂でも何でもない。

渡辺「聞いたよ、ゆきりーん。私とゆきりんのCD発売日、一週間遅れらしいね」

柏木「まゆゆ・・・そうみたいだね、もう少しずらしてくれれば良かったのにね」

渡辺「ゆきりんには負けないよ!」

柏木「・・・! 私だって・・・」


113 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:20:32.00 ID:5vnBfCrU0
 そう言い残して渡辺は去っていった。

宮崎「ああ言ってるけど、相当意識してるね、まゆゆ」

柏木「うわっ! ビックリした・・・みゃお・・・またお菓子食べてるの」

 後ろを振り返るとお菓子の袋を持つ宮崎の姿があった。

宮崎「チームBのエースとキャプテンだもんね。しかも発売日が一週間違い。これは意識したくなくても意識するわ」

柏木「・・・何か、レコード会社は対立項を作りたいみたい。エースとの決別・・・って笑わせるよね」

宮崎「・・・本当にそう思ってるの?」

柏木「えっ?」


114 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:21:19.85 ID:5vnBfCrU0
 ポテチを口に運びながら宮崎は続ける。

宮崎「いや、何でもない、今の忘れて! ねえねえ亜美菜~、その美味しそうなケーキ私にもちょうだ~い」

亜美菜「駄目~、これはなっちゃんに上げるんだから~」

柏木(凄い砂糖使ってそうなケーキ・・・色がアメリカだけど・・・)

 確かに――今までエースとキャプテン、そう言われ続けていた。
 しかし第三回総選挙にてその立場は逆転。4位柏木、6位渡辺――最早、選挙の順番だけ見るとエースでキャプテンは柏木なのだ。
 壇上でも行ったが、何故か雑誌の撮影の時も7人で切られることも多く――歯痒い思いをしている。


115 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:22:16.64 ID:5vnBfCrU0

柏木(やっぱりみんな気付いてるのか・・・これはチームBのエースとキャプテンの対決だって)

 といっても覚悟はしている。
 こういう茨の道を歩むことを決めたのだ。
 秋元康をセンターから引きずり落として、世間に本当のアイドルを分からせる。
 そのための茨の道。

柏木(・・・いよいよ明日はレコーディングだし・・・気合い入れないとな・・・)

柏木(それにしても問題はタイアップ。まゆゆは自身が主演するドラマの主題歌だけど、私の場合はいくつかのCM曲のタイアップ。ドラマのファンが買うことは期待できない。現代の音楽消費社会においてタイアップ先は重要)


116 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:23:36.21 ID:5vnBfCrU0
柏木(まあ・・・私が決められることじゃないから、マネージャーさんの手腕を信じるしかないんだけど・・・)

平嶋「ゆきりん」

柏木「ん?」

平嶋「ん、じゃないよ、もう少しで公演始まるよ。円陣やらなくていいの?」

柏木「ああ、ごめんごめん。それじゃあみんな円陣やるから集まってー」

 柏木の元へチームBのメンバーがぞろぞろと集まってくる。

柏木「それじゃあ、いつものいきます! いつも感謝――」


117 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:24:28.58 ID:5vnBfCrU0
 ■埋められない差■

渡辺「いよいよだね・・・」

平嶋「うん」

 ここはレッスン場。
 いつもと変わらない場所で、異質な雰囲気。

宮崎「みんなおはよーう! あれ、何でみんなそんなにピリピリしてるの。自分らしく生きようよ!」

平嶋「みゃお、忘れたの・・・今日は」

 元チームA――小嶋陽菜がレッスンに参加する日。

平嶋(・・・いよいよ今日からか・・・)


119 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:25:37.45 ID:5vnBfCrU0
 平嶋夏海――小嶋陽菜と同じ一期生のメンバーである。
 謂わばスタートラインは全く同じだったのである。
 しかし――平嶋は最初からバックダンサーとして宿命づけられ、逆に小嶋はAKBの顔ともいえるべきポジションに位置している。
 最初は少しだったかもしれない。しかしそれは今では埋められない差として現れている。

平嶋(そうだな・・・こじはると一緒に、こうやって公演のレッスンするのって、6年前以来くらいなのかな)

 6年前――平嶋はチームBのサポートメンバーから、チームAに移籍した。
 人はそれを左遷と呼び、平嶋もその二文字を意識せざるにはを得なかった。

平嶋(あの頃は本当に嫌だったな・・・かなり泣きそうだった・・・)


120 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:26:10.11 ID:5vnBfCrU0
 当時、14歳の平嶋にとってはそれは「AKB卒業」も考え得る出来事だったかもしれない。いや現に少しくらいは考えただろう。
 しかしその後「このままではいけない」と自分を奮起させることによって、ここまで頑張ってこれた。
 その結果が、AX2008においての初日1位なのだ。
 3位でも「てもでもの涙」がランクインし、チームBが最強のチームだと照明することが出来たのだ。

渡辺「・・・きた」

 いつもの気怠そうな感じで小嶋、レッスン場に到着。

小嶋「・・・はい、埼玉県から来ましたこじはること小嶋陽菜です」

 小嶋の言葉により、笑みがこぼれるチームBの面子。

平嶋(何も変わらない・・・そう、たった一人、変わったところで)


122 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:27:22.76 ID:5vnBfCrU0
こうしてレッスンが開始した。

小嶋「はあはあ・・・」

平嶋「こじはるー」

小嶋「あっ、なっちゃーん」

平嶋「初めてのチームBのレッスンだったけど、どうだった? 覚えられそう?」

小嶋「うん・・・何というか独特なステップだね。何というかぴょんぴょん飛び跳ねるような」

平嶋「ははは、これがチームBのダンスだよ。妹のような、おもちゃ箱のようなチーム、っていうのがチームBのウリだからね。チームAとは少し違うかもしれない」

小嶋「うんそうだね・・・それにしても、またなっちゃんと、こうして公演のためのレッスンが出来るなんてね」


123 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:28:13.10 ID:5vnBfCrU0
平嶋「・・・そうだね・・・」

小嶋「それにしても・・・気になるのは・・・」

平嶋「ん?」

小嶋「チーム4も、新生チーム4になってから今日が初めてのレッスンだよね。あっちゃん大丈夫かな」

平嶋「ああ・・・」

 そうなのだ、現時点で最も心配なメンバー前田敦子。
 世間ではもしかしたらあまり知られていないかもしれないが、彼女は人見知りで他人に興味がない。
 そんな少女が、チーム4に、誰も初期メンがいない中でやっていけるのだろうか。

平嶋「あっちゃん、大丈夫かなー?」


124 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:29:09.06 ID:5vnBfCrU0
小嶋「んー、まあ何とかなるんじゃない。あっちゃんああ見えて強い子だし」

 確かに、前田敦子の精神力は強い。それは平嶋も認めるところだ。
 しかし今回は勝手が違う。今回は一人で乗り込むのだ。
 チーム4のメンバーもまるで腫れ物を触るように扱ってしまうだろう・・・口では何というか分からないが。

柏木「じゃあ、休憩終わり! 最後にもう一回通してみるからみんな立ってー」


126 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:30:27.23 ID:5vnBfCrU0
小嶋「あー、始まるみたいだよ、なっちゃん。いこ」

平嶋「・・・うん!」

 チームBの独特なステップ。
 小嶋は「ぴょんぴょん飛び跳ねるような」ダンスと形容した。
 ――これは余談であるが、平嶋は背が低く、その上でバックダンサーなのでどうしても目立つためには「ぴょんぴょん」飛び跳ねるようなダンスを習得するしかなかった。
 その平嶋はチームBにきて、ダンスが出来ない子達に居残りで一緒にダンスを教えることになるのだが――
 そんな平嶋に敬意を払って、チームBのみんなは「ぴょんぴょん」飛び跳ねるようなダンスをした――
 という話もある。
 平嶋は埋められない差と言ったが、最初から差なんてなかったのかもしれない。


131 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:36:26.18 ID:5vnBfCrU0
 ■エースとの決別3■

柏木「まゆゆのソロデビューの曲の売上は初日10万枚・・・このことについて愛ちゃんはどう思う?」

多田「予想通り・・・ってところかな。この初日10万枚でほぼオリコン1位は確実。この10万枚という数字は前田さんの『Flower』とほぼ同じ売上水準だね・・・」

柏木「予想外だった・・・せいぜい売れて8万枚だと思っていたのに」

 暗い表情を見せる柏木。

柏木(ドラマの主題歌とはいえ、テレビ東京の深夜にやるドラマ・・・そんなにいかないと思っていたのに・・・まゆゆを侮っていたかもしれない)

多田「ドラマでの演技力も好評らしいしね。元々、マジすか学園でも演技力は勝算されていたまゆゆだから有る程度予想していたけどね・・・」

柏木「ねえ愛ちゃん・・・」


132 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:37:34.32 ID:5vnBfCrU0
多田「ん?」

柏木「私、本当に勝てるのかな・・・」

 柏木は不安を口にする。

多田「どうしたの、いきなり弱気で・・・」

柏木「現代の音楽業界で、タイアップ先は命ともいえるぐらい重要。相手はドラマのファンも取り込めるドラマ主題歌で、私はCMのタイアップ。しかもそんなに有名企業でもないから、バンバンCMが流れるわけでもない。もしこれで負けたら・・・」

多田「・・・弱気になっちゃ駄目だよ・・・」

柏木「えっ?」

多田「1位になるって決めたんでしょう!? じゃあ、弱気になっちゃ駄目。相手がやすすとか、前田さんなら分かるけど、今までの最高順位がたかが4位のまゆゆ。このまゆゆに勝たないと1位なんて夢のまた夢。鼻で笑われちゃうよ・・・」

柏木「・・・そうだね、愛ちゃん、ありがとう。弱気になってた」

 何か吹っ切れたような表情になった柏木は立ち上がって。


133 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:38:41.68 ID:5vnBfCrU0
柏木「・・・じゃあ、今日の公演もがんばろ! いくらテレビでのゴリ推しが重要とはいえ、やっぱり公演は大事にしていかない既存ファンが離れていくから。ってか愛ちゃんはチームAだから今日はないか・・・」

多田「・・・また一緒に公演したいですね」

 そうだね、と返事をする柏木。
 決して生返事ではない。
 かつて最弱チームとは言われ、バカにされ続けてきた旧チームB。
 パジャマドライブ、という神公演にも巡り逢えて勢いに乗ってきたところで、エース格の「菊地あやか」の解雇によって、満身創痍の状態に立たされていた旧チームB。
 その旧チームB時代、柏木と多田は同じチームにいた。


134 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:39:38.70 ID:5vnBfCrU0
柏木(あやりんが解雇された翌日の公演・・・足が震えて舞台に立つのが嫌で嫌で仕方がなかったな)

 確実に、スキャンダルを犯さなければ最低でも選抜の常連にはなっていたと考えられる菊地あやか。
 かつてライバル関係とも言われた二人が柏木と菊地なのである。
 そんな、いや「パジャマドライブ」の主役とも言える菊地が抜けたステージにどんな顔で立てばいいのか・・・。

柏木(あの時なっちゃんが一声かけてくれなかったら、もしかしたら公演が中止になっていたかのかもしれない。それくらい・・・あの時は、やばかった・・・)

 菊地解雇に佐伯などの怪我による卒業で旧チームBはボロボロ。
 しかしそんな旧チームBであるが、AX2009にて「初日」が1位になった時の感動。

多田「もう、こんなに人気になっちゃったら、公演曲が1位になるなんて考えられないかもね。去年もチームB推しの5位が最高位だったし・・・シングル曲を抜かない限りは」


135 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:40:43.62 ID:5vnBfCrU0
柏木「最後の公演曲1位・・・だったのかもしれないね」

多田「・・・まあ、私は・・・チームAでも楽しいよ。だからゆきりんもチームBのキャプテンとしてみんなを引っ張っていって! 言わなくても分かっていると思うけど」

柏木「うん、分かってる!」

 余談であるが、AX2008の「初日」披露にて、一番顔をくちゃくちゃにして泣きながら踊っていたのは紛れもない多田愛佳である。
 組閣祭りの時、欠席していたため多田のプラカードをスタッフが持っていたのだが、そのプラカードを大事そうにいつまでも抱きかかえていたのはチームB不動のエース、渡辺麻友である。
 そして、組閣祭りが起こった後でも、22位にランクインしヘビーローテーションのアンダーガールズでひっそりとセンターを務めた多田愛佳。
 そんな多田に柏木が信頼を寄せるのも無理もない話であった。


136 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:41:36.97 ID:5vnBfCrU0
 ~公演中、MC~

柏木「はい。続けて3曲聴いていただきましたが、いかがだったでしょうかぁああああー!」

渡辺「ゆきりん! それ、たかみなの真似!」

柏木「ごめんごめん、ちょっとやってみたくて」

 劇場内に温かい笑いが起こる。

柏木「それじゃあ、メンバーの自己紹介をしたいと思います! じゃあ、まずは亜美菜から!」

亜美菜「はい! 愛されたい、愛したい、でもやっぱり愛されたい、チームBの佐藤亜美菜で~す」

柏木「はい、愛されたい、愛したい、でもやっぱり愛されたい、チームBの佐藤亜美菜で~~~す」

亜美菜「違うでしょ! というかそれは喧嘩売られてるのかな?」


137 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:42:15.52 ID:5vnBfCrU0
柏木「違うって! リスペクトだって!」

小林「本当だよね、ゆきりん。本当に、愛されたい、愛したい、でもやっぱり愛されたいだもんねー」

亜美菜「てめえは黙れ」

 いつもの何ともいえない雰囲気が劇場を包む。

亜美菜「そうそう。そう言えば、ゆきりん。ソロのCDが一週間後くらいに発売らしいじゃん」


138 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:44:26.81 ID:5vnBfCrU0
柏木「そうなんですよ! 初のソロデビューシングル「センターは渡さない」がいよいよ○月□日リリースです! ゆきりんファンのみなさんは勿論、買ってくれるよね!」

渡辺「いやいや! まゆゆのソロデビューシングル、昨日発売だったんですけど、みなさん買ってくれましたかー!」

増田「みなさん! 2010年11月10日発売、「Stargazer」買ってくれましたかー」

亜美菜「たこ焼きでも食ってろ。というわけで、私聴いてないけど、どっちも良い曲だよねー」

柏木「ちょいちょーい! よくCMで流れてるでしょ!」

小林「どっちが勝つんだろーね! まゆゆとゆきりん、売上的には!」


139 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:45:29.64 ID:5vnBfCrU0
 みんなが分かっていたことを口にする小林。
 劇場内は何ともいえない空気に包まれた。
 後に「KK、KY事件」と言われる「ロス事件」に負けずとも劣らない事件である。

渡辺「・・・」

柏木「そうですねー! もちろん、ゆきりんファンは私のCD買ってくれますよねー! 私を勝たせてくれますよねー」


140 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:46:49.47 ID:5vnBfCrU0
 柏木のまさかの挑戦状にざわつく劇場。

渡辺「え・・・」

柏木「まゆゆ」

渡辺「あっ! いやいや、ゆきりんなんかに負けてませんよね! 2億人はいるかと思われるまゆゆのファンは私を勝たせてくれますよねー」

柏木「ちょいちょーい! 何で日本人の人口超えてるのよ!」

 ああ、そんな流れね――という空気になり、笑みが零れ出す劇場。

亜美菜「はい! というわけで、面白いですねー。まあ私は聴いてないけど、どっちのCDの曲もいいので、チームB推しのみなさんは二つとも買ってくださーい!」

増田「有華推しのみんなは「Stargazer」を・・・」

柏木「はい、では次の曲に移りたいと思います!」


141 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:47:37.40 ID:5vnBfCrU0
 ~控え室にて~

柏木「ふー、今日も良い汗かいたー」

石田「今日は微妙な雰囲気を何とか笑いにつなげることが出来たねー、ゆきりん」

柏木「はるきゃん・・・」

 劇場が終わり、ペットボトルを片手に返事をする柏木。

柏木「まあ、香奈のまさかの発言にはビックリしたけど・・・」

石田「あのままじゃ、劇場に申し訳ない空気になって終わりそうだったから・・・」

柏木「うん・・・」


142 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:48:31.30 ID:5vnBfCrU0
柏木(想定外のことだったとはいえ、今日は儲けものだった・・・ドラマのファンの支持層が考えられるまゆゆのCDだったけど、私のファンが買ってくれるように仕向けることができた)

柏木(もちろん、条件は五分だけど・・・一番売れ行きが良いかと想定される初日だけど、まゆゆは潰れていて私はまだ残してある・・・有利な方は私・・・)

小森「本当ですよね」

 一体どこからやって来たのか分からなかったが――いきなり後ろから声をかけてくる小森。

小森「やっぱりもう少し空気を読めるようになって欲しいですよね。やっぱり香奈さんはバカだから、そういうことも分からないのでしょうか」

柏木(何で先輩相手にそこまで言えるの小森・・・というかあんたもあんま人のこと・・・)


143 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:49:04.58 ID:5vnBfCrU0
小森「まあ、次からは確かこじはるさんが公演初デビューですよね。こじはるさんは頭の良い人ですから、やっと天才小森と話を合わせられる人がやってくるかと思うかと胸が熱くなります」

柏木「(まあ、確かにあんたとは話合いそうだわ)そうだね・・・」

 適当に返事をする柏木。
 面倒臭くなってきたからである。

柏木「まあこの調子で次の公演も頑張りま」

平嶋「大変!」


144 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 01:49:43.56 ID:5vnBfCrU0
 突然、控え室のドアが開けられ平嶋が息を荒くして入ってくる。

柏木「どうしたのなっちゃん・・・」

平嶋「はあはあ、大変・・・」

小森「どうかしたんですか・・・」

平嶋「明日の公演って新チーム4じゃん・・・そのチーム4なんだけど・・・」

 息を落ち着かせる平嶋。

平嶋「あっちゃんが失踪して、まだ見付かってないみたい・・・」


191 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:22:41.14 ID:5vnBfCrU0
 ~新生チーム4、公演2時間前~

大場「まだ前田さんに連絡が取れない!?」
島田「うん、取れない・・・実家の方にも連絡したけど全然。一応指原先生にも相談したけど・・・」
大場「何て言ってた?」
島田「「自分達で乗り越えなさい」だって・・・最悪、研究生をアンダーとして呼ぶしかないみたい」
大場「そう・・・」

 といっても事前予告では「前田敦子」は出席になっていて、ファンの殆どもチーム4としての「前田敦子」が見たくてやって来るののであろう。
 もしそれが当日になっていきなり「前田さんは欠席です」なんて・・・恐ろしくて想像もしたくない。

大場(前田さん、何で・・・)


192 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:23:38.05 ID:5vnBfCrU0
 チーム4の中で一番慌ててるのが大場美奈――チーム4のキャプテンを任された若き少女である。
 といってもキャプテンを任されてちょっと経った時期に、彼女はとある事件を起こして謹慎させられている。
 その時に、キャプテン代行として頑張ってくれたのが。

島田「とりあえず、私、もう一回電話してみる」

大場「うん、はるぅよろしく頼んだ・・・私も心当たりのあるところ片っ端から連絡してみるから」

 島田晴香――はるぅと呼ばれる存在である。
 キャプテンを任された大場であったが、本人も最初は島田がキャプテンになるものだろう、と思っていた。
 しかしチーム4が立ち上げられる時にキャプテンとして名前を呼ばれたのは「大場」――。


193 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:24:26.55 ID:5vnBfCrU0
大場(本当に私、キャプテンとして大丈夫なのかな・・・)

 大場が苦悩するのも無理はない話である。
 研究生時代、よく9期生のメンバーを集めてくれたのは島田であり、当然チーム4という先輩が誰一人いないチームではキャプテンを務めるものだと思っていた。
 それでも、大場は任されたからにはちゃんとやろう、と思っていた――そう思っていた時期にあの事件である。
 そして謹慎が解けて、キャプテンにも復帰して、1からやり直そうと思っていた矢先に――

大場(確かに、レッスンも休みがちで誰とも喋っているのを見たことがない・・・だから、この状況になることも考えられた。私の責任だ・・・)

 前田敦子、失踪――。
 本人がどう思おうとも、エースの看板を背負わざるを得ない少女。
 そんな少女が――公演前にいなくなるなんて――。

大場「・・・取り敢えず、選抜常連のゆいちゃんにも連絡してみて・・・」

市川「美奈さん、美奈さーん」


194 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:25:21.58 ID:5vnBfCrU0
 カシューナッツ片手に走ってくる市川。

市川「前田さんの居場所が分かりましたー」

大場「ホント!?」

市川「はい。たかみなさんに今さっきメールが来たらしいんですけど、何でも「東京ドーム」に来てくれ、とのことらしいです」

大場「東京ドーム・・・」

市川「はい」

大場「・・・取り敢えず東京ドームまで行こう! みおりん、チーム4のメンバーを出来るだけ集めて」

市川「はい!」

 東京ドーム――AKBは東京ドームで公演することが夢なのだが、未だにそれは実現していない。
 そんな夢の場所に――前田はいる――。

大場(前田さん、一体どういうつもり・・・)


195 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:26:13.87 ID:5vnBfCrU0
 ■それでも7人だけが見守ってくれた■

 ~東京ドーム行くまでの、電車内~

高橋(あっちゃん、一体何を・・・)
 
 高橋は焦っていた。
 握りしめている水道橋までの切符はもうボロボロで、おそらく改札口には通らなくなっているだろう。

高橋(確かにチーム4に移籍になってから、悪い予感はしていた・・・でも、あっちゃんなら・・・あっちゃんなら耐え抜いてくれると信じていた)

 しかし結果は最悪――後2時間で公演が始まるというのに、前田は見付かっていない。

高橋(・・・取り敢えず、あっちゃんに会ってからだ。会ってから・・・)

 そこで言葉が詰まる高橋みなみ。


196 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:27:03.03 ID:5vnBfCrU0
 高橋と前田はAKBの一期生として、最初から頑張ってきたメンバーである。
 当然、お互い立ち上げ時の苦労も分かっているし、分かるからこそよりによって「チーム4」に移籍された前田の気持ちが――分からなくもない。

高橋(そうだよな・・・左遷にしか思えないよな・・・チームB立ち上げ時に、シンディとかなっちゃんが移籍された時も、人は誰も左遷と呼んだ・・・あの時でさえ、凄い雰囲気だったのに、ましてやあっちゃん一人で・・・)

 顔を合わせて何と言えばいい。
 チーム4には一期生は一人もいなくて、チーム4のメンバー達にとっても前田敦子という存在は意識せざるにをえないだろう。

高橋(私は元々キャプテンには向いてなかったんだ・・・メンバー、一人を、しかもエースの一人をこんな目に遭わせるなんて)

 自己嫌悪に陥る高橋。
 かなり早い段階からAKB全体のキャプテンを任されていた高橋。
 いや、それどころかSKE、NMB等の48プロジェクト全てのキャプテンと言っても過言ではない高橋みなみ。
 総勢210名の人生を背負うには、あまりにも高橋は若すぎた。


197 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:27:51.21 ID:5vnBfCrU0
高橋(一体、あっちゃんに何を・・・)

 高橋はAKBに入団当時から色々と伝説が付きまとっている。
 何でも「AKBに入らせたいがために、エイベックスの最終オーディションを落とされた」。
 言い訳MaybeのPVに全然映っていなかった佐藤亜美菜を慰めた話。
 友達がいない峯岸みなみののことを思って、卒業式に出席したという話。
 努力と根性を至上とするAKBの中で、頑張りやと呼ばれている数少ないメンバーの一人であること。
 AKB48とは高橋みなみのことである――もしかしたら、最早形骸化しているレコード大賞をなかなかAKB運営が撤退しなかったのは、高橋みなみの話があるのかもしれない。

高橋(私は今まであっちゃんのことを分かった気になっていた・・・1期生だし、付き合いも長いから誰よりも分かっているつもりになっていた・・・でも、私は何も分かっていなかった)


198 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:28:27.44 ID:5vnBfCrU0
 前田敦子――謎が多いメンバーの一人である。
 もし、AKBが登場する前に、アイドルの条件は? と聞かれると、大概の人は「ルックスも良くて、歌もダンスも上手くて、みんなを引っ張っていけるような存在で、明るくて社交的な人間」というイメージを思い浮かべるだろう。
 しかし、前田敦子は悉くアイドルとしての条件を満たしていない。
 ルックスは人それぞれ評価すると思うが、歌もダンスも普通で、他人に興味がないためリーダーシップなんて発揮できない。性格は人見知りで、お世辞にも社交的とは言えない。
 そんな前田敦子がどうしてAKBの看板を背負う一人になっているかというと――。

高橋(それは精神力の強さ・・・あっちゃんはどんなにネットで叩かれていても「知らない」の一言で済ませ、どんなに叩かれても食が細くならない。有る意味、鈍感とも言えるくらいの精神力の強さを持っている)

 もちろん、柏木が考えたように前田の長所というものはいくらでも挙げられるのだが――とにかく何が言いたいのかというと。

高橋(あっちゃんは・・・決して、今までのアイドル像とは違う、新タイプのアイドルだということ・・・)


199 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:29:22.29 ID:5vnBfCrU0
 今までのアイドルは「とにかくよく分からないけど、今が楽しくて最高! みなさん盛り上がっていきましょう!」というような曲調が多かった。モーニング娘。の「LOVEマシーン」が最たる例である。
 しかしAKBの歌詞はよくよく聴いてみると後ろ向きな内容や、泥臭く努力するような内容が多い。
 また毎日公演をする関係で、一回聴いてしまって飽きてしまっては駄目なので、何回も聴いている内によく聞こえてくるような内容の歌が多い。
 その最たる例がメロディラインがぐちゃぐちゃで、一まとまりになっていない井上ヨシマサ作曲の「10年桜」や「Everyday、カチューシャ」なのである。
 今までと明かに違う、新タイプのアイドルには、新タイプのエースが必要であった――前田敦子はその一人だった、ということ。

高橋「着いた・・・!」

 駅に到着した瞬間、走って改札口まで向かう高橋。案の定、改札には通らなかったので駅員のところまで行ったが――

高橋「あっちゃん・・・」


200 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:30:13.30 ID:5vnBfCrU0
 東京ドームまで全力疾走。
 イベントも何も行われておらず、人も閑散としている東京ドームの前に前田敦子はいた。

前田「たかみな・・・」

高橋「あっちゃん・・・どうしたんだよ・・・みんな心配してるよ。後2時間で公演が始まる・・・早く劇場に向かわないと」

前田「嫌だ」

高橋「そんな、わがまま・・・」

前田「わがまま・・・? たかみなに何が分かるの?」

 声を荒げる前田――珍しく。

前田「明かにこれは左遷。もう人気の絶頂と見た運営が、私をチーム4へ移した。そりゃそうだもんね、もう終わりそうな私より、15歳で次世代のエースと呼ばれている珠理奈に譲るのは当然の話・・・何も可笑しいことではない」


201 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:31:19.81 ID:5vnBfCrU0
高橋「・・・」

前田「私はもう要らない存在・・・だから私が公演に行かなくても別にいいんじゃない?」

 自暴自棄になっている、高橋はそう感じた。

高橋「要らなくなんてない・・・ファンのみんなは待っているよ、だから・・・」

前田「最初は7人だけだったね・・・」

高橋「え」

前田「最初は7人だけ・・・AKB初日の公演、関係者を除いたら一般のお客さんは7人だけ、という状況だった。そんな中で私達は踊り続けた。歌い続けた」

前田「だけどチーム4は最初から満員の、最初から国民的アイドルになっている劇場の舞台しか知らない。そんな子達とどうやって踊っていけばいいの? あの頃のことを何も分かっていない、あの子達とどうやって・・・」

 前田の目にはうっすらと涙が浮かんでいるようにも思える。
 無理もない。チームAというのはAKBそのものであった。だから前田敦子、高橋みなみ、小嶋陽菜、篠田麻里子などの立ち上げ当初のメンバーが一番多い。
 
前田「分からせたかった・・・あの頃、「絶対失敗する」と言っていた大人達を見返したかった・・・」


202 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:32:18.12 ID:5vnBfCrU0
高橋「あっちゃんは負けず嫌いだしね・・・」

前田「別にチーム4のメンバーが頑張っていない、というつもりはない。だけど「AKBを分からせる」ために頑張ってきた私達と、「AKBを飽きさせないようにする」ために頑張っているあの子達とでは頑張るベクトルが違う、ということ」

高橋「・・・」

前田「だから、もう私は良い。もう疲れた・・・もう引退してペットショップでも経営しようかと」

高橋「それは違うよ、あっちゃん」

前田「えっ」

高橋「チーム4のメンバーも、私達とやっていることは一緒だよ、あっちゃん」


203 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:33:21.76 ID:5vnBfCrU0
前田「何を・・・」

高橋「確かに私達は、「これから来る者たちへ成功の前例」を作るために頑張ってきた。でもチーム4はもう成功している中で頑張るのだから、そこに温度差を感じるのも無理はないと思う。けどあっちゃん、あっちゃんは旧チームBを覚えている?」

前田「・・・うん、なっちゃんとかが移った時だよね」

高橋「そう。状況は全く一緒だったと思う。チームBも今となっては、ちゃんとしたチームだったと思うけど、最初の頃は今のチーム4のようなものだったと思う。現になっちゃんも「最初はあまり印象は良くなかった」と言っている」

高橋「けど、なっちゃんはそこで腐らなかった。自分を奮い立たせて、ダンスが出来ないメンバー達にダンスを教え、学業も頑張った。その結果が、「初日」くらいにやっと何とか公演が出来る状態まで持っていって、その結果がAX2009の大勝だったんだ」

前田「・・・私はなっちゃんと違うよ・・・なっちゃんは若かったけど、私はアイドルとしてはもう若くない・・・もう未来がないんだよ」

高橋「いや、まだあっちゃんは20歳だ。麻里子様は25歳までやっているし、にゃんにゃんも23歳だ――今がピークだと思ってはいけない。麻里子様は25歳にして初めてセンターを務めたんだよ?」


204 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:35:05.90 ID:5vnBfCrU0
前田「・・・そういう考え方も出来るかもしれない。けど、私は、私はなっちゃんと違うんだよ。なっちゃんみたいに、そんなこと出来るわけがない」

高橋「そう、あっちゃんはなっちゃんと違う。違う人間であり、同じ道を辿るなんて分からない。けど、あっちゃん、今のチーム4のメンバーはAKBの初期の頃に似ていないか?」

 高橋は言う。

高橋「今のチーム4も「何で出来たんだ?」「どうせ2軍だろ」「どうせこのままじゃ失敗する」と言われている。私達もモーニング娘。とかのアイドルの2軍でしかなかった」
高橋「しかしそれを・・・世間の大人達を見返してやりたかった。そのために頑張ってきた・・・あっちゃん、今のチーム4と当時のチームAの状況は何処が違う・・・?」

前田「それは・・・」

高橋「頑張ってきたけど、独占禁止法に引っかかってレコード会社と揉め、CDを店頭に飾らせてもらえなかったあの頃。将来のエースである菊地あやかちゃんが解雇されて、世間からは好奇の目を向けられていたあの頃・・・あの頃、AKBは下手すれば終わっていた」

前田「・・・」

高橋「今のチーム4も、立ち上げ早々、みなるんが問題起こして謹慎になってしまい、ファンの人々からは「どうなるんだろ」という好奇の目を向けられている。あの頃の状況と非常に似ている・・・もちろん、違うところもたくさんあるけど」


205 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:36:24.80 ID:5vnBfCrU0
前田「・・・」

高橋「なあ、あっちゃん。どうして、あやりんはAKBに戻ってこれたと思う!? どうして、亜美菜は言い訳MaybeのPVで全然映ってなくて泣いたと思う!? どうして、なっちゃんはあの頃頑張ってこれたと思う!? ・・・それはみんなファンのためを思ったから」

高橋「あっちゃんにはファンがたくさんいる。私なんかよりも、たくさんのたくさんの人の期待を背負っている。もちろん、いつかは卒業という道を辿るだろう。でも今はその時なのかな、このままで終わっていいのかな?」

高橋「チームAとか、珠理奈に負けたままで、前田敦子のAKBとしての人生は幕を閉じていいのかな?」

前田「・・・ふ」

 笑みが零れる前田。

前田「たかみなはいつもそうだね・・・いつも私のことを気にかけてくれる」

高橋「・・・」

前田「・・・分かったよ・・・いや、まだ分からないけど・・・終わらせることはいつでも出来る、だから今じゃなくても良いよね」

高橋「それじゃあ・・・」

前田「うん、公演に行く」


206 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:37:32.14 ID:5vnBfCrU0
 高橋の表情が明るくなる。

高橋「あっちゃん・・・」

前田「といっても、やばっ! 後1時間で開演じゃん! たかみな、タクシーを捕まえるよ!」

高橋「うん・・・」

大場「前田さーん!」

 前田と高橋の元に、大場を始めとするチーム4のメンバーが集まってくる。

前田「みなるん・・・」

大場「前田さん! 公演に来てください!」

島田「そうですよ、前田さんがいないと始まらないですよ!」

山内「前田さんがいないと、ファンのみなさんが納得しませんよ!」

大場「そうそう! 島田のうるさいMCだけじゃ、納得して帰りませんよ!」

島田「そうそう・・・って、えー!?」


207 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:39:07.21 ID:5vnBfCrU0
前田「大丈夫。公演に行くよ。ちょっと風に当たりたくなっちゃっただけ」

大場「本当ですか!」

前田「うん、そうと分かれば早く劇場に向かわないと!」

大場「はい!」

 チーム4のみんなと走って劇場まで向かおうとする前田。

前田「ねえ、たかみな!」

 前田はその前に、高橋の方を振り返って。

前田「最初は誰も期待していなかったよね・・・「最初は誰も期待してない、22粒の種だった、いつかは一面花咲く日が来るまで」・・・私、チーム4の一面に花を咲かせる日まで頑張るよ・・・チームAなんかに負けないんだからね!」

高橋「おお!」


208 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:39:54.25 ID:5vnBfCrU0
前田「じゃあたかみな、ありがとう! またね!」

高橋「また! ・・・またか・・・」
 
 さようならじゃない、再会の時を願う挨拶。
 背中が小さくなっていく前田とチーム4のメンバーを見ながら高橋は思う。
 AKB再生とはこういうことだったんだ。みんなが初心を思い出して、ここが0だと考えもう一度頑張っていこう、という意味。
 あの頃、ボロボロと化していたAKBを再生したのは、当時11歳の松井珠理奈であった。
 だからもしかしたら指原先生は第二の松井珠理奈にしたいのではないか・・・そんなことも思ったりする。

高橋「じゃあ、私もレッスンがあるし戻るか・・・」

 148㎝。
 そんな小さな少女であるが、背負っている人間の数はあまりにも多かった。


209 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:41:17.54 ID:5vnBfCrU0
 ~新生チーム4、初公演~

大場「・・・というわけで、これで新生チーム4の公演は終わりですが、いかがだったでしょうか!」
 
 チーム4の公演も終わり寸前。

大場「では今日もお別れということで、挨拶を・・・」

 みんなが一直線になって、手を繋いでやるいつもの挨拶――。

大場「せーの・・・」

前田「ちょっと待ったー!」


210 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:42:03.20 ID:5vnBfCrU0

 突然、前田が大きな声を出す。

大場(えっ・・・今日は別に誰かの生誕祭っていうわけでもなければ、別に何か聴いていたわけでも・・・)

前田「すみません。みなさん・・・本来はここで終わりなのですが、もう1曲だけ、もう1曲だけ私のわがままで、もう一曲だけやらせてください!」
 
 前田の意外な言葉で、会場のボルテージが最沸騰をする。

大場「前田さん・・・」

前田「(小さな声で)大丈夫・・・音響さんとは話を合わせておいたから」

前田「それでは聞いてください! チーム4で「走れペンギン」!」


211 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:42:34.93 ID:5vnBfCrU0
 レッスンにほとんど参加していなかった前田であったが――チーム4「走れペンギン」――大場の目から見て完璧に踊りきっていた。

大場(凄い・・・一体、どこでそんなに練習を・・・)

 ポジションも何も決めていない。
 しかしみんなは分かっていた。何も言わなくても分かっていった。
 この曲のセンターは前田敦子なのだ、と。
 
~♪ 
走れ!ペンギン 
動かなくちゃ始まらない、前に出ろよ 
走れ!ペンギン 
そこにいたって恋を手にするのは一等賞だけ 
センターを目指すんだ
♪~


212 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:44:01.73 ID:5vnBfCrU0
 ■???■

峯岸「そう・・・新生チーム4の公演は大成功。あっちゃんも楽しそうにしていたか・・・」

??「といっても表情を作るのが上手い前田さんですからね。演技という可能性も・・・」

峯岸「いや、それはないでしょう・・・」
峯岸(たかみなに聴いたら、あっちゃんは1、2時間前まで公演に出ようか迷っていたらしい・・・だから、公演に出ない選択肢もあった・・・なのに公演に出たということは)
峯岸「想定外ね・・・まさかあっちゃんが潰れないなんて」


213 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:45:14.06 ID:5vnBfCrU0
 所謂、神8――現実の世界では、神7と呼ばれる神の7人――その一人が減らない、ということは競争の激化は予想された。

峯岸「まあとにかく・・・進めていた例の計画・・・実行に移して」

??「いよいよ始まるんですね」

峯岸「そう・・・最悪、しなくてもいいかな、って思ってたんだけど、あっちゃんが潰れないと聞いたらやらざるを得ないわ」

??「・・・」

峯岸「どうしたの?」

??「いえ、大丈夫です」

峯岸「それじゃあ、頼んだわよ。私が神の一人になるのはあなたに掛かっているわよ。頑張りなさい」


214 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:46:21.58 ID:5vnBfCrU0
 ■エースとの決別4■

平嶋「いよいよ、今日分かるね・・・」

柏木「うん、今日・・・」

 劇場の控え室。
 公演を前に柏木は真剣な表情で携帯を見ていた。

柏木(今日は私のCDの初週売上が分かる日・・・まゆゆのCDの売上は結局、200591枚だったから、それを上回っているか・・・)

 不安はある、いや逆に不安しかないといえるだろう。
 初日の売上は10万枚でほぼ互角。その後の推移もほとんど一緒であった。若干渡辺が上回っているくらいで。
 発売する前にも、テレビに披露したりして宣伝をしておいた。やるべきことはやった。

柏木(後はこれが凶と出るか吉と出るか・・・)


218 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:58:30.27 ID:5vnBfCrU0
 その時、柏木の携帯が震えた。
 
柏木「マネージャーさんからだ・・・はい、もしもし」

マネ「あっ、ゆきりん。売上分かったよ」

柏木「本当ですか!?」

 待ってました、と思う気持ちが半分と、聞きたくない、と思う気持ちが半分。
 流石に弱気になる柏木。

柏木「それで売上は・・・」

マネ「おめでとう。201209枚・・・オリコン1位も確定、僅差だったけど何とかまゆゆに勝ったよ・・・」

柏木「・・・はぁー!」


219 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 22:59:20.43 ID:5vnBfCrU0
 思わず安堵の息が出る柏木。

柏木「勝った・・・」

マネ「うん、明日のニュースとかでも多分このことが取り上げられるけど・・・インタビューとか受けたら、変な発言しないでね」

柏木「はい、抜かり有りません」

マネ「そう・・・じゃあ、また掛けるから」

 ピッ、携帯が切られる。

柏木「ふぅー」

平嶋「この調子じゃ勝ったみたいだね・・・おめでとう、と言っていいのかな? 一応」

渡辺「ゆきりん!」


220 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:01:23.09 ID:5vnBfCrU0
 後ろから抱きついてきたのはエース渡辺である。

柏木「まゆゆ・・・」

渡辺「おめでとう! マネージャーさんから聞いたよ。ゆきりんが勝ったって・・・やっぱり総選挙4位は違うね、やっぱり勝てなかったか・・・」

柏木「ありがとう・・・」

渡辺「それじゃあ、今日の公演も頑張ろうね!」

 それだけを言い残して去っていく渡辺。

平嶋「・・・ああは言っているけど、まゆゆ、相当悔しいだろうね。ほら、あの子も負けず嫌いだから」

柏木「うん・・・」

 第二回総選挙時、高順位ながら「今の現状には満足していません!」と涙ながらに叫んだ少女。
 そんな少女が、今の結果に満足しているはずがない。

柏木「・・・とにかく、今は公演をがんばりましょう! みんな、集まってー! そろそろ行くよー」


221 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:02:55.85 ID:5vnBfCrU0
 ~翌日の朝~

柏木「はあー、良く寝たー」

 昨日の公演では何処から仕入れてきたか分からないが、小林が「そういえばゆきりん、まゆゆに勝ったらしいね! おめでとう!」とまたKYな発言をして、会場を凍り付かせていて亜美菜は明かにキレてたが――何とか笑いに持っていくことが出来た。
 個人的には石田が控え室で「ゆきりんとかまゆゆに申し訳ないと思わないの?」と説教をしていたのが面白かった。


222 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:03:31.70 ID:5vnBfCrU0
柏木「そう言えば、ニュースで何かやってるかなー」

 そんな軽い気持ちでテレビを点ける。
 そこには朝のニュースで柏木の顔が映っている。

柏木「あー、映ってる映ってる。「オリコン1位のゆきりん、お泊まりデートか」か・・・うんうん、そうそう、お泊まり・・・って」

 一気に眠気が吹っ飛んだようで。

柏木「何じゃこりゃー!!」


223 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:04:09.24 ID:5vnBfCrU0
 ■ブラックまりもっこり■

マネ「・・・ゆきりんに何もないことは分かったけど・・・まあ、最近仕事忙しかって、そんなことする暇ないって分かってるけど・・・良い、指原先生の前では正直に話すんだよ」

柏木「はい・・・」

 現在、柏木はマネージャーと一緒にナベプロの事務所にいる。
 そして扉の前――中には。

柏木(そう言えば、メンときって指原と喋るのは初めてだ・・・どうなるか・・・)

 コンコン。

柏木「失礼します」

指原「いいよ、入って」


224 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:05:08.97 ID:5vnBfCrU0
 中には事務所の社長と、指原――総合プロデューサーが並んで椅子に座っていた。

指原「座っていいよ」

柏木「・・・失礼します」

 机を一つ挟んで、対面する形で柏木とマネージャーは腰を掛ける。

柏木(何一つ変わってない・・・声も顔も言葉遣いも・・・何か不思議な感じ、今更だけど)

指原「・・・とにかく、事の経緯を聞いていい?」

マネ「はい、それは・・・」

柏木「マネージャーさん、大丈夫です。私から言います」

指原「うん」

柏木「指原・・・先生、これは全くの誤解です。神に誓って、私は何もやましいことはしていません」


226 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:07:38.11 ID:5vnBfCrU0
 真っ直ぐな声で柏木はそう訴えかけた――。
 今日の朝、世間を賑わしたのは柏木が渡辺に勝ってオリコン1位を獲ったことではない――世間を賑わしたのは柏木のスキャンダル発覚だ。
 ニュースによると、とある有名芸能人と高級レストランに入る――ところの写真と一緒に、2年前から交際していた、という情報が。

柏木「2年前なんて真っ赤な嘘です。あの人とは、たまたま番組で共演させていただいて、私はホント嫌だったんですけど、強引にお食事に誘われてまして、同じ事務所の先輩なので断り続けるのも悪いと思って一度だけ言っただけなんです・・・
もちろん、30分程で面倒臭くなって体調が悪くなったふりをして帰りましたけど」

指原「うん、分かってる。ゆきりんがそんなことする人間じゃない、って私は思ってる」

社長「同じ事務所だし・・・私からは厳重に注意しておくわ」

柏木「・・・お願いします」

指原「うん。問題は何でこんなことが発覚したのか、ということなんだ。もちろん、ゆきりんのことだから――アイドルにとってこういう些細なことが致命傷になりかねない、ことを知ってるよね?」

柏木「はい、もちろんこのことは――メンバー以外には誰にも言っていませんし、レストランに入る時も周囲には気を使ったつもりなんですが・・・メンバーにも本当に信頼できる何人かにしか言っていませんし・・・」


227 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:08:35.07 ID:5vnBfCrU0
指原「それならどうして・・・どうして、このことが発覚したんだろう・・・相手も芸能人、そこは分かっているはずなのに」

柏木「そうですよね・・・」

 そう言いながらも、柏木は一つだけ黒い疑問を抱いていた。

柏木(もしかして・・・)

指原「取り敢えず、このままにしておくのもあれだし・・・マスコミの人も何かコメントが欲しいだろうから、出て行って一言二言言ってやれ・・・全くの誤解です、と言えば分かってくれるだろう。後のフォローはする」

柏木「はい、ありがとうございます」


228 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:09:28.34 ID:5vnBfCrU0
 ~事務所前~

マスコミ(以下、記者)「あっ、柏木さん柏木さん。○○さんとの交際はどうなっているんですか?」

柏木「いや、私も今日の朝、ニュースを見てビックリしました・・・神に誓って言いますが、誤解です。事務所の同じ先輩だったので仕方なく着いていっただけです。もちろん、その後はお仕事があったので普通に帰りました」

記者「といっても少し軽率な行動だったのではないでしょうか?」

柏木「そうですね、軽率な行動だったと思います。ですが・・・」


229 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:11:35.83 ID:5vnBfCrU0
 ~事務所の一室にて~

社長「折角、ゆきりん。波が乗ってきたところなのに・・・」

指原「これ程度で止まるゆきりんじゃありません」

社長「といっても、スキャンダルはアイドルにとって致命傷。過去にも、菊地あやかや秋元才加の例が・・・」

指原「あっちはほぼ確定的なネタで、解雇や謹慎まで問題が発展したからあれだけの影響なんです。対してゆきりんはただの疑惑で、多分すぐに消火できる内容でしょう」

社長「それでも・・・」

指原(どんなに小さな疑問でも・・・ファンは不安になる・・・どんなに小さな不安でも、ファンは裏切られた気持ちになる・・・これをどうゆきりんがカバーするか)

指原「とにかく、ゆきりんなら大丈夫です。心配しないでください」

社長「指原先生が言うなら・・・」

指原「何はともあれ・・・」

 指原先生は部屋を歩き回りながら。

指原「第四回選抜総選挙の季節です。ゆきりんを含めメンバー達は選挙活動に入るでしょう。一体、今日は誰が主役なのか・・・」


230 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:12:29.18 ID:5vnBfCrU0
 ■涙のシーソーゲームはそうきっと私の負けかもね■

 ~無駄な幕前~

 AKB――48プロジェクトには「キャラ変」という言葉がある。
 本来、メンバーにとって「キャラを立たせる」というものは大変重要な意義を持つもので、分かりやすい例でいくと倉持の「プロレス、野球、耳」や、市川美織の「フレッシュレモン」と端的で表されるものがある。
 また分かりにくい例で前田敦子の「アイドルのエースだから完璧そうに見えて、実質は人見知りのポンコツ」や篠田麻里子の「お姉さんキャラでドSっぽいが、実質は25歳児の子供」というものがある。
 何やともあれ――AKB48にとってキャラとは大変重要な意義を持つ。どれだけ歌やダンスが上手くて美形でも、これがないと下から来るものに簡単に抜かれるだろう。
 そうでなければ小嶋陽菜というAKB随一の美形キャラが「チンチン電車」など言うはずがない。
 その何年間もかけて築き上げてきたもの、それを破壊して再生する行為が一般にキャラ変と呼ばれるものである。


231 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:13:40.40 ID:5vnBfCrU0
 このキャラ変を誰が最初に行ったかは不明であるが、記憶では旧チームBのキャプテン浦野一美が「MIHO」から「シンディ」に愛称を変え劇的なキャラ変を行ったものがある。
 最初はおとなしくて物静か、アイドルそのもの、と言うようなキャラをしていたが、チームBに左遷されてから浦野は「今までのキャラは作っていたもの。本当はきついことも言える」と宣言し、愛称もシンデレラに憧れるという理由で「シンディ」に変えている。
 そして頭には光り輝くティアラをつけ、心の汚れている人には見えない、という強烈なキャラ変、キャラクター変更を行っている。
 本来、このキャラ変はファンとの絆を潰す行為と言えるもので、これが認められれば何でもありになるんじゃないか、と当初は言われていたが――現在ではそんなに珍しくないことになっている。
 これから紹介する彼女もそんな「キャラ変」という道を選んだ少女だ。
 彼女はこのままのキャラでは生き残れない、と見るやいなや劇場でのファンの反応を見ながら少しずつキャラを変えていった。
 それが成功したのかは謎ではあるが――少なくても無駄な努力ではなかった――と見る。


232 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:14:15.80 ID:5vnBfCrU0
 彼女は同じチームの少女達が出世していくのを見て歯痒い思いを感じていただろう。本来、AKBのメンバーは大概が負けず嫌いの努力家だ。そんなメンバーが出世していくメンバーを見て何も思うはずがない。
 というわけで、彼女の紹介は簡単であるが終わりたいと思う。
 一言で言うと「キャラ」とはファンの人々に覚えてもらうため、印象に残ってもらうためにする手段の一つである。
 AKBという何度も何度も同じ公演をやるシステム上、彼女のように劇場のファンの反応を見ながら少しずつ作り上げていく、という行為は正しいのであろう。
 ただ、そんなAKBのシステムが一人の少女の人生を狂わせることもある、という締めで――このまま、第四回選抜総選挙の話を続けたいと思う。
 そう柏木も、「腹黒」というキャラを受け入れて見事成功したメンバーの一人である。
 そんな一人の少女の物語を――。


233 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:15:36.21 ID:5vnBfCrU0
 ~第四回選抜総選挙、演説~

宮崎「ゆきりん、いよいよだね。いよいよ第四回選抜総選挙が幕を開けるね」

柏木「みゃお・・・うん、いよいよ」

 選抜総選挙演説。
 文字通り、総選挙に出場するメンバー一人一人、平等に約1分のコメントをカメラの前ですることである。
 その内容は多種多様で、「丸坊主にする」という宣言から、一発芸まで幅が広い。

柏木(選挙に与える影響は少ないとはいえ・・・演説も非常に重要な要素。決して気が抜けない・・・)

 気を引き締める柏木。

柏木「みんなー、チームBのメンバー揃ってるよね? 五十音順にスピーチするからはるきゃんからだけど・・・はるきゃんは?」

平嶋「はるきゃんなら、電車が遅れていて遅刻するらしいよ。ついさっき「遅刻して申し訳ない」っていうメールが来たから」


235 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:17:04.31 ID:5vnBfCrU0
柏木「あっ、そう。じゃあとも~みは?」

小嶋「とも~みなら、タクシーが行く方向間違えたから遅刻する、って」

柏木「(間違えるわけないでしょ・・・)となると、私が最初か・・・」

小森「頑張ってください、ゆきりんさん。努力はきっと報われます」

柏木「ありがと(良いけど、何で小森が?)。それじゃあ行ってくる」

 カメラの前に一台の白い机。
 その前に「お願いします」と一声かけて腰をかける。

柏木「はい、寝ても覚めてもゆきりんワールド夢中にさせちゃうぞ☆ チームBキャプテン柏木由紀です。今回の総選挙では~」

 当たり障りのないコメントが45秒程続けられる。

柏木「~というわけで、最後にみなさんに言っておきたいことがあります。もし私が1位になった暁には、AKB48の劇場の前でスクール水着でのゲリラライブを行いたいと思います。ありがとうございました」


236 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:19:00.55 ID:5vnBfCrU0
 深々とお辞儀をしてみんなの場所に戻る柏木。

亜美菜「ゆきりーん。思い切ったね、本当にスクール水着でゲリラライブをやるの?」

柏木「ははは、どうせ1位になれないし、マイクパフォーマンスマイクパフォーマンス。本当にするわけないじゃん」

柏木(本当は1位になる気満々だけど・・・もしこれで1位になったとしても、番組で何か企画を組んでもらえて美味しい。そもそも大島優子さんの「丸坊主」、レモンちゃんの「フレッシュレモンになります(意味不明)」、といい宣言系は成功しやすい)


237 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:21:05.84 ID:5vnBfCrU0
柏木(スクール水着は、NMBのブルマ公演に対抗して・・・まあ、あっちは1位じゃないとする、ってことだけど・・・まあスク水反対のファンがいたとしても、どうせマネージャーから止められる、と判断するでしょ。演説はちょっとくらい思い切った方がいい)

亜美菜「あみなも1位になった暁には、30分でケーキ5人前完食、っていうのを宣言しようかなー?」

柏木「悪いことは言わん、止めときなさい・・・じゃあ次、北原。あれ北原は?」

北原「・・・」

柏木「きたりえ、いるじゃん。何でそんなにブスッとしてるの?」

 しかし何も言わず北原はカメラの方へと移動する。

柏木「? どうしたんだろ、何かきたりえ機嫌悪いな。何かあったのかな」

増田「ああ、きたりえ忙しくて朝ご飯食べてないみたい。それでお腹が減って減ってしょうがないみたいだよ」

柏木「ああ・・・そういうこと」

 こんな感じで――総選挙演説は無事に終了した。


238 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:21:46.35 ID:5vnBfCrU0
 ~仕事終わり~

柏木「おつかれさまでしたー・・・もう、こんな遅い時間になってる! 明日も早いし、帰らないと・・・」

 柏木はそう思い、荷物をまとめ外へ出ようとすると。

柏木「ブルった・・・メールだ、誰からだろう・・・」

 面倒臭いと思いながら、携帯を開く。

柏木「えーと、何々・・・『今からレインボーブリッジ前に来てください』・・・封鎖でもするのかな?」

 そんな冗談も口にしつつレインボーブリッジ前に向かう柏木。


239 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:23:08.32 ID:5vnBfCrU0
 ~レインボーブリッジ前~

柏木「どうしたの、愛ちゃん・・・いきなり呼び出して」

多田「ゆきりん・・・ごめんね、忙しいのにいきなり呼び出して」

 周囲はカップルや仕事帰りのサラリーマン、色々な人がいるが、柏木と多田の周りだけ独自の世界が作られたような雰囲気である。

柏木「いや、別にいいよ・・・どうしたの、こんな遅くに呼び出して・・・」

多田「ゆきりんのスキャンダル写真。あれ、撮ったの私なんだ・・・」


242 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:25:51.10 ID:5vnBfCrU0
柏木「・・・」

多田「驚かないんだね・・・」

柏木「まあ、そりゃ・・・」
 
 有る程度予測はついていた。
 あの糞芸能人に食事に誘われていることを喋ったのは多田くらいなのだ。いや、多田しかいない。
 もしバレた時のデメリットなどを話し合っていたのだが――多田は「大丈夫だよ!」と返した。

柏木「慎重なはずの愛ちゃんが、あの時だけはすぐに「大丈夫」とだけ返して、それから議論に参加してくれなかった・・・そこが最初の気付きかな?」

多田「へえー、他には?」

柏木「後は、なんだろ、違和感? ・・・私が1位を獲る、って言ってくれた時に迷わず相談乗ってきてくれたこととか・・・たまに塞ぎ込んだりするところとか・・・確信はなかったけどね」

多田「そっか・・・」


245 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:26:52.05 ID:5vnBfCrU0
 多田は柏木に一度背を向ける。

柏木「・・・」

多田「何も言わないんだね・・・」

柏木「・・・」

多田「裏切り者の私に愛想を尽かしたのかな? そりゃそうだよね、まさかゆきりんのスキャンダルの種を作ったの私だもんね。愛想尽かすのも無理はない」

柏木「どうして・・・どうして、こんなことを・・・?」

多田「何だろ、ゆきりんが羨ましかった?」


246 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:27:49.00 ID:5vnBfCrU0
 多田はまだ柏木に背を向けたまま。

多田「最初は10位、その次は9位、そして今回は4位――着実に順位を挙げ、グラビアの写真も増えてきたゆきりん。握手会の人気を見るにまだまだ昇り調子で落ちる気配は見当たらない・・・」

多田「対して私は、21位、22位、25位――最初はギリギリ選抜に入ったものの、どんどん落ちていくだけ・・・こんな私がゆきりんを妬む不思議はないでしょ?」

柏木「・・・」

多田「そう、私はツキがない女だった。劇場に何回も足を運んでくれるファンの反応を見ながら、少しずつキャラを変えていって・・・「愛ちゃん」という愛称から「らぶたん」に変更していった」

多田「でも、じゃんけん選抜には一度も入ったことがなく、北京に公演しに行った時も年齢制限で引っかかり、武道館コンサートもインフルエンザで出られなかった・・・」

柏木「それは・・・」

多田「いくら努力しても報われない・・・チームBでも、ゆきりんやまゆゆより下なのは勿論、高柳明音ちゃんにも負け、9期の由依ちゃんにも負け、さらに下を見るとNMBの絶対エース山本彩ちゃんがすぐそこにいる・・・日々入ってくる優秀な後輩・・・これを見て」

柏木「・・・」


247 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:28:33.35 ID:5vnBfCrU0
多田「これを見て、焦らない方がどうかしてるよ! チャンスの順番は結局私に来なかった。次に選抜に入れなかったらどうしよう? またファンを裏切ることになる・・・」

多田「だから、私は裏でメンバーのスキャンダルを探してライバルを少なくすることにした。最近でいうと大場美奈ちゃん、昔でいうとあやりんとか・・・まあ、あやりんは時期が悪すぎたと反省しているけど・・・」

多田「そして、いよいよ親友の――大好きなゆきりんにも手を掛けた――やっちゃいけないことをやってしまった――」

多田「私、次の総選挙終わったら、何位でもAKB止めるよ。これが何人ものメンバーの人生を潰してきた償いだと思うし・・・」

柏木「甘ったれんな」

多田「えっ?」


248 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:29:24.19 ID:5vnBfCrU0
 普段は出さない――アイドルモード全開の柏木では絶対に出さない、低い声に驚いて振り返る多田。

柏木「愛ちゃんの努力は分かっている! どれだけ努力しても、後輩が下から入ってきて、どんどん順位を落としていく恐怖は分かっている! だけど」

多田「分かってない!」

 大きな声を張り上げる多田。

多田「分かってないよ・・・ゆきりんには、努力しても努力しても努力しても努力しても努力しても努力しても順位がどんどん下がっていく私の気持ちなんて分からない!」

多田「ゆきりんが努力をしていないなんて言わない。けど、私もそれに負けずに努力している! それでも報われない。まるでツキが見放されたように」

多田「たかみなさんの「努力は必ず報われる」――そんなものは絵空事で、空想の物語の中だけだ。努力は報われる場合もあるが、報われない努力は只の徒労だ!」

柏木「じゃあ、愛ちゃんの歩んできた道には何の花も咲いていないわけ・・・?」


249 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:31:15.70 ID:5vnBfCrU0

多田「・・・どういうこと・・・?」

柏木「横山由依ちゃんは京都から夜行バスに乗ってレッスンまで来ていた。大家志津香ちゃんは、一度セレクション審査でAKBを解雇になる寸前まで来ていたけど、たった一度のチャンスを掴んでここまで来られた・・・
この二人が歩んできた道、人気のなかった時代は決して無駄じゃない!」

柏木「いつも私達はファンが付いてきてくれる。私達が歩んできた道には、ファンの笑顔という花が咲いていている! まさか愛ちゃんはファンの笑顔を見たことがないっていうの?」

多田「それは・・・」

柏木「違うよね。いや、公演を大切にしてきた愛ちゃんだ。そんなわけあるはずがない!」

柏木「菊地あやか、あやりんを見てみてよ! 彼女はスキャンダルを起こし、一度ファンからは見放された。でももう一度戻ってきた――そして、今現在、ファンが着々と戻りつつある」

柏木「私達とファンのコミュニケーションはまるで涙のシーソーゲームだ。たまにファンとしても納得のいかない行動をアイドルが取る。そこには涙があるのかもしれない。だけど、アイドルはその失敗を精一杯取り戻そうとする!」


251 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:32:33.23 ID:5vnBfCrU0
多田「・・・」

柏木「そこには涙もあるけど、それ以上に――ファンの笑顔がある――チャンスの順番、いつかきっと来る、どんなに負けてても今度は勝ちにいこう――
諦めなければ夢は叶うんだよ。愛ちゃんの今まで歩んできた道は、涙のシーソーゲームの末に笑顔の花が一面に咲いている。だから・・・」

多田「けど! けど・・・もう駄目なんだよ・・・どんなに待っても、勝てない・・・だから・・・!」

 多田の小さい体を抱きしめる柏木。
 その柏木の胸に顔を埋める多田。


252 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:33:27.59 ID:5vnBfCrU0
多田「・・・」

柏木「辛かったんだよね・・・もしかしたら、私は分からない人間かもしれない。勝ちしか知らない人間かもしれない、と愛ちゃんは思うかもしれない・・・けど、私も涙のシーソーゲームの末にここまで来られた」

多田「・・・」

柏木「どんなに不安でも、私がずっと愛ちゃんの手を繋いで歩いてあげる」

多田「いいの? 私、ゆきりんを裏切ったんだよ? 私、大切な友達を裏切ったんだよ。こんな私でも許してくれるの・・・?」

柏木「もちろんだよ・・・だって」

柏木「私、愛ちゃんのことが好きだもん」


253 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:34:02.97 ID:5vnBfCrU0
 多田愛佳――彼女は旧チームB時代の戦友を裏切ったのかもしれない。酷いことをしたのかもしれない。
 だけど、だけど柏木はそれを許した。
 今となってはチームは違うが――柏木はいつまでも多田のことが好きだった。
 いつもツンツン、たまにデレデレ――まるでシーソーゲームのような性格の子を――「ツンデレ王国の女王様」を。

多田「いけない・・・!」


255 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/16(月) 23:35:29.23 ID:5vnBfCrU0
 柏木の胸から顔を上げ。

柏木「どうしたの愛ちゃん・・・」

多田「実はこれは私一人でやっていたのではありません! 実は峯岸さんと共謀して今までやってきました!」

柏木「えぇ!? みぃちゃんと!」

多田「はい! それで私は同じチームの倉持さんが今日、前から言い寄られていた芸能人とお食事に行く、という情報を峯岸さんに渡してしまいました! 峯岸さんはもしかしたらそのことを・・・」

柏木「色々突っ込みどころがあるけど・・・じゃあ、早く手遅れにならない内にみぃちゃんを止めないと!」

多田「うん! 急ごう!」


321 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/17(火) 23:43:47.36 ID:jPt0CyYq0
 ■尺が欲しい■

峯岸(よし、これでオッケー・・・後はこれを週刊誌に送るだけ・・・)

多田「峯岸さん!」

 とある高級レストラン前――。
 その近くの物陰に峯岸は邪悪な笑みを浮かべていた。

峯岸「あら、らぶたんどうしたの? らぶたんのお陰で・・・」

多田「こんなことは止めてください! こんなことをやっても、もう・・・切ないだけです! ファンの人を裏切るだけです!」

峯岸「一体いきなり何を、ん? ゆきりん・・・」

柏木「・・・」

峯岸「そう、そういうこと・・・らぶんたも私を・・・」

柏木(もっちぃはもうレストランの中みたい・・・)

 峯岸は全てを悟ったように「そうか、そうか・・・」と一頻りに頷いている。


322 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/17(火) 23:44:41.43 ID:jPt0CyYq0
峯岸「ああー、やっちゃたね。これで私の神への道のりも終わりか」

柏木「みぃちゃんは・・・」

峯岸「ん?」

柏木「みぃちゃんは、こんなことしなくても神8に入れるよ! 神の一員になれるよ! こんなライバルを蹴落とすための努力なんてしなくても」

峯岸「お前に何が分かる!」


323 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/17(火) 23:46:07.90 ID:jPt0CyYq0
 凄い剣幕をして、大きな声を張り上げる峯岸。

峯岸「お前に何が分かる! ・・・どれだけ努力しても報われない私の気持ちが・・・テレビに映った時に使ってもらえるようなコメントを研究している私の気持ちが・・・歌やダンスのレッスンをしても、報われない私の気持ちが・・・」

柏木「みぃちゃんは選抜に入ってるじゃん! 報われてるじゃん! それを何を・・・」

峯岸「分かっていない・・・私ほど報われていない人間はいないんだ・・・」

柏木(自己嫌悪に陥っている・・・相当、追いつめられている・・・)

峯岸「第一回選抜総選挙の際。今まで選抜に選ばれていたけど、私絶対選抜メンバーに選ばれないと思った。だって、私よりファンがたくさんいるメンバーが明かにいるもん・・・」

峯岸「だから選挙の前日、怖すぎて怖すぎて眠れなかった。もしこれで外れたらどうしよう・・・もう浮き上がってこれないのではないか・・・AKBというのは意外にも夢がないシステムだ」

峯岸「一度沈んだら浮き上がってこれない・・・もし、トラブルが生じたら相当何かをしない限りは浮き上がってこれない・・・らぶたんだってそうだよね。
   最初はバンバンテレビに出てて出世街道まっしぐらだったのに、ある日テレビの収録でとあるミスをしてしまって、そこから長い間干されるようになってしまった」

峯岸「一度沈んだら浮き上がってこれない、だから私。選抜から外れたらAKBを止めようと思っていた。浮き上がってこれないシステム上、これ以上ガンバっても無駄だ・・・だから・・・」


324 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/17(火) 23:47:31.75 ID:jPt0CyYq0
多田「峯岸さん! それは間違いだったんです! 努力して報われなくても、ファンとの涙のシーソーゲームの末に、歩いてきた道に花が一面咲いているんです。だから・・・」

峯岸「何、それ詩人? そんな台詞を吐いていいのは、なっちゃんだけだ」

 峯岸は呆れたように言う。

峯岸「同じ1期生で、浮き上がってこれない。1期生の間で神に入ってないのは私となっちゃんだけだ。しかもなっちゃんはアンダーガールズ・・・といっても今まで学業の方に力を入れていた、ということがあるんだけど・・・」

峯岸「私、一期生としてテレビに出て良いのか分からなかった。私なんて只、昔からいるだけのどうにでもなる存在・・・」

柏木「みぃちゃん、それは違う! それは違うんだよ! 仮にみぃちゃんが報われないとしよう。だけどそれ以上に報われない人間が・・・」


325 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/17(火) 23:49:01.99 ID:jPt0CyYq0
峯岸「そういる。今の研究生なんて酷い。なかなか上が卒業しないがために、実力や人気が伴っていてもなかなか昇格出来ない。そうこうしている間に、アイドルとしての消費期限が過ぎる・・・私より報われていない人間なんてたくさんいる。けど・・・」

柏木(みぃちゃんは頭が良い。頭が良いからこそ、AKBのシステムを熟知しているからこそ、怖いんだ・・・)

峯岸「どんどん優れた後輩が入ってくる。珠理奈みたいな化け物が入ってくる時もあれば、横山みたいな努力の天才が入ってくる時もある。佐藤亜美菜みたいなファンに愛された人間もいれば、内田のようなチャンスの順番が回っていた人もいる・・・」

峯岸「そんな中で、もう私・・・」

柏木(泣いてる・・・)


326 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/17(火) 23:50:18.24 ID:jPt0CyYq0
 峯岸は――片手で目を押さえているが、その隙間からは確かな涙が。
 ――どれだけ不安だったのだろう――この頭の良い少女にとって、AKBのシステムを熟知している少女にとって――怖すぎて仕方がなかった――。
 その不安という名のバブルが――弾けた瞬間であった。

峯岸「私・・・もう駄目・・・いくら頑張っても、とんでもない後輩が次々と入ってくる・・・努力は才能に勝らない――『努力は必ず報われる』――そんなものは幻想。まやかしだ。順序が逆転している。
   報われる努力を人は努力と呼ぶのであって、報われない努力は努力と呼ばない」

多田「・・・ただの徒労」

峯岸「・・・そう・・・もう疲れちゃった――ごめんね、ゆきりん。私、もうAKB止めるよ。限界が――見えちゃった。明日、指原先生に言ってみ」

??「峯岸!」

 3人の後ろから声が。
 3人が同時に振り返るとそこには・・・


327 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/17(火) 23:51:14.63 ID:jPt0CyYq0
柏木「秋元さん・・・それと、あやりん?」

峯岸「さやか・・・」

秋元「止めなくていいよ。お前は、お前がチームKに、いやAKBに必要だ・・・まだ止めてもらっちゃ困る」

峯岸「何言ってるの」

 秋元の言葉を鼻で笑う峯岸。

峯岸「だって、さやかのスキャンダルの時も、あれは私が原因・・・あれからさやか、なかなか選抜に入れてないよね・・・それなのに」

秋元「そんなことあったけな? 忘れちゃったわ」

 豪快に笑う秋元。

峯岸「菊地だって・・・」

菊地「・・・はい・・・正直、今まで怖い先輩だと思っていました。怖い先輩、そう思ってましたけど! ・・・峯岸さんの頭の回転の速さ、歌の上手さ、ダンスの上手さは私の憧れでした!」


328 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/17(火) 23:52:35.19 ID:jPt0CyYq0
 叫ぶ菊地。
 かつてAKBをクビになった少女が言う。

峯岸「私が・・・?」

菊地「はい。峯岸さんはどう思っているか分かりませんけど、確かに峯岸さんには実力があります! 努力は報われているんです!」

秋元「峯岸はあの時――組閣祭りの時に、チームAからチームKに移籍された・・・そう、一説にはダンスの上手さをかわれて移籍してきた、という話もあったね。SKEに負けない、松井珠理奈に負けない、チームKをダンスのスペシャリスト軍団にするために・・・」

峯岸「・・・」

菊地「峯岸さんは、峯岸さんは自分の可能性を分かっていません・・・だから、もう少し頑張ってください! 峯岸さんは正々堂々、真っ正面から戦っても十分過ぎるほど強いんです!」

峯岸「・・・もういいの! 私は疲れたの! 努力が報われているか、実力があるかは私が決める」

秋元「困るな・・・」

峯岸「え?」


329 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:03:19.85 ID:jPt0CyYq0
秋元「明日はどこのチームの公演があると思う?」

峯岸「チームK・・・」

秋元「そうだ・・・」

 ニカッ、と笑って白い歯を見せる秋元。

秋元「あっちゃんが覚醒して、最近チーム4の人気が爆上がりだ。このままではチームKの人気は衰退してしまう。そこで峯岸の頭の回転の速さと、歌とダンスの上手さは必要なんだ・・・今、止めてもらっちゃ困る」

峯岸「私が必要・・・?」

秋元「そう。しばらく必要なんだ、これが。だから今止めてもらっちゃ困る、証明終了」

多田「峯岸さん・・・」


330 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:04:14.46 ID:uCivhLqr0
 多田が語りかけるように峯岸に言う。

多田「峯岸さん・・・あなたは私の憧れでした。私は頭が悪いんです。頭の回転が遅いんです、だからテレビの仕事でも失敗し、肝心なところで結果を出せない・・・そんな私にとって峯岸さんは、峯岸さんは私の憧れでした」

峯岸「らぶたん・・・」

多田「だから、私は峯岸さんの味方をしたのかもしれません・・・あの頃の峯岸さんは輝いていました・・・けど今の峯岸さんは・・・輝いていません。あの頃の峯岸さんに戻ってください」

秋元「ほら、見てみろ峯岸。お前、自分が思っているより凄い奴だぞ?」

峯岸「私――本当に戻っていいの?」

菊地「いえ、戻ってきてください、峯岸さん!」


331 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:05:08.65 ID:jPt0CyYq0
 峯岸さん――とその後を多田が続ける。

峯岸「・・・分かった。まだ止めない」

多田「峯岸さん・・・」

峯岸「でも・・・また耐えれなくなったら、またこんなことしちゃうかもしれない。弱い私は怖くて怖くて仕方ないから、また逃げ出しちゃうかもしれない。そんな私でも・・・」

秋元「怖くなったら・・・みんながいる・・・大島も宮澤も・・・お前は一人じゃないんだ――だから抱え込むな」

峯岸「・・・」

秋元「それにな、峯岸。お前は強いぞ。本当の弱い奴ってのは、恐怖から目を背けて何もしない奴のことを言うんだ。しかしお前は違う。きちんと恐怖と向き合って、ちゃんと怖がって行動をしている。その行動の善悪は分からないが・・・少なくてもお前は弱くない、十分強いよ」

峯岸「・・・」

秋元「さあ、戻ろう! 今日は私の家でバナナパーティーだ! 円高で南米諸国のバナナが安くてな、ついつい買い込んでしまって――」

倉持「あれ~、みんなどうしたの?」


332 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:05:54.89 ID:uCivhLqr0
 レストランから出てくる倉持――その隣には・・・。

柏木「もっちぃ、って隣の人って・・・?」

倉持「えっ? 隣――えっ、マネージャーだけど・・・」

倉持マネ「ゆきりん、どうしたの? こんな遅くに・・・」

 すぐに多田の方を向く峯岸。
 すかさずばつが悪そうに峯岸から視線を外す多田。

多田「・・・たまには情報に間違いがあるということで・・・」

倉持「あー、分かった。みんなご飯食べてたんでしょう。酷いな、私を呼んでくれないなんて・・・んもうっ!」

秋元「・・・峯岸! どこに行くんだ・・・!?」


333 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:06:47.93 ID:uCivhLqr0
 誰にも声をかけずに、峯岸はその輪から外れ歩き出している。

多田「峯岸さん!」

峯岸「・・・帰ってテレビで使われるコメントでも勉強する。意外に私って凄い奴ってことは分かったけど、まだまだ実力不足。メディアでどれだけインパクトのある発言をすることが出来るかが選挙の勝利の鍵だから・・・帰って勉強する」

秋元「峯岸・・・」

峯岸「明日、劇場に何時集合だっけ!?」

秋元「・・・ああ、レッスンとかしないといけないから朝の6時集合だ」

峯岸「うげっ、相変わらずの体育会系・・・分かった、じゃあ早く帰る」


334 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:07:39.35 ID:uCivhLqr0
 その場から立ち去る峯岸。
 その背中にはどれだけの恐怖という死神を背負っているか分からないが――それと向き合って、努力し続ける一人の少女。

柏木「峯岸さん・・・」

「努力は必ず報われる」――それは綺麗事。
 でもキレイなキレイな、ダイヤモンドのような輝きを秘める綺麗事。
 ここで峯岸と多田の、二人の努力家の物語は終わるが、AKBにはもっともっと努力する人間が山ほどいる。そう、こうして物語の配役には呼ばれないくらいに目立たない努力をしている少女達が。
 そんな、努力家達も見てやって欲しい――という締めで終わりたいと思う。

峯岸「ああー、もっと尺が欲しい・・・」


335 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:08:19.92 ID:uCivhLqr0
 ■み~んなのお金を、いただきやすす~■

 第四回選抜総選挙――が終わって1週間後、柏木はとある人間にとあるカフェに呼ばれた。

柏木(どうしたんだろ・・・今まで何もなかったのに・・・いきなり)

 選挙終わりということもあって、AKBの注目度は高く、変装をして待ち合わせ場所まで向かう柏木。

柏木(それにしても、あの選挙からもう1週間・・・まるで夢の中みたい)

 マスクとサングラスをしているせいか――声をかけられないまま待ち合わせ場所に到着した柏木。

柏木「・・・すみません、遅くなってしまって」

秋元康「いいよ。とにかく座りなさい」

柏木「はい・・・」


336 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:09:04.71 ID:uCivhLqr0
 柏木を呼び出したのは秋元康であった。
 柏木は「失礼します」と一声をかけ椅子に腰をかける。

柏木「あき・・・やすすさん」

秋元康「柏木が呼びやすい方法でいいよ。柏木なら――そうだな、秋元先生か?」

柏木「え?」


337 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:09:42.86 ID:uCivhLqr0
 普通、そう柏木が秋元康のことを「秋元先生」と呼ぶのは至極単純なことであり、普遍的なことである。
 しかしこの腐った世界においては、秋元康は「やすす」であり、総合プロデューサーでも何でもないのだ。
 それなのに――。

柏木「どういうこと・・・」

秋元康「まずは、第四回選抜総選挙1位おめでとう。たいしたものだ」

柏木「ありがとうございます・・・」

 深々と頭を下げる柏木。
 第四回選抜総選挙――1位に呼ばれたのは柏木であった。
 秋元康との得票差18票。これは第二回において河西と高城の差と同じである。

柏木(紙一重だった・・・)


338 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:10:23.22 ID:uCivhLqr0
秋本康「正直、まだ負けないと思ってたんだ。しかしお前は凄い。AKBの選抜総選挙の特性を見抜き、行動も伴った。峯岸と多田の反乱分子を抑えることも出来て、言うことなしだ。これは俺の予想外といっていい」

柏木「どういうこと・・・」

秋元康「素直に謝らせてくれ。すまなかった、俺はお前を見くびっていた」

柏木「秋元先生は・・・アイドルとしての「やすす」じゃなかったの・・・?」

秋元康「それにしても、あの熱狂が未だ冷めやらないな・・・凄かった・・・」


340 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:11:04.34 ID:uCivhLqr0
 ★第四回選抜総選挙★

「21位、チームA、多田愛佳」

 会場中が盛り上がる。

多田「実は・・・私はAKBを止めようと思っていました・・・だけど、ファンの人達が私を応援してくれたおかげで・・・グス」

「12位、チームK、峯岸みなみ」

 峯岸、メディア選抜当選・・・!

峯岸「私もらぶたんと一緒で・・・もう止めようと思ってました・・・でも、最後にこれだけは言わせてください。努力は必ず報われる、っと峯岸みなみはこの人生を賭けて証明してみせます!」

 温かい笑いが会場中を包む。


341 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:12:09.23 ID:uCivhLqr0
 ★★

秋元康「柏木はAKBの総選挙って何だと思う・・・?」

柏木「何だと思う・・・ですか?」

秋元康「そう。分かりにくかったかな。「何」を決める、イベントだと思う?」

柏木「それは、誰が一番多くファンに愛されているか・・・」

秋元康「違う。大島優子の言葉を借りると、「誰がファンの愛を一番多く得ているか」――そして俺に言わせれば「誰が一番お金を多く集めることが出来るアイドル」か、だ」

柏木「な・・・」

秋元康「人によっては、これは夢のないことだ、というかもしれない。しかし、これは現実なんだ」

秋元康「もし、人気の高さとか、ファンにどれだけ支持されているか、厳密に図りたかったら一人一票制にしなければならない。また実際の選挙みたいに「投票は義務」という風にしなければならない。こうしなければ、投票する者としない者で差が生まれる」


342 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:13:21.92 ID:uCivhLqr0
柏木「・・・」

秋元康「投票しない者でも、ファンはファンなんだ。しかし一人一票制なんて非現実的すぎる。俺に言わせれば、「じゃあどうやってするんだよ!」と言ってやりたい!」

秋元康「何処かのホールで身分証明書の提示を一人一人求めるか? 都合の悪い人のために不在者投票の期間を設けるか? まずこれをするのに莫大なコストがかかること、もう一つにそこまでする必要性が全く感じられない」

秋元康「だから、システム上AKBの総選挙は一人一票なんて無理なんだ。となると、一人で何票も出来るシステムという風になる。そしてこれは、誰が一番お金をつぎ込むことが出来るか・・・つまりもし、5億円くらいポンと出せる大金持ちがいるとする」

秋元康「仮にAという人間のファンが、その大金持ちしかいないとする。一人しかおらず、その他の人間はAという人間を見たこともない、とする」

秋元康「しかし、もしその大金持ちがポンとお金を出したら、その子は少なくてもベスト5になれるだろう。1位になれるかもしれない。そんなもんなんだ、AKBの総選挙なんて。メディアのゴリ推しが肝心とか、精神力が強い方が有利とお前等は考えているかもしれない」

秋元康「だが、それは違う。それは「センターになるための」条件なんだ。1位になるための条件ではない」

柏木「つまり1位になるための条件は「資産家を味方につける」ことだと?」


344 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:21:19.30 ID:uCivhLqr0
秋元康「そう、それが現実だ。そして現実的すぎる・・・」

柏木「・・・」

秋元康「まあ、人はそれをキャバ嬢と同じシステムだ、というかもしれない。しかし現実の選挙だってそうじゃないか。何だかんだ言って、政治資金をたくさん集められたものが選挙によって当選する」

秋元康「分かるか? 資本主義によってお金は絶対なんだ。大半の幸せはお金で買えるんだ。俺はそうだと思っている」

柏木「そんなことない・・・!」

秋元康「ん?」

柏木「そんなことない! アイドルはファンの声援を受けて頑張ってこれる。大島優子さんの言葉を借りれば「票数は愛です」・・・たくさんの愛をもらえた人が、1位になれる」

秋元康「それで良いと思うよ。実際、柏木が言っていることはとんでもなく正論すぎる」


345 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:34:04.81 ID:uCivhLqr0
 微笑みかける秋元康。
 その笑顔は「やすす」ではなく「秋元先生」としての笑みであった。

秋元康「この若い少女達はこれだけ根性を見せている。だから、お前等もどれだけ根性を見せられますか? どれだけ頑張って少女達を笑顔にすることが出来ますか――まあ、実際のところ選挙の理由ってのはこんな感じだ」

柏木「そう・・・なのに」

秋元康「論点がずれている。俺は選挙の現実を話している。そしてお金は幸せ、と言ったかもしれないが、別にそれが絶対ではない。矛盾するかもしれないが、命とか想いの強さはお金に替えられない」

秋元康「だから、俺は言う。想いが強かろうが、弱かろうが、お金は冷酷的に絶対的な指標であって、そのお金によって票数は構成される。だから1位というものは「お金はどれだけ集めることが出来たか」を競う、謂わば競技なんだ」

柏木「違う・・・そんなわけがない」

秋元康「今はそう思っていい。柏木の考えはどうしようもなく当たっていて、そのままの考えで居て欲しい。ただ、頭の片隅に於いてほしい。「票数はお金」だ、と・・・」


346 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:34:30.97 ID:uCivhLqr0
 ★第四回選抜総選挙2★

「6位、チームB、渡辺麻友」

 会場の何処からか「えー」という言葉が漏れる。

渡辺「まずはみなさん、私に投票してくださってありがとうございました・・・しかし私は~」

「5位、チームS、松井珠理奈」

 今日一番の歓声が会場中から上がる。

珠理奈「応援してくださった皆様ありがとうございました・・・SKEからAKBに移籍と、最初はどうなるんだろう、という不安がありましたが、ファンの温かい声援~」


347 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:35:17.57 ID:uCivhLqr0
 ★★

秋元康「じゃあ、もう一つ聞こうか。AKBのCDには握手券やら投票券やら付いている。これは卑怯なんじゃないか? 既にCDはおまけになっているのではないか、という批判がある。これについてはどう思う・・・?」

柏木「いえ・・・もしかしたらそういう側面もあると思いますが、大半のファンの人達はCDを買いたくて買っているのだと思いますし、正直なところ・・・」

秋元康「ん?」

柏木「だって1000円払って、CDも手に入って、アイドルと握手してちょっと喋ることが出来て、ミニライブも聞けるんですよ!? これが良心的と言わずに何と言う・・・」

秋元康「やはり、柏木は正しいことを言う。しかし現実的ではない・・・最終的に何が言いたいのか分からない。だから俺は誤解を恐れず言う。CDはおまけだ、と」


349 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:35:58.63 ID:uCivhLqr0
柏木「極論です・・・」

秋元康「そうだ、極論だ。しかし極論はたまに現実を表す良い手段となる・・・柏木はビックリマンチョコって知ってるか?」

柏木「一応、何となくは・・・」

秋元康「あの、ビックリマンチョコはチョコとシールがセットになって売られているんだが、シールだけもらってチョコを捨てるといった行為が一時期社会問題になったこともある」

秋元康「あのビックリマンチョコとAKBは非常に似ている。只、違うのはチョコは食べ物であり見えるものであるが、CDというのは著作権であって見えないものだということだ」

柏木「それってどういうこと・・・?」

秋元康「果たして」


350 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:37:24.81 ID:uCivhLqr0
 秋元康は言う。

秋元康「現代社会に於いて、果たして音楽にお金を払う価値はあるのだろうか? このネットワークが発達した世界に於いて、動画サイトに行けばいつでも音楽が聴けるこの世の中に、果たして音楽単体にお金を払う価値が・・・?」

柏木「・・・」

秋元康「ないんだよ・・・そもそも、知的財産権なんていう権利はおかしいんだよ。だって、形のないものにお金を払うわけだ。例えば、一冊の本があったとしても、読者はその「一冊の本の価値」という値段と、
    「著作権料」というお金を二重に払わなければならなかったんだ、おかしいと思わないか?」

柏木「・・・いえ、何がおかしいのかちょっと・・・」

秋元康「そうだな、分からなくていい。今までそれが当たり前の世界だったんだ・・・そう、チョコレートと比べてみればいい。このネットワークが高度に発達した世界に於いても、音楽はネット上に出回るが、チョコレートは出回らない、それはどうして?」

柏木「いや、そりゃだって・・・出回っていても、どうやって食べるんですか?」

秋元康「そう、それが著作権の正体なんだ」


351 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:38:00.21 ID:uCivhLqr0
柏木「・・・」

秋元康「だから俺は言う。CDはおまけだ、と。現に、俺は未来の音楽産業というものはCDというのは「おまけ」に成り下がると思う」

秋元康「今はこれがおかしいと人は言うかもしれない。しかし、このままネットワークが発達すれば、起こり得る未来だ、と俺は確信している」

柏木「・・・」


352 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:38:24.69 ID:uCivhLqr0
 ★第四回選抜総選挙★

「第3位、チーム4,前田敦子」

前田「チーム4に移籍した時。正直、私止めようと思いました・・・でもファンの人達がいるって思ったから・・・」

「1位、チーム、柏木――」


353 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:39:23.05 ID:uCivhLqr0
 ★★

秋元康「これで俺の話は終わりだ。絵に描いたような話ですまん。しかし柏木には知って欲しかった。現実を・・・」

柏木「それを私が知って、何を・・・」

秋元康「なあ、柏木。ここまでの話を聞いて「アイドル」に必要なことって何だと思う?」

 突然、柏木に問いかける秋元康。

柏木「「アイドル」に必要なこと・・・」

秋元康「現実的なことだ。現実的な話をしてくれればいい。CDはおまけ、選挙はいかにお金を集めることが出来るか――ここまでの話を踏まえて、柏木にとって「アイドル」とはどういう存在だと思う。「アイドル」には、一番何が必要だと思う?」

柏木「私は――」


354 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:39:43.83 ID:uCivhLqr0
 ■残念少女■

 少女は決して強くなかった。
 少女は1位になりたくなかった。
 少女は決して他人を蹴落としてまで、頂上を目指したくなかった。
 なのに何だろう――この空虚感。
 何か抜け落ちてしまったような感覚。

「はあー、これからどうしようかな・・・」

 誰に言うわけでもなく、自然に口から零れる愚痴。

「私は本当に「アイドル」に向いてるのかな・・・」
 
 別にやる気をなくしてしまった訳ではない。
 只、空虚感。
 この抜け落ちてしまった感覚は、何だろう――、一体、この寂しい感覚は何だろう。

「――うん、決めた。私――」

 そんな何かが抜け落ちてしまった少女。
 人は彼女を「残念少女」と呼ぶ――。


355 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:40:30.84 ID:uCivhLqr0
 ■アイドルなんて好きになると思わなかった■

柏木「私は――」

秋元康「ん?」

柏木「「アイドル」に必要なことは――」

 バン! 
 机を思い切り両手で叩いて、立ち上がる柏木。

柏木「ファンの皆様です!」


356 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:41:29.60 ID:uCivhLqr0
秋元康「・・・」

柏木「確かに選挙というものは「いかにお金を集めることが出来るか」を決める競技かもしれません! CDは握手券のおまけかもしれません!」

柏木「けど、私は、私は私を応援してくれるファンの人を落胆させたくない! 悲しませたくない! 投票してくれたり、CDを買ってくれるファンの皆様の涙を絶対見たくない!」

柏木「今まで苦しいことも、悲しいこともたくさんありました! しかしいつだって、ファンが見守ってくれました! いつも見てくれてるんです! 斜め後ろくらいから、いつも私を見ているんです!」

柏木「そんなストーカーみたいな話が・・・と思うかもしれません。でもいつもそうなんです。たまにハメを外して遊びたい時もあります。アイドルらしくない行動を取ってしまいそうになります」

柏木「でも、その時、ファンの人が私を見ているんです! そんなファンがいたら、ファンを! ファンを悲しませることなんて決して出来ません!」

柏木「綺麗事かもしれません。現実に即していないかもしれません! しかし、私、「柏木由紀」はファンの皆様がいなければ今こうして存在していません! これだけは言えます!」

秋元康「・・・良く答えられたね・・・正解だ」


357 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:42:21.07 ID:uCivhLqr0
 秋元康の声が一気に優しくなる。

柏木「すみません、生意気なこと言っちゃって」

秋元康「実際のところ、言い訳Maybeの時に涙を流した佐藤亜美菜は自分に苛立ったのではなく、ファンの人に申し訳なくて涙を流したという。菊地あやかだって一緒だ。自分にもまだファンがいる、とバカ正直に考えてこれたから戻ってこれた」

秋元康「多田だって、峯岸みなみだって、同じだ。彼女達は焦っていたと思う。ファンの皆様は私達を応援してくれているのに、私達はそれに応えることが出来ない・・・それであのような行動だ」

秋本康「前田敦子・・・彼女もファンが、劇場でファンが待っていてくれているから戻ってこれた。いつかチーム4を最強のチームにするために、一番ファンの愛が一杯あるチームにするために戻って来れた」

秋元康「これは、決して綺麗事ではない。これは現実だ。「アイドル」にとって必要なことはファンの皆様――これはどうしようもない、現実なんだ」


358 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:43:21.82 ID:uCivhLqr0
柏木「・・・」

秋元康「でも、彼女はどうかな?」

柏木「彼女?」

秋元康「うん。彼女は今、ファンから見放されたような印象を受けているはずだ。ソロデビューも上手くいかず、選挙でも推してもらえたのに惨敗。もしかしたら私は「ファン」はいないかもしれない、と思っているかもしれない」

柏木「それって・・・」

秋元康「もちろん、6位なのだから胸を張って良いと思う。でも彼女は今、ファンの人を信じれなくなっているんじゃないかな? アイドルにとって必要な、ファンの人達を信じ切れなくなっている残念な少女になっているんじゃないかな?」

柏木「・・・まゆゆ・・・」


359 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:43:52.82 ID:uCivhLqr0
秋元康「行ってあげなさい。彼女には今、柏木が必要だ」

柏木「・・・! 失礼します!」

 ――走り去る柏木。
 一人取り残される秋元康。

秋元康「大丈夫。彼女は自分で答えを出すことが出来た。この答えを導き出せるのは今のところ、前田か指原くらいだと思っていたのだが・・・これで安心して彼女にセンターを任せることが出来る・・・」

 ここで「アイドル」やすすの物語は終わる。
 いや、最初からそんな物語なんてなかった。
 しかし必要な物語であった。


360 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:44:31.44 ID:uCivhLqr0
 ~とある――~

柏木「まゆゆ!」
 
 車の通りが多い道路。
 四車線の道路があり、目まぐるしい速度で通り過ぎていく車達。
 渡辺はそんな道路を目の前にして、一人立ち尽くしていた。

柏木「まゆゆ!」

 走る。手遅れにならない前に・・・。
 旧チームBからの仲間。しかしときにはライバル。柏木の横にいつも渡辺がいた。

柏木(私は盲目になっていたのかもしれない・・・もしかしたら、私が1位になるのに精一杯で一人の大事な親友をなくしてしまうところだったかもしれない)

 二人の間は30メートル。
 車の他にも人通りが多い場所であるので、柏木の声は渡辺に届かない。

柏木(まゆゆ・・・何でそんな目で車を見ているの? まるでその中に飛び込むような・・・)
 
 渡辺が一歩踏み出そうとした瞬間。


361 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:45:41.43 ID:uCivhLqr0
柏木「まゆゆ!」

 そう言って渡辺に飛びつく柏木。

渡辺「ゆきりん!? どうしたの、いきなりこんなところで!?」

柏木「駄目! 死んじゃ駄目! だってまゆゆには大勢のファンがいる! だってまゆゆ凄いじゃん! 1位が何を言うか、って思うかもしれないけど、私まゆゆが一番怖かった」

柏木「秋元先生より、あっちゃんより珠理奈より、まゆゆが一番怖かった! だから正直、まゆゆが6位と呼ばれた時、ほっとしている自分がいた。ごめん! 本当にごめん!」

柏木「だけど、それだけまゆゆはアイドルとして凄いんだよ! まゆゆ程、ファンの人達に答えているメンバーはいない!」

柏木「だから! だから死んじゃ駄目だよ! ファンのみんなが、そして何より、私が悲しむよ! だから」


362 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:46:33.50 ID:uCivhLqr0
渡辺「えぇ!? 何か事情が飲み込めないけど、私が死ぬって? 何で、何でそんな話になってるの!?」

柏木「え? だって・・・」

渡辺「私は・・・」

 そう言って、渡辺は道路の車が行き交う道路を挟んだ、向こうのとあるお店を指さす。

柏木「あれは・・・」

渡辺「私は、あのお店のフィギュアを見ていただけ! で、あっち側に渡りたかったけど、なかなか車が途切れないな、と思っていただけ! 私が死ぬって!? 死ぬわけないじゃん! だって私にはファンのみんなが付いてるもん。こんなところで終われるはずがない!」


363 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:47:24.36 ID:uCivhLqr0
 渡辺が指を指した方向には、ガラスのショーウィンドウの中にあるフィギュアであった。

柏木「じゃあ・・・」

渡辺「やだなー、ゆきりん! 私が死ぬわけないじゃん。だってまゆゆは今年で高校卒業。まだまだじゃん!」

柏木「まゆゆ!」

 どうしようもなく、渡辺が愛おしくなってしまって――思わず力強く抱きしめてしまう柏木。

渡辺「ゆきりん・・・」

柏木「私、今回で分かった! 私はエースに向いていない、キャプテンに向いてないんだよ! まゆゆが、チームB、いやAKBのセンターはまゆゆ、渡辺麻友! 私の大好きなまゆゆ!」

渡辺「・・・」

柏木「これから・・・頑張っていこうね!」


364 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:48:05.26 ID:uCivhLqr0
 ――自然と涙が零れる柏木。
 今回の選挙で分かった。前田敦子の苦労を。
 第一回選抜総選挙の時、2位の名前が呼ばれる時、心ないファンの人達が「前田コール」が起こった。
 未だ名前が呼ばれていない前田が2位で、大島1位だ、と期待するコール。
 あの時、前田はどれだけの重圧を背負っていたのだろう・・・今なら分かる。
 AKBのセンターになる――ということ。

柏木「一杯、泣いちゃったらお腹すいちゃった。まゆゆ、ご飯食べにいこう! おいしいパフェ出してくれるとこ知ってるんだ」

渡辺「やっびゃあ! うん、行こ行こ!」


365 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:48:37.39 ID:uCivhLqr0
 柏木に手を引かれる渡辺。

渡辺「・・・ありがとう、ゆきりん・・・」

柏木「え? 何か言った、まゆゆ?」

渡辺「何でもなーい。早く行こ、私お腹が空いちゃって」

柏木「うん、すぐ近くにあるか」

渡辺「ゆきりん!?」

 小石に躓く柏木。
 躓いて、倒れそうになる方向には大きなトラックが――。

渡辺「ゆきりん!!」


366 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:49:14.50 ID:uCivhLqr0
 ■寝ても覚めても・・・?■

柏木「ちょいちょーい! おかしいでしょ! 何で、最終回で私が死ぬのよ! そんなの、おかしいでしょ!」

渡辺「ゆきりん・・・? どうしたの?」

柏木「えっ・・・ここは?」

 見慣れた部屋。

柏木「私の・・・部屋?」


367 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:49:56.17 ID:uCivhLqr0
渡辺「そうだよ。どうしたの、朝起きていきなり」

 雀の鳴き声が聞こえる。

柏木(もしかして・・・)

柏木「ねえ、まゆゆ。第一回~三回の選抜総選挙の1位は?」

渡辺「ゆきりん正気? そんなの、一回目があっちゃんで、二回目が優子ちゃんで、三回目があっちゃん。そんなのAKBのメンバーだったら常識だよ」

柏木「やすすは・・・?」

渡辺「やすす? ああ、秋元先生のこと。秋元先生ならぐぐたすにはまって、怒られてるんじゃない?」

柏木(もしかして、これって・・・)


368 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:50:40.68 ID:uCivhLqr0
 その場で立ち上がる柏木。

柏木「ちょいちょーい! おかしいでしょ! 何で夢落ちなのよ! 物語の構成方法で一番最悪だと言われている夢落ち! 私の今までの努力は何だったのよ! 折角、1位獲ったのに!」

渡辺「今日のゆきりん、おかしいよ・・・だってゆきりんは・・・」

多田「おはようございま~す」

 ノックもせず部屋に入ってくる多田。
 その手には何かが入った紙袋が持たれている。

多田「ゆきりんどうしたの? 何か仁王立ちになって」

柏木「何でもない! どうしたの、愛ちゃん。こんな朝早くに」

多田「どうしたのって・・・注文していたものが届きましたよ」

 多田が手持ちの紙袋からとあるものを取り出す。

柏木「これって・・・」


369 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:51:31.02 ID:uCivhLqr0
多田「そう! スクール水着! だって、ゆきりん1位になった暁にはスクール水着でゲリラライブを敢行する、って言ってたじゃん。今日、良い天気で絶好のスク水日和だし、今日しかやる日は・・・」

平嶋「ゆきりん!」

柏木「その声は・・・なっちゃん!? それに菊地、それに指原まで!?」

菊地「ゆきりん1位になったし、今日するらしいね。胸熱だな~」

指原「ゆきりん。胸薄要因は私達に任せてください。きっとお役に立てると」

菊地「私達、ってもしかして私も含まれている!?」

平嶋「有華ちゃんと私は胸熱ならぬ胸厚要因で・・・」

柏木「ちょいちょーい!」


370 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:52:02.10 ID:uCivhLqr0
 叫ぶ柏木。

柏木「何で私が1位になって、スク水でゲリラライブ敢行するところだけ現実なのよ! おかしいでしょ!!」

 ――とまあこんな具合に。
 柏木由紀の物語、AKB48の物語はここで終わる。
 いや、柏木もAKB48もまだまだ成長を続ける。
 ファンの人達に見守られながら――。

                         《Fin》


371 :名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/18(水) 00:53:28.20 ID:Inwh5PQq0
うん、良かった

372 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/18(水) 00:53:56.79 ID:Ze+CtUw30
乙 不思議な感じの話であった

374 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/18(水) 00:54:58.48 ID:HSxxvynK0
自室でスタンディングオベーションしといた
素晴らしい作者さんお疲れ様でした


375 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 00:56:01.19 ID:uCivhLqr0
という感じで終わりです。
ナンデヤネン! って感じだと思いますが、すみません・・・こんな感じのしょうもないオチしか思い付きませんでした。
最初は軽い気持ちで描いたものが、どんどんハードルが上がっていく内につれて内心ビクビクしていたり・・・。
色々と伏線は残っていると思いますが、(珠理奈どうなったの? 指原先生は?)これで取り敢えず終わりです。

最後に、就活があって3日もかけて投稿させていただきましたが、こうやって続けてこられたのも応援してくださったり、保守してくださった皆様のおかげです。
こういうの書くの、凄い好きなんでまた近いうちにお会いできれば、と思います。
では、皆様のAKBのファン活動の成功をお祈りして、これで終わりたいと思います。本当にありがとうございました!


379 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/18(水) 01:00:44.29 ID:GCz5Al/s0
作者さんはゆきりん推しなんですか?

386 ◆Q5rNtE.wug 2012/01/18(水) 01:15:25.65 ID:uCivhLqr0
>>379
ちなみに僕は指原推しです。


387 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/18(水) 01:17:15.24 ID:CUImz4RF0
>>386
てっきりゆきりんオタかとw


390 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/18(水) 01:23:43.71 ID:RoMI2i8j0
>>386
やっばりやすすだろ!


391 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/18(水) 01:26:15.86 ID:pWVbzj080
楽しませてもらいました
とても面白かったです。


393 名無しさん@お腹いっぱい。 2012/01/18(水) 01:34:02.21 ID:RSC5jQdh0
楽しませてもらいました。ありがとう。(^-^)

柏木「秋元先生が総選挙1位・・・?」

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